2018年6月27日、さくらインターネットは、クラウドネイティブアプリケーションの業界団体であるCNCF(Cloud Native Computing Foundation)への加盟を表明した。さくらインターネット エバンジェリストの前佛雅人氏に、CNCF加盟の背景やさくらとしてのねらいを聞いた。
業界標準に関わることは結果的にお客様の利益になる
2015年7月、Linux Foundationの下部組織として設立されたCNCFは、OSSのソフトウェアスタックを用いたクラウドネイティブアプリケーションを推進する中立的な団体で、さまざまな開発プラットフォームやミドルウェアの仕様を調整する組織として機能している。大手のクラウドベンダーやDocker、レッドハット、シスコ、セールスフォースドットコム、Pivotalのほか、日本だと富士通やNEC、ヤフー(Yahoo!JAPAN)なども加入しているという。
CNCFがスタート時点からフォーカスを当てているのがコンテナの技術だ。「2013年3月に発表されたDockerが画期的だったのは、簡単なコマンドを実行するだけで、アプリケーションをどこでも迅速に実行できるようになったことです。しかし、各クラウドベンダーがさまざまなコンテナサービスを出すようになったことで、事業者が違うと実行できなくなる可能性が出てきました」と前佛氏は語る。こうした事業者間の壁を取り払うのがCNCFの大きな役割だ。
もう1つはベンダーロックイン問題。「物理サーバーの時代は特定のメーカーや販売会社が自社製品でユーザーを囲い込む、ベンダーロックイン問題があったので、これを避けるために、LinuxやOSSを使ってきました。でも、クラウドの環境になって、気がつけば弊社も含めたベンダーがロックインしてしまう可能性が出てきました」と前佛氏は指摘する。こうした懸念を解消するため、クラウド間でコンテナのポータビリティ(可搬性)を確保しようというのがCNCF設立の背景にあるという。「Linux Foundationの配下には無償SSLサーバー証明書のLet's Enclyptがあり、弊社は昨年からスポンサーになりましたが、基本的には同じ流れ。業界標準を支援することで、結果的にお客様のためになると思っています」と前佛氏は語る。
正しい情報を提供することでコンテナに対する誤解を解く
こうした中、さくらインターネットがCNCFに加入した背景は、コンテナに関する正しい情報を外部に発信する狙いがあるという。前佛氏は、「コンテナやオーケストレーション、マイクロサービスに関しては、英語に比べて、日本語の正しい情報が少ないんです。だから日本のお客様からも、どの情報が正しいか、どの情報を信じてよいかわからないという声が挙がってます」と語る。
前佛氏は、現在もコンテナに関するさまざまな誤解があると指摘する。「Docker登場当初にできなかったことが今もできないと思われていたり、仮想サーバーのように利用してうまく動かないとか、一概に比較できないDockerとKubernetesを競合したツールとして議論されるなどとにかくいろいろあります」(前佛氏)。
こうした中、さくらインターネットではCNCFの中に入り、CNCF自体の紹介やCNCF内での議論の流れなど中立的な情報を提供していく予定だ。その上で、CNCFでの議論の流れを汲み、さくらの持っているサービスにも反映していく予定になっている。「たとえば、43万ユーザーがいる弊社のレンタルサーバーでも、CMSの環境を引っ越しするのはけっこう大変。でも、コンテナに対応したアプリケーションであれば、お客様が手元で作ったコンテナ環境をクラウドやレンタルサーバ、Arukasのようなコンテナホスティングに移すことができるはず」と前佛氏は語る。
いまさら独自規格をつくってもしようがない
今後、コンテナやサーバーレス、マイクロサービスなどを包含したクラウドネイティブアプリケーションは業界の大きな潮流になっていくと前佛氏は語る。「確かにコンテナは最初取っつきにくい部分はありますが、仮想マシンを考えなくても、開発環境からアプリケーションを簡単に立ち上げ、スケールできる。本来やるべきコードを書くこと、サービスを運用することに集中できると思います」と指摘する。
現在、Kubernetesのスケジューリングに関しては、CNCFが提供している認定「Kubernetes適合プログラム」を通し、最低限の互換性は保つことが可能になるという。また、サーバーレスに関しても、専門委員会(ワーキンググループ)の発足やホワイトペーパーの公開といった動きがあるとのこと。「いまさら独自規格を作ってもしょうがないですよね。業界標準のものを扱っていくことが、結果的にお客様の利益につながるはず」と前佛氏は語る。
(提供:さくらインターネット)
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