バイブは大人のおもちゃ用に生まれた!
この作品を観ながら、わたしが思い出した1本の映画にも触れておこう。あまり有名ではない作品かもしれないが、電動バイブレーターの誕生秘話を描いた『ヒステリア』という映画だ。
舞台は19世紀末、イギリスのロンドン。感情過敏になったり、不感症になったりする「ヒステリー」という女性特有の病気、とされる現象が大流行していた。
若き医師モーティマーは、女性医療の第一人者であるダリンプル医師のクリニックで、彼女たちの治療を手伝いはじめる。彼らの主な仕事は女性たちの悩みや愚痴を聞いたり、薬を処方したりすることではない。強い不満を抱えた女性たちの陰核を手で刺激することだった。
しかし、彼は激務のせいで腱鞘炎(けんしょうえん)になり、クビになってしまう。発明家の親友エドモントの協力のもと、彼は医療用電動振動器「打診器(パーカッソー)」の開発に取り組んでいく。
この話はフィクションでも、わたしの妄想でもない。電動バイブはマッサージや目覚ましではなく、女性をオーガズムに導くために生まれたのだ。男性が女性のために発明に取り組み、社会を大きく変えたという点では、インドの生理用品とバイブの歴史的背景は似ている気がする。
ちなみに、歴史的には後にヒステリーは病気ではないと明らかになる。当時は今以上に男性社会だった。女性には参政権さえなかった。すぐに泣いたり、鬱病になったりしても、無理はないかもしれない。電動バイブにせよ、生理用ナプキンにせよ、進歩はいつも遅すぎる……。
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