カシオのデジカメ撤退が大きな話題となった2018年。実はそれよりも早く前から、カメラに見切りをつけ方向転換したデジカメメーカーがありました。台湾のアルテック(Altek)です。相手先ブランド(ODM)でデジカメのシェアを着々と高めた同社はスマートフォンの開発も手掛けたことがありました。デジカメメーカーのスマートフォンへの取り組みを振り返ってみます。
ODMデジカメ世界シェア1位、隠れた巨人が携帯電話市場に参入
デジカメのメーカーと言えばキャノン、ニコン、ソニー、カシオ、富士フイルムなど今でも日本メーカーの名前がすらすらと出てくる人が多いでしょう。日本の製造業は海外での苦戦が続いていますが、ことデジカメに関しては他国の追従をものもともせずグローバル市場で高いブランド力を誇っています。
しかしそのデジカメ市場も年々縮小が続いています。調査会社Statistaのデータによると、世界のデジカメ市場は2010年の1億2150万台をピークに下落が続き、2017年には2500万台と7年間で1/5に市場が縮小しています。これはもちろんスマートフォンの普及の影響が大きく、SNSサービス利用者の拡大も相まって「撮ってすぐアップできない」デジカメは敬遠されるようになっていったのです。
さて、デジカメ市場でトップを走る日本企業ですが、全ての製品が自社生産というわけではありません。低価格なコンパクトデジカメを中心に、2000年代初頭から台湾のODMメーカーに開発と受注を依頼していました。そのODMメーカーの1社が台湾のアルテックです。アルテックは日本メーカーからも積極的に製品開発を受注し、近年でもニコンのいくつかのコンパクトタイプのデジカメを開発および生産しているほどです。アルテックのデジカメシェアは2008年で5位、ODMメーカーとしては1位で、いわば隠れた巨大デジカメメーカーと言えるでしょう。
そのアルテックが携帯電話市場に参入したのは2008年のこと。沈胴式の光学3倍ズームレンズを搭載した「A806」を発売しました。背面は10キーを搭載したフィーチャーフォンながら、カメラ画質は1200万画素とかなり高スペック。さらに翌2009年には携帯電話部分をタッチパネルUIにした「T8680」も投入したのです。
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