通信とクラウドの事業者によるメイド・イン・ジャパンのコラボレーション
BBIXとさくらが合弁会社を設立 5Gを見据えたモバイルソリューション開発へ
2019年07月30日 07時00分更新
2019年7月29日、ソフトバンクの子会社でIX事業を展開するBBIXとさくらインターネットは通信事業者向けのサービス開発を手がける合弁会社「BBSakura Networks」の設立を発表。同日行なわれた記者向けレクチャーでは、5Gを見据えた通信市場におけるソフトウェア開発の重要性がアピールされた。
5G直前の通信市場にメイド・イン・ジャパンの復権を
BBSakura Networksは、ソフトバンクの子会社で携帯通信事業者(MNO)間の国際ローミングサービスを提供するBBIXとさくらインターネットの合弁会社になる。日本や香港、シンガポールの各拠点を通して、「ローミングピアリングエクスチェンジ(RPX)サービス」を提供してきたBBIXのネットワークと営業力、さくらインターネットのソフトウェア開発力を結集。5Gを見据えたモバイルネットワークソリューションを開発し、おもに国内外でサービスを展開していくという。
新会社の出資比率はBBIXが51%、さくらインターネットが49%で、代表取締役社長にBBIX技術本部 本部長の佐々木秀幸氏、取締役COOにさくらインターネット IoT事業推進室室長の山口亮介氏が就任する。所在地は西新宿にあるさくらインターネットの東京支社内で、当初のメンバーは両社から出向した20名強とされている。新会社のロゴは、インターネットや回線ケーブルをモチーフにした桜の花がシンボルとなっており、CAT7 SSTPケーブルの芯線のようにも見えるという。
今回の合弁会社の設立の背景には、5G時代を控えたネットワークのソフトウェア化がある。佐々木氏は、「ソフトウェア開発力が競争力を左右する時代」と述べ、1990年代、アジアの交換機市場のシェアを誇っていた日本メーカーのプレゼンスが低下し、ファーウェイ、エリクソン、ノキア、ZTEなどが覇権を握っている現状を指摘。今後、通信事業者が利用する通信機器が専用ハードウェアから、柔軟性の高いソフトウェアに移行していく中、「通信事業のBBIXとクラウド事業のさくらインターネットでメイド・イン・ジャパンのユニークなソリューションを世界に展開する」(佐々木氏)のが目的になるという。
新会社の取締役COOとなるさくらインターネット IoT事業推進室室長 山口亮介氏は、「メリットはスピードと両社の価値観の違い。BBIXのようなキャリアと、コンピューティングを手がけるさくら、常識が違うから組む意義がある」と語っており、通信事業者とクラウド事業者との“異業種コラボレーションの価値”を強調した。
5Gで多様化・高度化するニーズに応えるサービス開発
BBSakura Networksが手がけるモバイルネットワークソリューションは、5Gで多様化・高度化するニーズに応えるサービスの開発が大きなテーマとなる。
5GではLTEの100倍にもなる「高速・大容量」、LTEの1/10という「低遅延」などの特徴があるが、BBSakura Networksで重視するのは「多接続」と「ネットワークスライシング」という特徴だ。LTEではデバイスの同時接続数が1000個/1k㎡程度にとどまっていたが、5GになるとIoTを前提に100万個/k㎡程度に拡大する。また、大容量転送、低遅延、面積あたりの帯域幅、高可用性、省電力重視など用途にあわせて異なる仮想ネットワークを設計できるスライシングも大きな特徴だ。
さらに、低遅延の求められるリアルタイムなレンダリングやデータ分析などを実現する「マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)」にも注目が集まる。このような特徴を持つ5Gにおいては、コネクテッドカー、環境モニタリング、スマートシティ、ローカル5Gなど、ニーズがまさに高度化・多様化するため、柔軟性の高いネットワークを実現するソフトウェアの開発力は重要になる。
さくらインターネットはIoT/M2M向けのSIMサービス「さくらのセキュアモバイルコネクト」のバックエンドにあたる4Gのモバイルコアを自社開発。ソフトウェアやクラウドならではのコストメリットや機能の柔軟性を実現してきた。BBSakura Networksでは、このさくらのセキュアモバイルコネクトで用いられているモバイルコアに磨きをかけるとともに、今まで手動で行なっていた設定や運用の自動化を実現。おもに海外の通信事業者やMNOなどをターゲットに5Gを見据えた新サービス開発を本格化させるという。