SoRをデータ統合し従業員に一貫したUXを提供する「Now Platform」が軸、国内事業戦略を説明
ServiceNow、日本市場では「プラットフォームビジネス」に注力
2018年07月03日 07時00分更新
ServiceNow Japanは2018年6月27日、日本市場における事業戦略の説明会を開催した。同社社長の村瀬将思氏は、日本市場においては特に「プラットフォーム(PaaS)ビジネス」の伸びを期待していると語り、パートナー協業などその戦略を説明した。
人=従業員を中心に考え、サイロ化したSoRを統合する“System of Action”
ServiceNowは、企業内に存在するさまざまなサービス業務ワークフローを単一のクラウドプラットフォームに一元化し、ユーザーエクスペリエンスとワークフローの標準化、業務の自動化と効率化、サービスの均質化、レポーティングの自動化などを実現するクラウドサービス企業だ。ITサービス管理(ITSM)をはじめとして、カスタマーサポート、人事、財務、マーケティング、ITセキュリティといったアプリケーション群をSaaSとして提供するほか、それらの提供基盤である「Now Platform」もPaaSとして提供している。
村瀬氏はまず、ServiceNowのミッションを「Future of Work」の実現であると紹介した。企業におけるさまざまなサービス業務にシンプルさ、スピード、完結性(一連のプロセスをエンドトゥエンドでカバーする)、透明性をもたらすプラットフォームを提供し、それにより付加価値や新たなビジネスを創造するための時間を生み出す。こうしたWork Revolution、日本語で言えば「働き方改革」を実現するというビジョンを掲げている。
村瀬氏は特に、従業員に対するユーザーエクスペリエンス(ワーカーエクスペリエンス)の重要さを強調した。過去の第1次~第3次産業革命とは異なり、第4次産業革命では「人が中心(Human Centric)」の労働環境になり、業務を行うためのテクノロジーは「誰でも使える」ものへと変化する/すべきである。そのために、一消費者としてAmazon.comでオンラインショッピングをするときのような、シンプル、スピーディで完結性、透明性のある体験が業務の場にももたらされるべきだが、実際にはそうはなっていない。「当社のセミナーで数百名のお客様に聞いてみたが、やはり『仕事の世界』はまだまだ不便だと思われている」(村瀬氏)。その現状を改善するのがServiceNowの目標だ。
具体的に、ServiceNowはどのような業務システムを実現しようとしているのか。村瀬氏は、過去のサイロ化した業務システム/SoR(Systems of Record)はリプレースすることなく、SoRシステム間のオーケストレーション/連携とデータ統合を行うレイヤーを設け、その上で共通のワーカーエクスペリエンスを実現する“System of Action”のアーキテクチャを考えていると説明する。ここでデータ統合対象となるSoRシステムは、オンプレミスのものだけでなくクラウドサービス(SaaS)も含まれる。
「ITサービス、人事、カスタマーサービスといった違いを問わず、従業員はすべての業務においてServiceNowのポータルにログインして、そこから問い合わせやリクエスト、確認といった作業を行う。もちろんここでは同じユーザーエクスペリエンスが提供される。このSystem of Actionこそが次世代のアーキテクチャであり、Work Revolutionを行うためのプラットフォームとなる」(村瀬氏)
この“System of Action”アーキテクチャですぐれたユーザーエクスペリエンスを提供するために、ServiceNowではサービス基盤のNow Platformを3つのレイヤーに分けて構成している。さまざまなSoRシステムとの柔軟な連携とデータ統合を図る「サービスエクスペリエンス」、機械学習やデータ分析の機能を備えた「サービスインテリジェンス」、サービスポータルやカタログ、ナレッジベースなど、企業横断的/業務横断的に一貫した体験をもたらす「ユーザーエクスペリエンス」の3レイヤーだ。
村瀬氏は、Now Platformを基盤にSaaS/PaaSを提供することで「シンプル/スピード/完結性/透明性を担保する」と説明した。またServiceNowでは昨今、優れたユーザーエクスペリエンスやイノーベティブナ技術獲得を目的に多くの企業/技術買収を行っているが、そこで得た技術やサービスもこのNow Platformに組み込んでいる。
また村瀬氏は、日本の「働き方改革」におけるIT活用の問題点も指摘した。業務の根本的な見直しなどを経ず技術論だけが先行した結果、「働き方を変え、長時間労働を是正する」という本質的な部分からフォーカスがずれているという指摘だ。その改善策のひとつとしても、幅広い社内業務の標準化と自動化を実現するServiceNowとNow Platformが有効だと村瀬氏は説明した。
「作り込み」ができるプラットフォームビジネスが日本市場に適している
日本国内でのビジネス戦略として、村瀬氏は「戦略パートナーとの協業加速」「アウェアネスの拡大」「カスタマーサクセスの推進」「社内体制の拡充」という4つのポイントを挙げた。
現状の国内市場では大手パートナー経由の売上が6~7割を占めており、こうした戦略パートナーと足並みを揃えてビジネスを展開していくことが大切だと、村瀬氏は語る。パートナー技術者の育成を進めるほか、コンサルティングやSIを行う大手パートナーとデリバリを手がける中堅パートナー間のエコシステムも醸成していく。
さらに、パートナーがNow Platformを活用し、日本市場特有のビジネスプロセスや商習慣に対応した独自アプリケーションを開発/提供してレベニューシェアを行うというビジネスモデルも推進していきたいと語った。日本企業は業務アプリケーション「作り込み」を好み、それを得意とするパートナーも多くいるため、「実は日本こそが、当社のプラットフォーム戦略に最も適した市場だと考えている」と村瀬氏は説明する。
「ServiceNowでは2004年の創業当初からプラットフォーム戦略を掲げてきたが、当初は米国市場で理解されなかった。そこでこのプラットフォームを使い、ITSMなどのSaaSを開発、提供したところ人気を集めビジネスが一気に成長していった。こうした経緯はあるものの、本来はプラットフォームがServiceNowの原点であり、時代を経て原点回帰してきたと言える」(村瀬氏)
特に「日本市場で非常に多いパターン」として村瀬氏は、これまでオンプレミスで独自のワークフローエンジンを開発/運用してきたものの、ワークフローや業務システムのクラウド移行を進めるにあたって行き先がなくなった結果、ServiceNowを選択するというパターンを挙げた。作り込みが必要な部分はPaaSで、それ以外の部分はコスト効率の良いSaaSでと組み合わせて全体を構成し、従業員には一貫したユーザーエクスペリエンスが提供できるからだ。そのためにも、顧客企業と密な関係を持つパートナーとの協業加速は不可欠なものと言える。
実際、グローバルのさまざまな市場の中でも、日本市場は特にプラットフォームビジネスが大きい市場になっているという。「日本市場では特にプラットフォームビジネスに注力する」というのはグローバルのServiceNowとしての方針であり、そのビジネスを伸ばすために幹部もよく来日していると、村瀬氏は説明した。