Netflixのアメリカでの有料契約者数が初の減少に
Netflixが7月17日に発表した2019年第2四半期(4月~6月)の決算報告によると、同サービスのアメリカ以外での有料会員は283万人増加したものの、アメリカでの有料会員は初の減少に転じたと言います。具体的には、アメリカ国内で13万人ものユーザーを失ったのです。
2019年第1四半期の決算発表で、同社の最高経営責任者であるリード・ヘイスティングスさんは、アメリカ国内のNetflixの視聴時間はテレビ視聴時間の約10%に当たると語っていました。5年後や10年後もこの状況は続くのでしょうか。
Netflixは今回会員数が伸び悩んだのは競合他社によるものではなく、値上げした地域で有料会員の伸びが鈍化したことが原因だと読み解いています。
一方で、ディズニーが11月12日にサービスを開始する「Disney+」の価格は月額6.99ドル(約780円)。Netflixの標準プランは12.99ドル(約1450円)なので、その半分ほどの金額です(ちなみに、日本ではNetflixは864円〜)。
現時点ではまだサービス開始さえしていないDisney+が、すぐにNetflixに取って代わることはないでしょう。しかし、その価格帯からも、いずれはNetflixにとって、大きな脅威となり得るのは間違いありません。今回はディズニーがNetflixを越えられるのか考えていきましょう。
3つのサービスでNetflixに対抗できるのか
アメリカではミッキーマウスの著作権の保護期限が近づくたびに、著作権延長法が延命されるので、「ミッキーマウス保護法」や「ミッキーマウス延命法」と揶揄されています。100年近くも歴史を持つディズニーのブランド力を表した有名なエピソードだと言えるでしょう。
しかも、近年ディズニーはピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、21世紀フォックスを買収しました。彼らは『美女と野獣』や『アナと雪の女王』などの作品に加え、『トイ・ストーリー』シリーズ、『アベンジャーズ』シリーズ、『スターウォーズ』シリーズ、『デッドプール』シリーズなども傘下に収めているのです。
2019年には同社の『アベンジャーズ/エンドゲーム』『キャプテン・マーベル』『アラジン』『ライオン・キング』『トイ・ストーリー4』が世界中で大ヒットしました。7月末時点で、同社の世界興行収入は76億ドル(約8270億円)で史上最高額を更新しています。まさに「ディズニー帝国」と言うべき存在感です。
ディズニーの発表によると、Disney+ではディズニー、ピクサー、マーベル、ルーカスフィルムの最新映画はもちろん、『スター・ウォーズ』シリーズの実写ドラマや『わんわん物語』のリメイク版などのオリジナル作品も観られるようです。とりわけ子供がいる家庭では、ほかの動画配信サービスに比べて、Disney+は圧倒的に有利かもしれません。
彼らは大人向けの「Hulu」と、スポーツ中継などを手がける「ESPN+」も支配下に収めています。アメリカでは8月6日に、3つのサービスをあわせて12.99ドル(約1400円)という新パッケージが発表されました。Disney+だけではNetflixに対抗するのは難しいですが、これら3つのサービスをあわせると少し景色が変わるかもしれません。
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