「5億人の女性を救った男」の意味とは?
遅れすぎた世界のなかで、パッドマンは間違いなく異端児だ。妻のことを心配し、彼女に生理用ナプキンの試作品を使ってもらうまでは、微笑ましい気持ちで観られるだろう。
しかし、次第に女子医大の前で試作品を配ったり、自分で試しに使ってみたりする姿は、もはや声を出して笑えるほどクレイジーだ。彼は町中の人々に変人扱いされる。妻ガヤトリが実家に連れ戻されたかと思えば、彼自身も都会に逃げ出さざるを得なくなる。
アップルの創業者スティーブ・ジョブズは同社の『Think different』というCMのなかで、世界を変えようとする人々は「クレイジーだと言われるが、私たちは天才(ジーニアス)だと思う」と語った。ラクシュミカントほど、この言葉が似合う人物はいないかもしれない。
この作品はネットやSNSでもすこぶる評判がいい。なかでも、ニューヨークの国際連合本部ビルで、ラクシュミカントが片言の英語で演説する場面は絶賛されている。もちろん、彼を演じるのは俳優さんなのだが、まるで本人が演説しているような異常なリアリティーを感じさせる。わたしも劇場で涙を流した観客の1人だ。
ちなみに、彼が国連に呼ばれたのは「5億人の女性を救った男」というサブタイトルにヒントがある。パッドマンはただ生理用ナプキンを開発しただけではない。月5日間も失われていた女性の雇用を生み出し、歴史を大きく変えた。インドの田舎町でクレイジーだと思われていた彼が、ついに天才だと認められたのである。
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