SPORTS TECH TOKYO「World Demo Day」
電子トレカ、自動ハイライト動画生成、女性の体調管理まで――スポーツの課題にテックで挑むベンチャー12社
2019年11月25日 06時30分更新
スポーツ市場の拡大とテクノロジーの融合を測るべく、電通が仕掛けたスポーツとスタートアップ業界を巻き込むプロジェクト「SPORTS TECH TOKYO(スポーツテック東京)」。1年をかけて進んできたプロジェクトは、2019年4月に選出されたファイナリストのスタートアップ12社が事業開発に取り組んできた結果を、2019年8月20日に開催された、米サンフランシスコのOracle Parkで「World Demo Day」にて披露した。
「電通が仕掛けるスポーツ市場の拡大とテクノロジーの融合」(関連記事)
スポーツテックベンチャーを支援するSPORTS TECH TOKYO、「World DEMO Day」では、ファイナリストに選ばれた12社のスタートアップたちはスポーツのどんな問題を解決しようとしているのか。
STTプログラムには33ヵ国から300以上の企業から応募があった。カテゴリーとしては「ファンエンゲージメント」、「スタジアム体験」、「アスリートのパフォーマンス」の大きく3つ、さらに13のサブカテゴリーに細分している。STTでは159社を選び、最終的には12社に。内訳は「ファンエンゲージメント」が6社、「スタジアム体験」と「アスリートのパフォーマンス」がそれぞれ3社となっている。
一画面で多数の人にパーソナライズコンテンツを表示
Misapplied Sciencesはシアトルのベンチャーで、ひとつの画面で様々な人に異なるコンテンツを同時に表示できる技術”Pararell Reality”を開発している。しかも、ユーザーはヘッドマウントディスプレイなどを装着する必要はない。
たとえば空港ならば、自分のフライトのゲートや時間情報のみが表示されるなどのことが可能。同じ画面を同時に見ていても、フライトが異なる人はまったく違う情報が見える。スタジアムならばスコアボードに自分の好きなプレイヤーが表示されるなど、エンターテイメント、マーケティング、ホスピタリティなどの分野で様々な使い方があるという。数千、数万人が同じ画面を見ながら違うコンテンツを得られるそうだ。
背景にあるのは、Magic Pixelと呼ぶ同社の独自技術で、各ピクセルが全方向に同じ色を放つのではなく、様々な色を数千、万単位の方向に色を放つ技術により実現している。これにプラスして、高度な光学デザイン、精密な空間較正、高性能な並列処理などの技術も組み合わせた。
共同創業者でCEOを務めるAlbert Ng氏によると、STTのファイナリストとして事業開発を行った結果、12月にオープン予定の新国立競技場のオープニングイベントでデモをする方向で議論が進んでいるという。
なお、会場には来ていなかったが、会長兼CTOを務めるPaul Dietz氏は、Microsoft Research出身。「Microsoft Surface」タブレットのマルチタッチ画面の開発などをしていたと言われる人物だ。
スポンサーの投資対効果をAIで評価
サッカー、野球、アメフトなど、スポーツのスポンサー企業は巨額を払ってスポンサー契約を結ぶ。一方で、「スポーツのスポンサーシップ測定は長い間機能していない状態」と問題提起するのはMichael Flynn氏だ。プレミアリーグでマーケティングやスポンサー事業を担当した経験を持つだけに、説得力がある。
DataPOWAはメディア、ソーシャルなどのデジタルプラットフォームからのデータを分析して、広告枠単位での露出頻度や価値を割り出すというもの。データポイントは2兆4000万、ブロードキャストモデリング、ソーシャルメデイア、検索エンジン、チームのパフォーマンス、メディアとニュースのリファレンスなど60のデータセットからPOWA Indexを作成、これにより、スポンサー企業はより費用対効果が高いスポンサー活動が可能になる。
DataPOWAは2017年に創業、すでにGolden State Warriors、Manchester United、Leicester City、Coca-Colaなどの顧客を持つが、STT参加により電通とスポーツイベントにおけるスポンサー価値定量化の実証をすることに向けて検討を進めているという。日本市場への参入も図りたいとFlynn氏は述べる。
なおスポーツスポンサー価値を知りたいというニーズは高いのだろう。SAPも自社イベントで、コンピュータビジョンを使って自社のロゴがどのぐらい露出しているのかを見る技術を見せていた。