業務を変えるkintoneユーザー事例 第48回
イシズエワークスは自動化&仕組み化で課題を解決する
嫌な仕事はなんですか?ネガティブ要素を洗い出して業務改善
2019年05月29日 09時00分更新
2019年4月18日に開催されたkintone hive fukuoka vol.4でのプレゼンで、2番目に登壇したのがイシズエワークス代表取締役 齋藤雄三氏は「欠点とか怒りとかネガティブとかを好転させて業務改善」というテーマでプレゼンしてくれた。
情報が集まってくるコックピットを作ればどこでも仕事できる
イシズエワークスは、経営コンサルティングやWeb戦略支援、組織分析、チラシ・名刺・会社案内の制作などの事業を手がけている福岡のコンサルティング企業。代表の齋藤雄三氏は、アメリカ留学から寿司職人になり、ツアコンを経て、経営コンサル会社に入り、独立したという異色のキャリアを持っている。また、障害者の福祉事業の理事も複数掛け持ちしている。
「事例はちょっと少なめ、どちらかというと業務改善をする上での考え方や視点についてお話をしていきたいと思います」と斎藤氏は前置きした上で、今後の人口推移グラフを提示した。これからの日本は人口減少社会に突入し、2025年には国民の3人に1人が65歳以上に、5人に1人が75歳以上になるという。嘆いてもこの状況は変わらないと斎藤氏は断じた。
「採用の際の適性検査でアセスメントを行なっていますが、僕自身の結果では『集団適応力』が著しく低いです。だいたいの経営者はこういういびつな形になります。価値観を診断しているものなので、集団に合わせるとか、うまくやっていくことを重要に思っていないということです。欠点ではありますが、マイナスにしないためにどうしたらいいかと言うと、集団とうまくやろうとするのは僕にとっては苦痛なので、そういったことを考えないように、自動化したり仕組み化したりする必要があります」(斎藤氏
以前働いていたコンサルティング会社で支店長をしたときも、自身が管理されるのが嫌いなので人を管理するのも苦手だったそう。そこで、業務フローを仕組み化することで、物事を前に進められるという経験をしたのが下地になっているという。今回は、その仕組みをkintoneを活用して構築した。
「昔から僕が憧れていたイメージは、コックピットのようなところで、いろんな情報が全部1回で見られて、何がどこできているのかを把握できる状況です。現在は、コックピットに情報が上がってくるためには何をしなければいけないのか、ということを試行錯誤しています」(斎藤氏)
斎藤氏の現在の働き方はやや特殊で、博多のオフィスには月に2~3回しか出勤していない。月に10日間くらいは東京に出てきており、博多にいるときも自宅で仕事することが多いという。基本的に、スマホかPCがあればすべての情報を把握できるようにしているので、どこにいても関係ない。「そろそろうちのスタッフも博多に出勤するのをやめ、事務所はいらないと思っています」と斎藤氏は語る。
会社に出勤するのは、時間や体力、お金の大きなロスとなっており、それをクリエイティビティに回せば、もっと生産性は向上するという。
ネガティブ要素を書き出してもらい仕組み化する
斎藤氏は「kintone」という名前を耳にしたことはあったものの、何に使うのかはわからない程度の認識だった。そんな時、昔からの知り合いだったサイボウズの福井さんと博多駅前でばったり出会ったそう。課題を相談したところ「そういうのをやりたいなら、kintoneを使うと面白いかもですね」と言われて、kintoneを使い始めたという。
「前の会社を退職することになった時、1日に処理するメールが5分の1くらいに減りました。それまでの80%が報告や提出物などの社内メールだったのです。コンサルタントは、クライアントのためにどれだけ作業して、提案して、改善していくところに価値があります。そこで、顧客の情報を中心にして組み立てていこうと、いろいろと実験しているところです」(斎藤氏)
まずは、顧客リストをベースにして、いろいろな情報を紐付けているそう。問い合わせは逐一kintoneに記録として残し、制作物を依頼されたら、全部タスク管理に回していく。スタッフに書いてもらっている業務の日報もkintoneに入力してもらい、蓄積しているという。さらに、これらの入力を1回で済ませるようにしている。出力はデータをいろいろな形で抽出・整形して取り出せばいいが、手間になる入力は1回にまとめているのだ。
このように斎藤氏は自社でkintoneを活用し、その使いこなし提案を顧客のところに持っていって提案している。たとえば、ある企業は宅配便の伝票を出力するためだけに販売管理アプリを導入し、紙から手入力で転記するというムダな作業をしていたので、全部連動させるように提案。基本的に相手の業務に入り込んで一緒に作っていくというスタイルで仕事を進めるそうだ。
「障害福祉の現場に入っていていると、圧倒的にIT化が遅れていると感じます。さらに障害福祉は医療や高齢者介護と比べると市場が小さいのです。そのため、大手メーカーが汎用性のある安いシステムを作ってくれないのです。自分たちで作るしかないのですが、その時にkintoneは使い勝手がいいのです」(斎藤氏)
障害福祉の業界には、一般企業の経験者が少ないらしく、稟議書や精算書を書いたことがないとのこと。そこで、いちいちこういうものだ、と説明するより、kintoneで作ったシステムで自動化させたほうが早いという。
とはいえ、福祉事業所でどんなシステムがあったら便利ですか、と聞いても理想型がわからないので答えは出てこない。そこで斎藤氏は真逆のことを聞いた。
「『やってられない仕事をとにかく書き出してください』とか、ネガティブなことを挙げてもらいました。そうすると、いろいろ出てくるんです。それをまとめていくと、これって同じ仕事を複数の人がやってるね、といったことが出てくるんです。そういうのを1つ1つ整理していって、いわゆる業務マニュアルを作りました」(斎藤氏)
たとえば、労務がタイムカードを手動でExcelに入力していたところを、いろいろなクラウドのソフトを導入して移行しているそう。しかし、重要なのは、自動化すべきところと、自動化すべきではないところの線引きを明確にしておくことだという。全自動洗濯機を例にすると、洗濯の工程だけは自動だが、服を入れたり、取り出したり、干したりするのは自動ではない。無理に自動化すると大がかりになってしまうので、手作業でやってもそんなに問題がない部分を分ける必要があるという。
売りたい製品を持っていない会社と書いた資料でコンペに通るロジック
その線引きの大切さを示すエピソードもある。ある時、福祉事業所で大手とイシズエワークスでコンペになったそう。業務改善のシステムの案件だったので、提案資料を持って行ったところ、コンペの相手が出してきた資料では5年で総額3500万円くらいかかっていたという。斎藤氏の資料では、kintoneと他のサービスと合わせても月に2~3万円しかかかっていない。もちろん、イシズエワークスに依頼があったそうだ。
「プレゼン資料の1ページ目には、自社のことを『売りたい製品を持っていない会社』と載せています。こういうことをやりたいならkintoneを使ったらうまくできるんじゃないの、という話をしています。kintoneありきではありません。売りたいモノがある会社との明確な違いはそこです。ここで勝負あったな、と僕は思いました」(斎藤氏)
他にも、福岡の事業所の代表が突然「これからネットとかちゃんとしますから」と言い出したそう。訝しんだ斎藤氏が詳細を聞くと、毎月10万円の5年リースで容量4TBのサーバーを契約してしまったという。5人しかいない事業所には完全にオーバースペックなので、斎藤氏が尽力してキャンセルした。
「『売りたい』が先行すると、顧客のニーズや課題と乖離することが多いです。これいいよと(企業課題と関係のない製品を)売ってくる人はたくさんいますので、そういったものに気をつけて欲しいと思います。それを水際で回避するのが、僕らの仕事かなとも思っています」(斎藤氏)
イシズエワークスは、実験台としていろいろな製品を試し、便利だったり面白いものをクライアントに紹介している。その道案内をするためには、人が足りないお金が足りない、こんな仕事をやってられない、というネガティブ要素から、課題を抽出したほうが近道だという。これから人口が減るとか、経済が停滞するというのもすべてネガティブ要素。これは避けられないのだから受け入れた上で、人が少ないなら人の手に頼らない仕事を作っていくことが必要だ、と斎藤氏。
「ネガティブ要素を突き詰めていくと、プラスの要素が出てきます。そこで初めて起死回生の案が出てくるところをたくさん見てきました。みなさんの会社でもいろいろ考えて、ネガティブをネガティブで終わらせずに、プラスに転じるというところを見つけ出していただければなと思います」と斎藤氏は締めた。
ネガティブを突き詰め、kintoneを使うことでポジティブに変換する斎藤氏の魔法。これからも福祉事業所の現場でIT化推進の旗を降り続けるイシズエワークスの活動に注目したい。
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