読み書き速度はどの程度?
ではパフォーマンスの検証に入ろう。今回はDS620slimにIronWolf 110 SSD×3基をセットアップした時のパフォーマンスを見るのが主眼だが、DS620slimにIronWolf 110 SSDを1基だけ追加した状態と、3.5インチ、5400回転の某社製のSATA HDDをUSB3.0のクレードルに接続した時の性能と比較したい。
計測用のPCはサードウェーブ製の15.6インチ薄型ノートである「GALLERIA GCR2070RGF-E」をチョイスした。内蔵ストレージは非常に高速な512GBのNVMe SSDが組み込まれているが、長い間撮りためた写真や動画を詰め込むには心もとない(だからNASの出番だ、という話だ)。このノートPCとDS620slimは一般的なギガビットHUBを経由して接続する。
最初のテストは定番「CrystalDiskMark」における読み書き速度だ。DS620slimの共有フォルダはネットワークドライブ(Z:)としてマウントしてから計測した。
NVMeがダントツで速いのは当たり前だが、DS620slimに組み込んだSSDの読み書き性能、特にシーケンシャルリード・ライトの性能は、3基でも1基でも変わらない。これはDS620slimの性能というより、ギガビットイーサ自体がボトルネックになっている。
LAGGでもう少し改善する可能性もあるが、SSDのパフォーマンスを引き出したいなら、より高速なLAN(2.5Gbイーサ、理想的なのは10Gbイーサ)に対応したNASを選ぶべきだが、残念なことにまだPC側で2.5Gbイーサや10Gbイーサは一般化されていない現実がある。
ただ4Kのランダムリードリード・ライトを見ると、DS620slimに3基のSSDを組み込んだ時の方が、SSD1基構成時よりも圧倒的に速いことが分かる。単なるファイルコピー等でランダムリード・ライトが効いてくるシーンはあまりないが、SSDを複数台まとめることのメリットは一応ある、と言ってよいだろう。
実利用時の速度を比較するために、ノートPCのデスクトップから各ドライブへコピー、またはノートPC上で複製する時間を計測してみた。計測は約2.1GBの単一Zipアーカイブと、容量約2GBのフォルダー(中身は107枚のJPEG画像)の2種類を使用し、それぞれ5回計測した時の平均値を比較する。
CrystalDiskMarkではUSB3.0外付けHDDよりもDS620slim上のSSDの方がシーケンシャル性能は高かったが、実利用となると話は別。USB3.0の方がDS620slimより2倍程度速いという結果が得られた。
しかし、DS620slimはNASであるため、複数のPCで同じデータを参照するような運用が可能だが、外付けHDDではドライブの接続先を物理的に変更する、あるいはホストPC上でファイル共有をして別PCと共有する、という余計な手間が必要になる。手軽さではUSBの外付けHDDには負けるが、蓄積したデータを楽しむことに関してはNASの方が優秀だ。