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ペヤング北海道ジンギスカン風は食の記憶に対する挑戦だった

2019年02月09日 12時00分更新

文● 四本淑三

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カップ焼きそばは「記憶食」である

 さて、いろいろ言い切れない部分もあるが、最後に結論めいたことを言わなければならない。 

 やきそば北海道ジンギスカン風は、いつもの変わり種と同様「おもしろいから一度は買うかもしれないけど、また食べたいとは思わない」ということになってしまうだろう。「わー、ジンギスカンの匂いがするわ!」と思わせるだけで大成功とは思うが、ちょっと惜しい。ラム肉やマトンと同じで、きっと慣れたらおいしい。

 特に試してほしいのは、やき弁派の北海道のみなさんだ。ジンギスカンとはなんなのか、これしかないと信じて食べているカップ焼きそばとはなんなのかを考えてほしい。それはおそらく記憶の中にある概念でしかない。私は今回の製品を試してそう確信した。ちょっと風呂敷広げて大仰にこう言ってみよう。

 ペヤングのやきそば北海道ジンギスカン風は、人間の食の記憶に対する挑戦である。

 いや、本気でそう思う。それくらいの頭クラクラ体験だった。そして記憶食といえば、カップ焼きそばが、最たるものだ。

 関東のペヤング、北海道のやきそば弁当、東北信越のバゴォーン、どれも味はそう大きくは違わない。ペヤングはスパイシー、マルちゃんは甘いという違いはあるにせよ、西日本の濃いソース味のUFOに比べれば、どれも同じ薄味だ。そして、UFOも含めて、いまの技術ならもっと本物に近い麺も作れるのに、あえてジャンクなままで通している。

 それでも「やっぱりペヤング」「やき弁が一番」となるのはなぜか。身もフタもないことを言うと、結局は昔から食べ付けているものが旨く感じられるという、ただそれだけのことなのではないか。個人的経験で言えば、10代までになにを食べたか。その影響が大きい。

 ちなみに、私が一番うまいと思うインスタント焼きそばは、袋麺ではあるがS&Bの「ホンコンやきそば」。1960年代から続く古い製品だが、徐々に販売テリトリーを縮小し、今では私が生まれた大分県と、高校卒業まで過ごした北海道でしか売られていない。こうなるともはや運命のようなものを感じる。

 そして、いま生き残っているカップ焼きそばは、昔からほとんど変わっていない。たまに見つけて食べると、ちゃんと記憶と同じ味がする。だから「やっぱうちの地元で売ってるアレが一番おいしいよなあ」ということになるのだ。それが各々の販売地域でロングセラーを続けてきた理由だ。

 だからペヤングが北海道で巻き返すのは難しいと思う。そしてジンギスカンをソウルフードとする北海道民なら、おそらく食の記憶を揺さぶられる体験ができる。やきそば北海道ジンギスカン風、ぜひお試しいただきたい。

 (付属のソースに普段使っているジンギスカンのタレを足してもおいしいよ)

四本 淑三(よつもと としみ)

北海道の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。

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