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世界を救うのは遺伝子「編集」作物だ

2018年03月07日 06時56分更新

文● David Rotman

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遺伝子組換え作物の安全性をめぐる対立は、長らく農業の進化を停滞させてきた。新たな遺伝子編集技術は、多種多様な特徴をもった作物を生み出し、農業の世界にイノベーションをもたらすだろう。

何十年にもわたる、遺伝子改変された作物の安全性についての不安は、予期しない結果へとつながった。研究機関やスタートアップ企業の植物科学者たちは、新しい遺伝子組換え作物の品種を製作することを大いに敬遠してきた。遺伝子組換え作物が米国の規制機関から認定されるためには、平均して1億ドル以上の費用と10年以上の年月がかかる上に、遺伝子組換え食品(GMO)という概念は大衆の嫌悪を引き起こすものだからだ。その結果、モンサント(あるいは別名モンサタンと呼んでもいい)のような大規模な農業バイオ企業や化学薬品製造社が遺伝子組換え産業を独占し、除草剤や殺虫剤に耐性を持つトウモロコシや大豆を作ることで大儲けしている。

この結果は、遺伝子組換え食品批評家らが最も恐れていたものだった。多くの農場経営者はモンサントのような数社の巨大企業を頼りにしている。そして、このような巨大企業の研究者たちは、消費者のためにより健康的な食品を生産するというよりも、むしろ収益を上げることに重点を置いている。その一方で、巨大企業に所属しない研究者にとって、植物の遺伝子工学は金がかかり、かつリスクが高いものだった。そのため、気候変動や人口増加によって農業にはますます生産性向上の圧力が掛かる一方で、作物育種の進歩が妨げられていたのだ(「Why We Will Need Genetically Modified Foods」参照)。

そこで、生物医学担当のアントニオ・レガラード上級編集者が「遺伝子組換えから「編集」へ デザイナー作物は 農業の未来を変えるのか?」の中で説明した研究が非常に重要となるのだ。レガラードは、ある一流の植物遺伝学者がいかに遺伝子編集を使用して、よりヘルシーな大豆を作出し、その大豆がサウスダコタ州や他の地域で栽培・収穫され始めているかを説明している。一般的に、従来の遺伝子組換え食品では、新しい特性を作り出すために外来遺伝子を植物に注入していた。だが、クリスパー(CRISPR)であれ、あるいはそれよりもやや古いタレン(TALEN)であれ、新しい遺伝子編集ツールでは、そういった外来遺伝子の注入は行なわず、既存のDNA配列を微調整するだけだ。そのため、この方法で操作された作物は長々しい規制工程を回避し、 GMOを取り巻く汚名を完全に避けることができるのだ。

遺伝子編集は安価かつ強力、そして正確だ。そして最も重要なことは、より多くの植物科学者らが新しい品種を作り出す競争に参加できることにある。虫害に耐性のあるジャガイモや、もっと美味しいトマト、干ばつに強い米、そして食物繊維をさらに多く含む小麦などを考案することにつながる。市場を代表する傾向にあった、除草剤や殺虫剤に耐性を持つトウモロコシや大豆に比べると、格段に利潤を生みにくいこれらの作物による農業的イノベーションは、これまでほとんど進歩がなかった。はるかに多くの科学者らの手に遺伝子編集を届けることは、健康的で安価な食品を育てるために非常に貴重なツールとなる遺伝子工学の元来のビジョンへと私たちを立ち戻らせ、増加する世界の人口を養うのに役立つかもしれない。

本当にそんなことが起こるのか? それは大衆の認識による。遺伝子編集は作物を改善するための最先端のツールとして見られるのか、あるいは人造食品を作るためのより簡単で高速な方法として見られるのか? 前者であることをぜひ願おう。そして、植物科学が完全にゲノミクスの現代へと突入することができ、遺伝子組換え食品の恐怖とモンサタンが陰に置き去りにされることを。


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