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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第226回

Googleの支援で生き残ろうとしている“第3のOS”「KaiOS」 ケータイ特化で成功

2019年06月29日 12時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII編集部

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 “第3のモバイルOS”……いまや懐かしい響きとなったが、ここにきてAndroidとiOSに続くOSが台頭し始めている。それが「KaiOS」だ。フィーチャーフォンに特化しているのが、以前の第3のOSブームとの大きな違いで、Googleを味方につけるなど政治スキルも成長を後押ししているようだ。

南アフリカのキャリアで売られているKaiOS搭載ケータイ。何と2000円弱だ

約2000円の3Gフォンからバナナフォンまで

 「KaiOS」はHTML5、JavaScriptなどのウェブ技術をベースとしたモバイルOSで、”スマートフィーチャーフォン”という呼ばれ方もしている開発元のKaiOS Technologiesの創業は2016年で、KaiOSのリリースは2017年。香港、米国、フランス、台北、中国・上海、インドに拠点を持っているという。創業メンバーでCEOとして率いるSbastien Codeville氏はフランス人で、アジアを拠点にAlcatelなどモバイル業界でキャリアを積んだ人物とのことだ。

 KaiOSを搭載したデバイスとしては、HMD Globalが2018年のMWCで発表したフィーチャーフォン「Nokia 8110 4G」が有名だ。世界的なヒット製品であるNokia 8110のリバイバルとして登場したものだが、4Gに対応。ファームウェアアップデート後には、現代風にGoogle検索、YouTube、Googleマップ、さらにはGoogleアシスタントも動く。

 Nokia 8110 4Gが79ユーロ(1万円程度)であるのに対し、KaiOSの本領発揮と言えるのが、より安価な端末だ。特にインドのReliance Jio「JioPhone」シリーズだろう。2017年8月に登場した初代JioPhoneは、なんと無料(1500ルピー、約2500円のデポジットが必要)で登場。1年後の2018年に発表された2代目は、Facebook、WhatsApp、YouTubeなどのアプリを搭載、QWERTYキーボードなどの特徴を持ち、2999ルピー(約4700円)だった。

 南アフリカのMTNに至っては、「Smart S」という3Gフィーチャーフォンを249ランド(約1900円)で発売し、話題となった。

 このほか、TCL(Alcatel Mobile)、Micromax、Doro(シニア向け端末を作るスウェーデンのメーカー)などの端末メーカーに、キャリアではAT&T、T-Mobile、Sprintなどと提携している。

Googleを味方にしたのが最大のポイント

 冒頭に書いたように、AndroidとiOS以外のモバイルOSの試みは以前は多数あった。しかし、Microsoftは「Windows Mobile」を終了し、Firefox OSやUbuntuは撤退(UbuntuはUBortsとしてコミュニティーベースで開発が続いている)し、Tizenは唯一のベンダーだったSamsungがスマートフォンでの採用を停止し、方向性をウェアブル端末やIoTに移している。残るはJolla「Sailfish OS」だが、これも苦しい状態が続いている。

 先行者が失敗する中で、KaiOSは最初からGoogleを味方につけた。2018年6月、GoogleはシリーズA投資としてKaiOSに2200万ドルの投資することを発表した。これにともなうは資金だけではない。Googleのサービス(Googleアシスタント、Googleマップ、YouTube)も利用できるようにした。

 KaiOSはFacebook、Twitterなどとも協業している。Facebookは人気のメッセージサービスWhatsAppをもつ。

 だが、先行したプロジェクトが無意味だったわけではないのも確かだ。KaiOSはFirefox OSの土台となったB2G(Boot to Gecko)のフォークだ。

 Firefox OSがスマートフォンを途上国の人に、というアプローチだったのに対し、KaiOSは”スマートフィーチャーフォン”と明確にフィーチャーフォンと途上国市場をターゲットにしているところがよかったのかもしれない。スマートフォンがこれだけ普及した中でもフィーチャーフォンユーザーはいる。KaiOSは4G、Wi-Fi、NFC、GPSなどに対応、Kai Storeというアプリストアも持つ。

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