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子どもとスマホの啓蒙は「みんなで繰り返し」が有効

「ゲーム機でSNSに入り浸る子ども」を狙う大人たちがいる世界で親ができること――高橋暁子×マカフィー対談

2019年10月04日 11時00分更新

文● アスキー編集部

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出会い系被害から「海賊版を勧める親」まで——子どもとスマホの問題が今熱い

 子どもとスマホ利用の実態・啓蒙は喫緊の課題となっている。SNSを舞台とした出会い系被害やイジメはもちろんのこと、いわゆる海賊版サイトの利用を親が勧めるといった新しい形の問題もみられる。

 そこで、マカフィー米国本社チーフコンシューマ セキュリティ エヴァンジェリストを務めるギャリー・デイビス氏、そして子どものスマホ利用の実態を追っているITジャーナリスト高橋暁子氏による対談をお送りする。なお、マカフィー日本法人でコンシューママーケティング本部執行役員本部長兼コンシューマセキュリティエヴァンジェリストを務める青木大知氏も同席している。

ゲーム機経由でこっそりSNSを利用する子どもたち

ギャリー 本日の対談ではお互いの理解を深めるために、たとえば若年層がインターネットでサービスを使う上でどうやって安全性を高めたら良いかみたいな観点からお話しできればいいなと思います。

ギャリー・デイビス氏

—— 日本とアメリカの子どもが陥っている問題点とか、実際にどんな事件が起きているかとかみたいなことをとりあえず報告しあうといった感じではじめましょうか。ではまず高橋さんの方から、今日本で、子どもにどんなネットサービスやアプリが流行っていて、そこにどのような問題が隠れていて、実際にどんな犯罪やトラブルが起きているのか。現状を教えていただけますか。

高橋 年齢によって利用方法がかなり違うのですが、日本の小学生は、たとえばゲーム機や学習用タブレットといったもの経由でもネットやSNSを使っています。ですから、日本の小学生はスマホを持っている率は少ないのですが、ネット自体は頻繁に利用しています。その結果、ゲーム機経由で出会い系被害に遭ったり、安易にSNSに投稿して炎上する……といったことが起きています。

 一方、小学生のアプリ利用は、使っている子でもLINEぐらい。あとはYouTubeやTikTokなどを好んでいます。最近特に多いのが、ユーチューバ—に憧れる子、TikTokで有名になりたいという子が目立ちます。親に隠れてこっそり書き込んだり、自撮り動画をアップロードして炎上した挙げ句、YouTubeに転載されたことで個人情報が広範囲に晒されてしまったりなどの被害が少なくないです。

 中学生になるとスマホ所持率が一気に上がります。そして多くの中学校から話を聞くに、LINEの利用率も急上昇します。LINEでのコミュニケーションによるトラブルが小学校高学年から中学校ぐらいは多くて、ネットでいじめにつながることが結構起きています。日本で一番いじめが多いのは小学生から中学生ぐらいなんですけど、ネットのいじめに限ると中学生が多いかなという印象です。

 そして中学生になると、早い子はTwitter(ツイッター)、Instagram(インスタグラム)、そしてZenly(ゼンリー)なども使い始めます。それによって、自分が今居る場所を公開して自宅が割れてしまったり、知らない人とつながってしまいます。また、人気者になりたくて自分が映っている動画を投稿する子がどっと増えます。結果、出会い系被害につながったり、いわゆる自画撮り被害という、自分のセルフヌードを第三者に送ってしまい児童ポルノの被害に遭うなどの事例が急増するんです。

アプリ運営元の国家にも留意せよ

ギャリー お話を聞く限り、若年層というのは、どの国でも変わりませんね。興味深いです。じつは今、本を執筆中でして、そのなかでは「子どもたちがインターネットを当たり前に使う現在、子育てする親にはどのような知識が必要なのか?」というテーマにも触れています。「周りに認められたい」もしくはそれ以前の「ただ人気者になりたい」という思いから子どもたちがそういうことをしているのです。

 ここで大きな問題になるのは、いったんアップロードしてしまうと永遠にインターネットに残るということ。ですから若い頃に面白いと思ってアップロードしてしまったコンテンツは、大人になってから職探しや専門の仕事に就きたいというときに問題になってしまうわけです。

 今、日本でどういったことが起きているかお話ししていただきましたが、TikTokへの言及があったことであらためて気づきました。TikTokはどこでも人気があるアプリなんです。MAU(月間アクティブユーザー)は世界中で5億人と言われています。ユーザーは理解していないのですが、運営元は中国企業です。そして中国政府は、国民のプライバシーの担保がうまくできていませんし、アプリを使っているユーザーのプライバシーもきちんと担保できていません。

 また、FaceApp(フェイスアップ)というアプリがあります。日本でどのくらい人気があるのかわかりませんが、いわゆるセレブが使い始めて最近アクティビティが活性化してきたアプリではあります。これもTikTok同様に海外——ロシアでホスティングされています。中国と同じように、ロシアでも国民のプライバシーはきちんと担保されていません。

 Zenlyは、知らない人たちとつながりたいという思いをゲーム化するアプリだと思いますが、親としてはすごく懸念しなくてはならないことの1つだと思います。たとえば子どもが知らない人に対して何かを公開してしまうということは、児童ポルノ以外にもあるかもしれません。そしてそれは子どもたちの理解を超えるリスクがあるのです。

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