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「Oracle Cloud」はどんなときに選ぶ? 実際のユーザー視点で率直にポイントを語る

エンジニアがリアルに語った!「マルチクラウドスキル」の重要性

2019年09月13日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

提供: 日本オラクル

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 日本オラクルは2019年8月6日と7日、国内では初となるOracle Cloudのカンファレンスイベント「Modern Cloud Day Tokyo」を開催した。

 このイベント2日目には、システムインテグレーターであるアトミテックの大森信哉氏、BlueMemeの上原司氏をゲストに迎え、Amazon Web Services(AWS)などさまざまなパブリッククラウドを利用してきた現場エンジニアとして「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」をどう評価しているのか、これからのマルチクラウド時代のOCIにどんな期待をしているかを語るセッションが開催された。

 後半では会場からの質問タイムも設けられ、これからのクラウドエンジニアが身に着けるべき“マルチクラウドのスキル”についても話が及んだ。さらにはユーザー主導のOCIユーザーグループ設立もアナウンスされ盛り上がった、このセッションの模様をレポートする。

OCIへの率直な評価を語った、BlueMeme プロフェッショナルサービス部の上原司氏(中央左)とアトミテック Cloudiiの大森信哉氏(中央右)。司会は日本オラクルの杉山卓氏(左端)、加藤涼太氏(右端)が務めた

アトミテック:「料金がケタひとつ安かった」OCI、日本のユーザーグループもスタート

 アトミテックでは、顧客企業におけるOCIの新規導入や既存システムの移行、運用保守までをオールラウンドに技術サポートするクラウドサービス「Cloudii(クラウディ)」を提供している。8月からはCloudiiユーザー向けに、OCIとAWSやMicrosoft AzureなどのIaaSを一元管理できるマルチクラウド環境向けの管理ツール「Cloudii Cloud Manager」のベータ提供も開始している。

 インフラエンジニアの大森氏はこれまで、JAWS-UG会津にもコアメンバーとして参加するなど、AWSを中心に利用してきた。そして1年ほど前からOCIを触り始め、現在はほとんどの業務がOCIを利用するものになっている。ちなみに大森氏の好きなサービスは、データベースの構築や設定、運用が簡単にできる「Oracle Autonomous Database」シリーズだという。

アトミテック 大森氏。「最近はJAWS-UGに行くと、一部の方から『あっ、Oracle Cloudの人が来た』と言われるようになりました(笑)」

 大森氏がOCIを使い始めたのは、アトミテックがOCIの東京リージョン開設を見越して、Cloudiiサービスを立ち上げることにしたことがきっかけだった。

 「正直に言うと、上司にOCIを使ってみないかと誘われたときは『えっ、なぜオラクル!?』と思いました(笑)。ただ、OCIを扱うことで新たな市場が狙えるという会社の戦略が面白いと思い、また自分自身にとっても新たな経験になると考えて、チャレンジすることにしました」(大森氏)

 2018年10月のCloudiiリリース後、なかなか東京リージョンが開設されずやきもきもしたが、「そのぶんOCIをじっくり検証して、ナレッジを蓄積する時間ができました」と笑う大森氏。5月に東京リージョンが運用開始されてからは、当初の狙いどおりCloudiiの獲得案件も順調に増えてきたと語る。「案件としては、やはりOracle Databaseを使ったシステムのクラウド移行が多いですね」(大森氏)。

 初めてOCIに触れたときの印象は「画面操作が初心者にもやさしそう」。また公式ドキュメントが整っている点、チュートリアルが役に立った点も良かった。一方で、現状ではまだAWSなどと比べて「IaaSのサービスラインアップが少ない」のも事実だと指摘する。もっとも、これは大森氏がAWSを触り始めたころと似た状況であり、OCIにおいてもサービス追加/更新のスピードが徐々に高まってきていることは実感していると語った。

 「インフラエンジニアとして最もうれしい点」として、大森氏は利用コスト、特にネットワークサービス周りの料金が非常に安いことを挙げた。たとえばオンプレミス環境とOCIとの直接接続サービスである「OCI FastConnect」は、時間単位の固定料金型であり、データ転送量に対する課金がない。実際に他社クラウドの接続サービスと併用して比較してみたところ、「料金がケタひとつ安かった。ハイブリッドクラウドを構成するときなどには、特にいいと思います」と語る。

OCIのファーストインプレッションと今後への期待。2019年中に大阪リージョンも開設されることで、「顧客にまた新たな提案ができるようになるのが楽しみ」だと語った

 なお大森氏は、OCIのユーザーグループである「OCIJP」が発足したこともアナウンスした。すでにOCIを使っている人、これから触りたい人を含めて、ユーザー主体でノウハウの共有や意見交換などを行っていく。9月17日には都内で第1回のイベントを開催予定だ。

BlueMeme:複数の社内システムをOCI上に移行、技術的な強みを実感

 続いて、BlueMemeのインフラエンジニアである上原司氏が登壇した。

 大規模なアジャイル開発/モデル駆動型開発に特化したシステムインテグレーションやソフトウェア販売を行うBlueMemeでは、超高速開発基盤「OutSystems」を用いたアジャイル開発サービス「agile SDK」のサービス提供基盤としてOCIを採用している。

 今回、上原氏が紹介したのは、BlueMemeが複数の社内システム基盤としてOCIを採用した事例だ。同社では近年、ビジネスの急拡大に伴って組織や拠点を拡大している。そのため拠点内/拠点間のネットワーク構成が複雑化してきたが、担当できるネットワークエンジニアの数は不足しており、なるべく運用管理の手間を軽減したい。そこで、オンプレミスにある社内システムをクラウド移行することにした。「ちょうどそのころ、社長がOracle Cloudの営業担当と知り合って、この案件はOCIで行こうとなりました」(上原氏)。

BlueMeme 上原氏。「OCIはまだサービスが少ないですが、新入社員などにはむしろいいかもしれない。これからサービスが増えていく段階なので情報を追いかけやすいと思います」

 具体的に取り組んだのは、内線電話用IP-PBXサーバーのクラウド移行、社内VPNサーバーのクラウド移行、Oracle Databaseを使ってきた販売管理システムのOracle Autonomous Databaseへの移行(現在進行中)などだ。

 まず内線電話用のIP-PBXサーバーでは、社外(外出先)や拠点からVPN経由でオンプレミスのサーバーに接続する形態だったものを、OCIに移行することでインターネット経由で(VPNなしで)アクセスできるようにした。これにより、今後さらに拠点数が増えても対応できる環境に改めることができた。「クラウド移行には1カ月もかかりませんでした。この経験から『OCIは意外と使えるんじゃないか?』と考え、VPNサーバーのクラウド移行も実施することにしました」(上原氏)。

 VPNサーバーのクラウド移行においては、VPNサーバーとRadius認証サーバーをOCI上に配置した。ここで役立ったのが、OCIが備える「VCN Transit Routing」機能だったという(VCN:Virtual Cloud Network)。社内システムサーバーにはOCI上に移行したもの、オンプレミスに残したものの両方があるが、ユーザーが社外からアクセスする場合には、OCI上のVPNルーターに接続すれば、アクセス先サーバーに応じてVCN Transit Routing機能がルーティングしてくれるハブ&スポーク型のネットワークを構成することができた。

 「ほかのクラウドよりも良いと感じた点として、まずはこのVCN Transit Routing機能が使えたことがあります。OCIでこの環境を整えたことで、拠点数が増えても新たに本社とのVPNを構築する必要がなくなりました」(上原氏)

BlueMemeではOCIを使ってVPNサーバーのクラウド移行を完了した。現在は販管システムのAutonomous Database化が進行中だ

 またセキュリティ面でも、いくつかの点で“エンタープライズ向けクラウド”らしい強みを感じたという。OCIではインスタンス上のOSファイアウォールが最初から設定済みの状態で提供されており、設定漏れによるセキュリティリスクを防げる。またステートレス/ステートフル一体型のファイアウォールを備えており、ネットワークACL(アクセス制御リスト)もステートフルのため、セグメント全体の管理者と各インスタンスの管理者、それぞれが設定することで「二重で守れる」と説明した。

 大森氏と同様に、上原氏もOCIのコストパフォーマンスについては高く評価しているという。特にAMD EPYCプロセッサを使ったサーバーインスタンスは「びっくりするくらい安い、これでいいの? と思うくらい」だと語る。その一方で、OCIのサービスラインアップはやはりまだ少ないと感じており、今後のサービス拡充に期待しているともコメントした。

これからのクラウドエンジニアに向けた「マルチクラウドのススメ」

 同セッション後半では、会場の聴講者がスマートフォンからリアルタイムに質問を投稿し、それを受けて大森氏、上原氏が答えるコーナーが設けられた。短い時間だったが40件超の質問が集まり、そのうち聴講者の関心が高かった10問ほどが回答された。

 会場からの質問では、やはり他社クラウド、特にAWSのクラウドサービスと比較してどうかというものが多かった。たとえば「AWSとOCIで環境構築の仕方は大きく異なるのか?」という質問については、両氏とも、一部にOCI独自の機能や考え方はあるものの、インスタンスやネットワークの基本的な考え方は大きく異ならないので、AWSに触れたことがあればOCIにもスムーズに入っていけるはずだと答えた。

 また「他社クラウドのように、OCIにもコンテナやサーバーレスアーキテクチャを簡単に実現できるサービスはあるか?」という質問に対し、大森氏はKubernetesのマネージドサービスである「Oracle Container Engine for Kubernetes(OKE)」や、オープンソースのサーバーレス環境を提供する「Oracle Functions」といったサービスがあることを紹介し、「クラウドネイティブなサービスも着々と追加されている段階です」と現状を説明した。

 「エンタープライズがオンプレミスの継続ではなく、OCIに移行するメリットは?」という質問も出た。大森氏は「会社規模にかかわらず、クラウドのメリットをいかに生かして構築できるか」だと説明し、まずはオンプレミスからのクラウド移行でインフラ更新などのコストを削減する、将来的にはサーバーレスアーキテクチャを採用してインフラ運用の手間をなくすなど、「クラウドのいいところ」を積極的に活用すべきだと語った。上原氏も同意見だと述べ、「これからさらにクラウドのメリットは増えるので、いまはデメリットを考える時期ではないと思います」とコメントした。

 「会社判断でなく、個人の裁量で自由にクラウドサービスを選ぶとしたら?」という質問に対しては、両氏とも率直に「まずはAWS」だと語った。現在のクラウド市場ではAWSがデファクトスタンダードの位置付けであり、サービスラインアップも豊富である。まずはそういう選択になるのが実情だろう。

 ただしその一方で、「エンジニアとして、マルチクラウドのスキルを身に着けることはこれから必須になると思うか?」という質問に対しては、両氏とも「そう思う」と回答している。案件の内容に応じて他のクラウドも柔軟に選択できる「マルチクラウドのスキル」を身に着けておくことで、より多くのメリットを享受できるからだ。

 「最近はクラウド各社でそれぞれ独自のメリットが出てきており、たとえばOracle Databaseを使う案件ならばOCIを選択するなど、市場の状況も少しずつ変わってきている気がします。会社の戦略やエンジニア個人の性格にもよると思いますが、複数のクラウドについて学ぶことで『引き出しが増やせる』、どこに行っても通用できるエンジニアになれると思います」(大森氏)

 「お客さんと会話をして、そのニーズに応じて最適な提案をしていくのがシステムインテグレーターの役割。どうしてもAWSで、ということであればそれを使いますし、そうでなければコストメリットやこれまでの実績といった比較資料を出して、どれにするかを選んでいただく。OCIについてはまだまだこれから実績を積んでいく段階ですが、いずれにせよエンジニアはある程度マルチクラウドを触って、スキルを身に着けておく必要はあると思います」(上原氏)

* * *

 最近、マルチクラウドに取り組む必要性が強く叫ばれているのは、クラウド利用が浸透する中で多くの企業が「単一のクラウドだけではすべてをまかなえない」現実に気付いたからだろう。したがってどのクラウドを使うかを提案し、利用する側のエンジニアには、マルチクラウドに対する“目利き力”が求められるようになる。さまざまなクラウドに触れてその特徴を把握し、実際に利用できるスキルを身に着けることが必要だ。

 セッションの中で、アトミテックの大森氏は「OCIには“後発クラウド”のメリットをさらに生かしたサービスに期待している」と語った。コストパフォーマンスの高さ、第2世代(Gen2)のデータセンターインフラ、オンプレミス環境との完全な互換性など、OCIは先行する他社クラウドの課題をふまえたうえでサービス開発ができる強みがある。これからさらにサービス追加を加速し、OCIならではの特徴を積み重ねることで、マルチクラウド時代に「OCIを選ぶ必然性」はますます高まっていくことになるはずだ。

(提供:日本オラクル)

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