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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第88回

奥深きフラッシュライトのスペック LEDLENSER P5Rレビュー

2019年03月26日 12時00分更新

文● 前田知洋

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ふところの中の電灯?

 フラッシュライトとは、写真撮影のときに「ピカリ」と光るライトのことではなく、懐中電灯のこと。あらためて考えれば、「懐中(かいちゅう)」とは古い言葉で、明治や大正時代では、マジシャンを紹介するとき「懐中(かいちゅう)の巾着(きんちゃく)にご用心!」なんてセリフがあったくらい古い。現代語に訳せば「マジシャンは手先が速いので、内ポケットの財布がなくなるかも?!…」という、司会者からのリップサービスだったのでしょうか。

 カメラを「写真機」、ハンガーを「衣文掛け」とは、あまり言わなくなり、小型ライトのメーカーや販売店でも英語名と同じ「フラッシュライト」に名称が変わりつつあります。

 そんな移り変わりもあってか、世の中には「フラッシュライト♡ラブ」な方々もふえてきました。おそらく筆者もそのひとりかもしれません。

現在愛用中のフラッシュライトたち。右端は30年くらい前に米国で購入、後にLED球に換えたMAGLITE。ジュラルミン製で警棒としても使えるらしい

 そんな筆者のコレクションに最近加わったのはLEDLENSER P5R(以下 P5R)。小さなサイズでありながら高輝度の420ルーメン。バッテリーを外さずに、本体に収納したまま充電できるのが特徴です。同サイズのフラッシュライトに比べて3倍ほどの価格でしたが…。

はたして、P5Rのスペックは…?

 この記事のトップの写真でも紹介しましたがP5Rは、スタイリッシュな箱に収められています。ちなみにLEDLENSERはドイツのメーカー。同梱物は、柔軟性のある太めのストラップ、重厚なポリアミド製ポーチ(ググって見たら、ナイロンのことでした(笑))、フローティングチャージ用ブラケット(壁付用)、マグネットチャージャー(USB充電用ケーブル)。USB/AC100Vの電源アダプターは付属していないので要注意です。

底面がドーナツ状に絶縁され、その部分が充電端子と電源ボタンを兼ねている

 P5Rは、底面がドーナツ状に絶縁され、その部分が充電端子と電源ボタンを兼ねています。防水性能はIPX4。これは、雨などがかかるのはOKですが、水に浸けるのはNGな防水性能です。

 もう1つの特徴はレンズとリフレクター(反射鏡)。リフレクターの弱点、ドーナツ状に光の中心が暗くなってしまう欠点をレンズにより補正しているそう。近くも遠くも光をむらなく照らしてくれます。

P5Rの独特なリフレクターレンズシステム

 他にも、光の収束を調整できるフォーカス機能、フォーカスロック機能などがあります。Hiモード(420ルーメン)/LOWモード(20ルーメン)/点滅モードがボタンを押すたびに変わります。バッテリーは専用電池が付属し、サイズは似ていますが市販のAAAバッテリー(単三)では点灯しないので注意が必要です。

暗闇で便利!消灯しないパイロットランプ

 接点は接触式でマグネットにより吸着、充電がされます。少し面白いアイディアだと思ったのは「消灯しないパイロットランプ」。「充電済み」のグリーンのライトを点灯したままにしていることで、暗い場所でもP5Rの位置がわかります。ただし、停電時は消灯すること、パイロットランプが明るいので、僅かな光が睡眠を妨げる人には寝室での充電はつらいかもしれません。

充電が完了しても消灯しないグリーンのランプで場所がわかりやすい

 筆者は車用に購入。車のコンソールに装備されたUSBソケットで充電可能な、この機能はとても気に入っています。車内で使うにはHiモードは明るすぎるため、普段はLOWで使用。カタログスペック(米国工業規格ANSI)では、HIモードで3時間、LOWモードで15時間が点灯可能と表記されていますが、筆者の環境では、それほど長時間点灯させるのは未経験。使用中に充電が切れたり光量に不足を感じたことはありません。Hiモードの連続使用時は多少本体が熱を持つことがありますが、それはどのフラッシュライトやバッテリーでも同じでしょう。

 昨今、プロダクト・ライフサイクルが短くなった…といわれていますが、P5Rはそれに逆行するかのような7年保証(オンライン登録2年延長を含む)なのも特筆すべきことかもしれません。

なぜ人はフラッシュライトに魅了されるのか…?

 記事中では触れませんでしたが、筆者が持っているフラッシュライトで最も高価なモデルは米国SUREFIRE社の9AN COMMANDER。記事冒頭の写真にも、左から2番目にチラリと写っています。価格は、な、なんと5万円ほど…(友人からのプレゼント)。バルブ(電球)だけでも、ネット検索してみたら1万円ほど…。小心者の筆者は、バルブが切れたり、本体を無くすのが怖くて外では使っていません(笑)。

 ただ明かりを照らすだけなら100円ショップでも買えるフラッシュライト。そのバラエティに奥深さを感じるのは、暗闇に明かりを照らすことで人間の活動範囲を広げて来たからでは…と筆者は勝手に推測しています。いってみれば、昔からの現実拡張の原点…、と表現するのは大げさでしょうか。

 そこには、暗闇でも世界が広がるポジティブな探究心と、恐怖映画の定番シーン「急に明かりが消えちゃう悪夢」を天秤にかけ、やっぱりそれなりのフラッシュライトを選んでしまう筆者は小心者なのかもしれません。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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