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Logitech本社訪問記 第1回

新MXシリーズにこめた「スイス伝統のクラフツマンシップ」 - Logitech本社訪問記

2019年09月18日 14時00分更新

文● 山本敦 編集●ASCII

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MXシリーズ史上、最も完成度の高い
センサー/スクロールホイールが誕生した背景

 ジャーナリストのため特別に、新しいMXシリーズの開発の舞台裏が公開された。日本法人であるロジクールが発表した新しいワイヤレスマウスの「MX MASTER 3」、ワイヤレスキーボードの「MX KEYS」の特徴については別記事でレポートするので合わせて参照してほしい。

MX MASTER 3をデザインする際にはサムエリアのブラッシュアップが何度も行われた。

本体の形状だけでなく質感や操作感の決め手にもなる素材を慎重に選んでいった。

MX MASTER 3の最終形に近いデザインモックアップ。

 どちらの製品もプロダクトデザインはスイスの本社で行われている。最初にデザイナーが描いたラフスケッチから3Dプリンタで立体模型を起こし、タッチ&トライを繰り返しながらスクロールホイールやボタンの配置、手触りを左右する素材などディティールを調整していく。Senior CMF Group Leadのジャスパー・プア氏は「マウスのMX MASTER 3は特に操作の正確性と快適さの向上を導き出すデザインに仕上げることに腐心した」と振り返る。

 MX MASTERシリーズに搭載されているDarkfield Laser Technologyの高精度なトラッキングセンサーが改良を重ねてきた歴史も振り返ることができた。光学設計の主幹エンジニアであるフランソワ・モリエ氏の説明によると、ワイヤレスマウスに搭載するレーザーセンサーの小型化と高精度化の両立を進めてきたLogitechでは、2009年に初めての商品化を達成した後にも、さらなるバッテリーライフの向上を目指してセンシングユニットの改良を図ってきたという。

MXシリーズに搭載してきたトラッキングセンサーの変遷について語るフランソワ・モリエ氏。

ガラスの上でも高精度なトラッキングを可能にしながら、センサーの小型・薄型化と省電力化を合わせて実現してきた。

左側がMX MASTER 3に搭載された最新鋭の基板。

トラッキングセンサーの精度を確かめるためのラボ施設。

ボタンの感度、繰り返しクリックされた場合の強度を専用の評価試験機器で確かめる。データは詳細までグラフ化される。

透明なガラス板の上でも変わらないトラッキング精度を実現するために、透明度が異なるガラス板を何枚も用意する。

 最新モデルではセンサーをレーザー方式からIR LED方式に変更した。「レーザー方式と同等の高い読み取り精度を保ちながら、さらにIR LED方式の特徴である省電力駆動性能を併せ持たせた。IR LED方式のユニットは堅牢性が高く、意図せずマウスを落としてしまった時などに製品が故障するリスクを減らせるメリットがある」とモリエ氏が狙いを説く。

 MX MASTER 3の大きなハイライトである新開発のスクロールホイールの特徴については製品情報の記事で詳しく解説した通りだ。マウスの機構設計を担当するエンジニアのニコラ・ラモン氏は「2018年の1月にEPFLの研究室とプロジェクトチームを組んで新しいスクロールホイールの開発に着手した。その後、6月にプロトタイプのマウスに新しいスクロールホイールの試作パーツを組み込んで、厳しい評価基準に従って耐久テストを繰り返してきた」と経緯を振り返った。最終的に完成したスクロールホイールのユニットは全12点のパーツで構成されている。

新しいスクロールホイールの仕組みを説明してくれたエンジニアのニコラ・ラモン氏。

スクロールホイールの精度、耐久性をテストするために作られた専用の評価機械。

 キーボードの「MX KEYS」に搭載されているLEDバックライトは、新たに明るさセンサーを組み込んだことで外部環境の照度を検知してバックライトの光量を変え、駆動時の消費電力を低く抑える設計とした。電気設計のエンジニアであるジャコポ・オリーヴォ氏は「キーに触れていながら操作していない時間」を近接センサーが判別することによって、バックライトの消費電力を賢くセーブする機能がMX KEYSに搭載されたことに注目してほしいとアピールする。

MX KEYSに搭載されたLEDバックライトキーと照度センサーの仕組みを語るジャコポ・オリーヴォ氏。

照度センサーがキーボードの周辺部分に配置されている。

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