映像とドルビーアトモスの相乗効果は驚くべき体験
全米のプロたちも評価した、映画『スパイダーバース』のスゴイ音、日本語吹替版の音響監督・岩浪美和氏に聞く
2019年03月13日 20時00分更新
ドルビーアトモス上映の楽しさはぜひ映画館で
──「スパイダーマン:スパイダーバース」の日本語吹替版は、ドルビーアトモス以外にも、IMAXなど様々な上映スタイルを取るようです。おすすめはやはりドルビーアトモス版ですか?
岩浪 映像は2D/3Dの上映がありますし、音響もフォーマットは違えどいずれも緻密なデザインで作られています。だから、この作品を気に入っていただけたなら、ぜひ様々な上映パターンでご覧いただいて、違いを体験してほしいと思っています。
とはいえ、映画音響にこだわりを持つ方や、音響デザインの素晴らしさを実感したいという人は、ドルビーアトモス上映館でご覧いただくことをおすすめします。というのも、ここ最近のハリウッド映画では、最初にドルビーアトモスで音響を作り、それをIMAX用12.1chや7.1ch、5.1chに落とし込みます。その段階で位置情報やレンジ感等スポイルされる部分が大なり小なりありますから。
もちろん、ドルビーアトモスの上映でなければダメ、というわけでは全然ないのですが、『スパイダーマン:スパイダーバース』に関しては、断然ドルビーアトモス上映(字幕版、日本語吹替版問わず)が楽しいと思います。
実際、僕も、試写で先に5.1ch版を見たあとに、ドルビーアトモス版を見ることになったのですが、本当に素晴らしかったです(笑)
クリエーターがベストと思って制作した状態で聴く権利が、映画ファンにはあると思います。
── やはり映画館で観ると、ドルビーアトモスの実力を、自宅で引き出しきるのは難しいと思いました。様々な音が、耳元まで迫ってくる感覚は映画館でなくては得難いものです。
岩浪 やはりスピーカーの数が少ないと、こういった表現は難しいんです。映画館では、何十本ものスピーカーから音が出て、細かな音量差によって、位置関係をコントロールしています。ここがコンシューマー向けのドルビーアトモスでは、なかなか実現しづらい部分です。そこがまさに、映画館に足を運ぶ大きなメリットになる部分ですし、映画館のドルビーアトモス上映だからできる「素晴らしいサウンド」と「空間表現」をとことん堪能して欲しいですね。
(文/聞き手:野村ケンジ)
作品情報:
■スパイダーマン、死す?
ニューヨーク、ブルックリン。マイルス・モラレスは、頭脳明晰で名門私立校に通う中学生。彼はスパイダーマンだ。しかし、その力を未だ上手くコントロール出来ずにいた。そんなある日、何者かにより時空が歪められる大事故が起こる。その天地を揺るがす激しい衝撃により、歪められた時空から集められたのは、全く異なる次元=ユニバースで活躍する様々なスパイダーマンたちだった――。
『スパイダーマン:スパイダーバース』
(原題:Spider-Man: Into The Spider-Verse)
製作:アヴィ・アラド、エイミー・パスカル、フィル・ロード&クリストファー・ミラー(『LEGO®ムービー』『くもりときどきミートボール』)、クリスティーナ・スタインバーグ
監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
脚本:フィル・ロード、ロドニー・ロスマン
日本語吹替版スタッフ
翻訳:小寺陽子
監修:杉山すぴ豊
音響監督:岩浪美和
日本語版制作:株式会社東北新社
~ドルビーアトモス版はTOHO シネマズ 日比谷ほか全国 17 劇場で上映中