「Oracle OpenWorld 2019」でケネス・ヨハンセン氏がインタビューに応じる
日本オラクル新CEO、OOWで見た「パラダイムシフト」を語る
2019年09月24日 07時00分更新
日本オラクルCEO就任は「良いタイミング」、まずは既存顧客のクラウド移行を支援
日本オラクルでは2017年からフランク・オーバーマイヤー氏がCEOを務めてきたが、9月2日付でヨハンセン氏が執行役 CEOに就任し、オーバーマイヤー氏が社長を務める新体制になっている。
日本オラクルのCEO就任についてヨハンセン氏は、「非常に良いタイミングで就任できた」と語る。5月にOracle Cloudの東京リージョンが開設され、さらに来年初頭までには大阪リージョンも開設予定となっているからだ。大阪リージョンの開設後には、オラクルのアプリケーションクラウド(SaaS)群も国内提供をスタートさせる。
日本オラクルが8月に国内で開催した記者説明会では、東京リージョンの利用企業数は「500社以上」と発表されていた。そしておよそ1カ月後となる今回は「650社以上」が利用していると数字をアップデートしている。その勢いは続くだろうかと尋ねたところ、次のように答えた。
「新規顧客がオラクル(のクラウド)にやって来て、非常に強い成長を見せている。それに加えて、クラウドセールス専任の従業員も増している。われわれは日本市場においてクラウドビジネスから大きな利益が上げられるものと確信しており、そこに注力している。そうでなければ(大阪に)第2のデータセンターを作ることはなかっただろう」
ヨハンセン氏は「オラクルは成功が見込めない市場には投資をしない」と強調し、もしも成功の見込みがなければ、たとえCTOのエリソン氏が大阪データセンター開設を望んだとしても、厳しく予算を監視しているCFOのサフラ・キャッツ氏が許さなかっただろうと笑う。
竹爪氏も「顧客数はこれからさらに伸びると見ている」と語った。8月の発表時点ではデータベースなどのデータマネジメント系サービスの利用が80%以上を占めていたが、その後HPCサービスなど新たなワークロード需要も出てきており、データ管理系サービスの比率は75%程度に下がっているという。またデータ管理系サービスにおいても、Exadataなどクラウド移行作業に時間を要する案件がこれから入ってくるだろうと期待を示す。
それでは最終的にオラクルはクラウド市場における“メジャープレイヤー”になるのか、AWSやマイクロソフトと同等以上の市場シェアを獲得するイメージを持っているのか。記者からのそんな質問に対しては「答えにくい質問だね」と苦笑しながら、ヨハンセン氏は「Oracle Cloudは大規模でミッションクリティカルなワークロードに強みを持つ」と市場でのポジショニングを説明したうえで、次のように答えた。
「たとえば金融取引などのミッションクリティカルなワークロードをクラウド移行するのは難しく、顧客の多くはまだオンプレミスでそれを走らせている。それでも日本の顧客の声を聞くと、クラウド移行への欲求は徐々に出てきている。Oracle Cloudはインフラ構築においてモダンな(先進的な)手法を用いており、アーキテクチャも他社とは少し違うため、パフォーマンスやセキュリティを違うレベルで保証できる。したがって、わたしは市場シェアについてそれほど心配はしていない。オラクルにとって最も重要なことは、インストールベースである(既存の)顧客の、段階的なクラウドへの移行を手助けすることだ。大規模なワークロードの移行には少し時間がかかるが、それができればわれわれに良い結果をもたらすだろう」(ヨハンセン氏)
ちなみにオラクルではハイブリッドクラウドのソリューションとして、OCIと同じハードウェア/ソフトウェアスタックで構成される「Cloud at Customer」も提供している。顧客データセンター内に設置できるこのマネージドクラウドの存在も、政府/自治体/公共系顧客や金融系顧客などに強くアピールするだろうと語った。
顧客と直接的な関係を強化し、オラクルの持つイノベーションを提供する
日本オラクルの強みは日本市場で長年にわたり築いてきた「歴史」であり、大きなインストールベースと顧客企業からのロイヤルティだとヨハンセン氏は語る。CEO就任後、日本オラクルの従業員にはまず、顧客との直接的、対面的なつながりをより重視してほしいと伝えたという。
「フランク(オーバーマイヤー氏)もこれまで、従業員に対してより顧客と対面するよう促してきた。しかし(現状は)まだ、われわれのビジネスはパートナーと実施するものがほとんどだ。わたしは、オラクルがシリコンバレーで実践しているイノベーションをできるだけ早く顧客に届けて、顧客と共にイノベーションを起こせるような関係を構築していきたいと考えている。また日本には非常に大きなパートナーコミュニティがあり、パートナーは顧客企業のビジネスに対する豊富なナレッジを持っている。パートナーのナレッジとオラクルのイノベーションは、非常に強いコンビネーションとなるだろう」(ヨハンセン氏)
また竹爪氏は、Oracle Cloudにおけるサービスの選択肢が増えていく中で、顧客企業の既存のアーキテクチャや運用手法に応じたクラウド移行のベストプラクティスを準備し、パートナーと共に顧客に届けていく必要があると認識していると語った。