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スープ作家・有賀薫さんインタビュー:

家事多すぎ、時間足りなすぎ。最低限の家事を考える実験「ミングル」

2019年05月24日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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●家事がつらい2つの理由

 家事がつらいのはなぜなのか。有賀さんが生活史研究家の阿古真理さんなどとともに「新しいカテイカ」プロジェクトとして考えた結果、ひとつの理由としてあげられたのは「やるべきことが肥大化していること」でした。

 「昭和時代に専業主婦という存在が出てきて『プロ主婦』になりました。ぬか漬けもお菓子も世界の料理もどんどん作る。そうしてふくらんだのが今のキッチンです。立っているだけで『やれ』という無言の圧力がある。料理道具も調味料も、作れる料理の数も多すぎる」

 ネットの情報もやるべきことを肥大化させていました。

 「たとえばインスタで素敵なごはんを見て『こんな素敵にはできない』と思ったりしますよね。そこには経済的にも違う環境の人が同居しているのに。これまでは違う世界の人が見えていなかった。雑誌だって自分と違うクラスの人たちは見えなかった。ところがネットの場合は全部が見える。比べちゃって、きょろきょろしちゃう。情報量が多すぎるんです」

 さらに、いつも決まった人だけ家事をしていることも、家事をつらくしているもうひとつの理由としてあげられました。

 「いまのキッチンは自分だけが料理をしていると孤独感がある。一人が担ってしまって、他の人を寄せつけないんですよね。カウンターキッチンはコミュニケーションができるけど、家事を分担できないのは変わらなかった。アイランドキッチンだけは参加性があるからいいなと思ったんですが、今までのものはちょっと大きすぎたんですよね」

 ミングルは部屋のすみにあるキッチンと違い、部屋の中心にあり、誰もが入っていきやすいスペースです。そうした理由は、これまで家族でうまくできていなかった家事分担(シェア)をしやすくするためでした。

 「ミングルってどこかで見たことがある形だと思うんですが、それはイベントスペースとかキャンプ場と同じだから。そういう場所では(シェアが)できている。家の中ではできないけど外ではできている、あの文化を家に持ち込もうと。なぜ他人同士でできていることが家族になるとできないか。それは、家族の関係がタテだから。お父さんは仕事、お母さんは家事とか役割においてタテ。シェアハウスとかは、役割が対等なのでヨコなんです」

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