アップル、Amazon、Facebookなど、テック株低迷で
シリコンバレー周辺の地域経済は不安定になるかも
特に2018年は10月一杯まで、テクノロジー企業にとってはとても良い時間だったと振り返ることができます。主にウォール街によって行われる「株価」という尺度で見れば、テクノロジー株は上昇を続けてきました。
ところが11月1日以降、これらの雲行きは怪しさを増しています。Appleがホリデーシーズンの売上高の見通しについて、弱気な予測を出し、次々にiPhone不調のニュースが飛び込むようになりました。
普段ならいつものことで、フタを開けてみれば中身は違ったということなのかもしれませんが、Appleは今後、iPhoneの販売台数を示さない(=今後良い数字は期待できない)というし、Amazon、Alphabet(Google)、Netflixといった主要企業の株価も軒並み下落しています。Facebookはスキャンダル以降株価が半分ほどになってしまいました。
もちろんこうした大企業の株価が下落したからといって、すぐに経営がどうこうなるわけではないでしょう。各企業とも手元に資金もあるし、売り上げもあるわけです。ただし、社員を含む「その周辺」は安泰というわけではないでしょう。
たとえば、iPhoneの部品を製造するサプライヤーは、iPhoneが何台売れるかがなによりも重要です。Appleは「台数じゃない、売上高と付加価値(サービスやウェアラブルなどのアクセサリ)だ」とスマホ低迷時代に向けて指標を変えましたが、サプライヤーは引き続き台数のビジネスをしているわけで、これでは置いてきぼりになってしまいます。
また社員は株やストックオプションで報酬の一部を受け取っており、自社株買いのプログラムなどもあります。そうした給料や資産は、当然のことながら、今回の下落で少なくとも2割は価値が目減りしたことになるわけです。住宅購入の際の頭金にしようとしていた人たちは、思いとどまったり、金額で競り負けたりするかもしれません。
住宅だけでなく、自動車などを含む消費に回す財布のひもがきつくなったり、冒頭で話したとおりに、より良い生活の質を求めてシリコンバレーを離れる人々も出てきます。
結果として、不動産、地元の商店やレストラン、各種サービスなど非テクノロジー企業を中心としたビジネスは打撃を受け、富裕層の離脱によって、彼らにサービスを提供していたUberやInstacartなどのいわゆるギグ・エコノミーで生計を立ててきた人たちに影響が及ぶのです。
もちろんこれは最悪のパターンだと筆者は思いますが、テクノロジー企業の好況の終焉が確実となる前から、シリコンバレー地域の経済に意外なほど急速に打撃を与えることになりそうです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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