発見!Steamおすすめのゲーム 第93回
Full Motion Videoゲームにおける一つの到達点
Steamおすすめゲーム「Late Shift」全編実写動画のサスペンスアドベンチャー
2019年02月15日 18時00分更新
まもなく昭和も終わるかという1983年に、レーザーディスクを使用した「ドラゴンズレア」というゲームが登場する。ゲーム中はディズニーのアニメーターであった”ドン・ブルース”監修の美麗なアニメーションでゲームが常に展開する。ゲーム内容としては展開に合わせてボタンやレバーを入力するだけの簡単なものだが、1回のミスでゲームオーバーになるなど難易度は非常に高い。
だが全編動画ゲーム(Full Motion Video、以後FMV)はLDの耐久性の低さとゲーム性の持たせにくさが欠点で、海外では実写取り込み格闘ゲーム「モータルコンバット」、日本では「街」や「428」といったノベルゲームの方向性で発展していくことになる。
第93回は、そんなFMVの作品で、大がかりな強盗劇に巻きこれた主人公の運命を決めるサスペンスアドベンチャー「Late Shift」を紹介しよう。
息もつかせぬ怒濤の展開
イギリスの数学科に通う大学生の”マシュー・パトリック(マット)”はホテルの地下駐車場で夜勤管理のアルバイトをしている。監視カメラに違和感を感じ確認へ向かった先で古代明朝時代に作られた陶磁器を巡る強盗劇に否応なしに巻き込まれていく。
オークションハウスにて競売にかけられた陶磁器を奪う計画は思わぬ方向へと向かっていくことになる。単純に奪って依頼人に渡して金に変えるだけであった計画はマットの命を左右する中華マフィアの争いにまで発展する。巻き込まれたトラブルから無事に帰ることができるのか・・・というのが簡単なストーリーだ。
彼の運命を左右するのはプレイヤーによる選択となる。この選択によりエンディングは7つに分かれており、全てのルートを合計すると70時間以上の大長編となる。選択肢は時間制限も設けられており、選ぶ場合はマウスにて指定するだけでいいが時間内で選択しない場合は想定しない結果になる場合もあり、選択しないという選択もある。
過去作品の欠点を現代のスタイルを組み合わせて解決
過去に発売されたFMV作品の大きな欠点は“ゲーム性が乏しいこと”に集約している。ストーリーや役者、音楽などが良かったとしても決められたエンディングに一本道で進むルートしかなく、異常な反射神経を要求されたり、ワンパターンなゲームオーバーしかないなど褒められる作品は少ない。
そんな本作品はゲームとして発売される前は映画館での観客巻き込み型のインタラクティブシネマとして発表された経緯がある。世界数カ国で上映され、観客に選択肢を選ばせるという方式で映画を展開させた。そのような経緯もあってか、ゲーム化された本作品も配信サイトのMixerと連携することで視聴者に選択肢を選ばせるといったゲーム配信向けの要素も持っていたりする。
また、本作品は選択肢を選ぶ、選んだ後など全ての部分に時間が止まったりロードが発生する瞬間が存在せず非常にスムーズに進行する。過去のゲームの経験から筆者は疑いの目でもって各種選択肢を実行してみたが、ロードも感じないし、大きく破綻することのない非常に丁寧な脚本と映像進行に感心した。
プレイ時間こそ短編映画や連続ドラマの1エピソードくらいのボリュームではあるが、分岐や全てのルートを合わせると70時間を超えるというのも嘘ではない。確かに同じように感じるシーンこそあるが、リプレイ性を加味すれば映画1チケット分の代金で考えれば相当安いとも思ってしまう。
過去、全編を実写で実現するというアイデアは何度もあった。今でも制作されているし、何度もチャレンジもされている。しかし、それらは結局カットシーンだけ実写であったり、プレイヤーが介入して意図的に展開を変えるという物ではなかった。劇場型ともいえる本作品はその過去の欠点やゲームに対する一つのアンサーとも言えるべき作品ではないかと筆者は感じている。
FMVはゲームジャンルの歴史ではちょっと変わり種だが、2015年に話題になった「Her Story」も一つの解法ではある。ゲームという部分を強調したのが「Her Story」であれば、「Late Shift」はプレイヤーに映画を見せる・作らせるという部分に向けた解法といえるだろう。
やや長いお話とはなったが、FMVにおける一つの到達点として、プレイをオススメしたい。独特な空気感の北欧サスペンス(キリングとかシャーロック)が好きであったりするなら更にオススメだ。
あなたはどのようなエンディングを迎えるのか、是非とも体験していただきたい。
「Late Shift」の推奨動作環境は?
最低動作環境の要件だけ見ると、2.4GHz以上のCore i3 CPUと、Geforce GTX 260以上とかなり旧世代のスペックになっている、 ある程度Windowsが安定して動く環境があれば問題はないと思われるがCPU内蔵型のグラフィックでは厳しいだろう。近年のミドルクラスGPUを搭載していれば余裕だ。
『Late Shift』
●CtrlMovie
●1280円(2017年4月19日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows、MAC
ジャンル 選択型進行、フルモーションビデオ、映画、アドベンチャー、マルチエンディング
©2017 Wales Interactive Ltd. Wales Interactive Logo is a trademarks of Wales Interactive Ltd. ©2017 CtrlMovie. CtrlMovie Logo, Late Shift, and Late Shift figures are trademarks of Late Shift Production UK Ltd.
■著者:rate-dat
・Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: ratedat
・Twitter:@rate_dat
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