エデュケーション@プログラミング+ 第16回
見逃せない! 第3回全国小中学生プログラミング大会の受賞作たち
グランプリの中学3年生作品はUXまで丁寧に考えられた「つながる。」
2018年10月25日 19時00分更新
こんな作品がグランプリ・準グランプリに選ばれた!
「学校でのプログラミング教育がはじまるけど楽しく競いあう場が欲しい」という主旨で、2016年から開催されている「全国小中学生プログラミング大会」の最終審査会・表彰式が、東京外苑前のTEPIAで開催された。2018年7月1日~9月5日までに寄せられた282作品から一次審査、二次審査を通過した10作品を子どもたち自身がデモンストレーションする形で審査され、グランプリ・準グランプリなど各賞が決定、表彰された。
このコンテストの特徴は、ソフトウェアの完成度とともに「表現としてのプログラミング」を重視していること。審査委員長もアーティストで東京大学名誉教授の河口洋一郎氏がつとめる。同審査委員長は、今年の作品について「去年までの流れと違いました。たぶん、もうすぐ学校でのプログラミング教育がはじまりますが、この授賞式はその今後を占うようなものになったと思います」とコメント。それでは、どんな作品が受賞したのか? 見ていくことにしよう。
第3回全国小中学生プログラミング大会・最終審査結果
賞 | 作品名 | 氏名 | 学年 |
---|---|---|---|
グランプリ | つながる。 | 三橋優希 | 中3 |
準グランプリ | 点字メーカー Ver1.03 | 越智晃瑛 | 小4 |
準グランプリ | Magical Guitar 〜あなたも今からギタリスト〜 | 真家彩人 | 中3 |
優秀賞・中学生部門 | ロボロボパズル! | 平野正太郎 | 中1 |
優秀賞・小学校高学年部門 | 写刺繍 ~Sha-Shi-Shu~ | 菅野晄 | 小6 |
優秀賞・小学校低学年部門 | <該当作なし> | ||
入選 | Planet Adventure | 渡辺悠 | 中3 |
入選 | アンガーマネジメントVR | 霜田貫太 | 中1 |
入選 | 子供のはじめての自動販売機(改良型) | 佐藤空汰 | 小6 |
入選 | 今日の洋服何着てく? | 澁谷知希 | 小5 |
入選 | 魚の国 | 伊藤直輝 | 小3 |
グランプリを獲得したのは、中学3年生の三橋優希さんによる「つながる。」。タイルをクリックして回転させ、人と人が白い線によってすべてつながるとステージクリアとなるゲーム(3×3から9×9までのステージがある)。Scratchで書かれているが、画面を構成するパーツや文字やキャラクター、その色や配置など、すべてが十分な理由のもとに選ばれている。途中で飽きてしまう人や最後まで解いた人のために、ステージエディタが用意され、「世界のステージ」画面から仲間が共有したステージもプレイできる。UX(ユーザーエクスペリエンス)やサービス設計が丁寧にされており、遊んでくれる人を考えた制作過程にも価値があることを感じさせる作品だ。
準グランプリは2作に与えられたが、「点字メーカー Ver1.03」は、小学4年生の越智晃瑛くんの作品。2台のmicro:bitを使い。1つはリストバンド型の入力装置で左右・前後に傾けることで文字を入力する(ふりふりスイッチ)。これが通信でもう1台に送られmicro:bitのLEDに点字を表示する(点字変換ボックス)。点字の辞書をいちいちひかなくても調べられる。「電子工作が目的ではなく、日々の生活のなかで感じた課題を解決するために、たまたまそこにあった電子工作を使った点が素晴らしい」(審査員講評)。
準グランプリのもう1作、「Magical Guitar 〜あなたも今からギタリスト〜」は、中学3年生の真家彩人くんの作品。「誰もがギターを演奏できる」世界を実現することをめざして製作。そのために自作のギター(入力装置=ARMマイコン搭載)とPCを組み合わせ、JavaとScratchが駆使されている。ギターは、ネックをアルミホイルで抑えて下にスライドすると自動演奏の音程が高くなり、上に持っていくと音程が低くなる。試行錯誤の結果、ネックには鉛筆が塗りまくられている。
優秀作・入選作もおとらず粒ぞろいの作品がそろった
優秀賞として、小学校低学年・高学年部門、中学校部門の3つがあるが、今年は残念ながら小学校低学年部門が「該当者なし」となった。しかし、残りの2部門の受賞作は、誰のものにも似ていないユニークな作品が選ばれたのが印象的だ。優秀賞・中学校部門は中学1年生の平野正太郎くんの「ロボロボパズル!」。平野くんは、昨年の第2回でも「キラキラミュージックBOX」というハードウェアを組みわせたゲームで準グランプリを獲得している。今回は、表示される問題にあわせてパズル台にタイルをはめていく独特な楽しみ方を演出するゲーム。
優秀賞・小学校高学年部門は、小学6年生の菅野晄さんによる「写刺繍 ~Sha-Shi-Shu~」。自分のスマホで写真を撮ると、その画像から刺繍の図案を生成して必要な刺繍糸を教えてくれるiOSアプリ。いままで刺繍をする場合には、自分オリジナルの図案をいきなり作るのはむずかしく本などを手本に図案を作っていた。このアプリによって、自分のデザインが簡単に作れるようになる。刺繍の大きさや、使う糸の本数なども自分で決めることができるようになる。ほぼ製品アプリといえるような出来ばえだ。
今年、グランプリ・準グランプリ・優秀賞にはならなかった入選作5作も、282作品から勝ち残った作品だけありレベルは非常に高い。
今年も、ArduinoやIchigoJamからレゴマインドストーム、ScratchやBASICからPython、3D表現には定番のUnityまで、さまざまなプラットフォームを使った作品が寄せられた。そんな中で、デモンストレーションしてくれた10人のうち何人かの子どもたちの口から共通して聞かれたのが「自分の好きなものを作った」という言葉だった。自由に題材を選んでプログラミングの力を生かして作品が生まれたということだ。
表彰式での稲見昌彦実行委員長の開会宣言は、まさにそのことが語られていた。ご自身がかかわられている「超人スポーツ」に関係する例として、時間の進み方がゆっくりなバーチャル世界では「けん玉」が簡単にプレイできるが、それをしだいに速くしていくと現実空間でもできるようになる。現実世界ではテレポーテーションはできないが、コンピューターの世界では覆水は盆に返すこともできる。これから自分でコンピューターの中にどんどん独自の世界を作れる、そんな時代がくる。ぜひとも未来の世界を作ってくださいと参加者の子どもたちにエールを送った。
U-22プログラミング・コンテストとの連携・合同企画も開催
最終審査会・表彰式では、U-22プログラミング・コンテストとの合同企画として、同じTEPIA内のエキシビションホールで「ヤングプログラマーズ・デイ 2018」が併催された。入選作品の展示や審査員へのデモンストレーションのほか、ワークショップやVR体験ブースなどが設けられ賑わった。また、同じくJJPCとU-22の合同企画としてパネルディスカッション【IT×教育 質問・相談室】も開催。両コンテストの実行委員たちが、寄せられた質問・相談や会場からの質問に熱く答えていた。
・参考リンク:10/21 ヤングプログラマーズ・デイ 2018開催、ソニーの新マイコンの子ども向けワークショップやVR体験が楽しめる
・参考リンク:【IT×教育】の質問・相談に、サイボウズ青野氏、さくらインターネット田中氏、UEI清水氏、CANVAS石戸氏が真正面から答える!
・参考リンク:ニコニコ生放送「U-22プログラミング・コンテスト2018 最終審査会」(タイムシフト視聴のみ可能)
全国小中学生プログラミング大会の運営は、協賛企業に支えていただくことで成立しており、実行委員会では、広く協賛していただける企業を募集している。コンテストの開催のほか、協賛社と一緒に関連セミナーやシンポジウムも行っている。
第3回全国小中学生プログラミング大会 開催概要
■主催:全国小中学生プログラミング大会実行委員会
(株式会社角川アスキー総合研究所、株式会社UEIエデュケーションズ、NPO法人CANVAS)
■共催:株式会社朝日新聞社
■協賛:株式会社イシダ、株式会社オークファン、ソウルドアウト株式会社、株式会社日本HP
■協力:オールナイトニッポン.com
■サポーター:株式会社アフレル
■後援:総務省
■大会実行委員長:稲見昌彦(東京大学 先端科学技術研究センター教授)
■実行委員:遠藤諭(株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員)
清水亮(株式会社UEIエデュケーションズ 代表取締役会長)
石戸奈々子(NPO法人CANVAS 理事長)
■審査委員長:河口洋一郎(東京大学名誉教授、アーティスト)
■審査委員:金本茂(株式会社スイッチサイエンス代表取締役)
川井敏昌(FabCafe LLP COO)
林千晶(ロフトワーク代表取締役)
増井雄一郎(Product Founder/フリーランス)
松林弘治(エンジニア/著述家、鮮文大学校 グローバルソフトウェア学科客員教授)
(敬称略)
■公式サイト:全国小中学生プログラミング大会 http://jjpc.jp/
■参考リンク:U-22プログラミングコンテスト http://www.u22procon.com
■参考リンク:【U-22&JJPC】IT×教育 質問・相談室 https://goo.gl/forms/M5uWHwdkowbntKCP2
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