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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第446回

業界に痕跡を残して消えたメーカー ネットワークプロセッサーを作り続けたAMCC

2018年02月19日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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IBMからPowerPC 400シリーズを購入
PowerPCベースのプロセッサーを自社開発

 さて、売上の回復基調が見えてきた2005年3月にRickey氏はCEOおよび会長職を辞任。後任にはCiscoの副社長だったKambiz Hooshmand氏が就く。その前年となる2004年、同社はIBMからPowerPC 4000シリーズの製品ラインナップをまるごと買収し、RAIDコントローラーで局所的に有名だった3wareも買収している。

 ネットワークビジネスが不調な以上、これに変わる柱がなにかしら必要という判断だ。2000年に買収したMMC Networkは独自の64bit RISCプロセッサーをベースにしたネットワークプロセッサーを提供していたが、性能的にはすでに見劣りするようになっており、ただ自社開発で独自アーキテクチャーを貫くのはビジネス上のデメリットが大きかった。

 これもあり、AMCCは2004年にIBMとFreescaleが設立したPower.orgというPowerPCベースプロセッサーを普及させる業界標準団体に参加するとともに、IBMからPowerPC 400シリーズのリソースを手に入れ、これを(MMCの独自コアに代えて)ネットワークプロセッサーにも活用していく方針を定める。

 ただPowerPC 440シリーズは連載298回でも触れたが、組み込み向けの同時2命令実行のIn-orderタイプで、それほど高い性能を持つわけではない。そこでAMCCはPowerPCベースのプロセッサーの自社開発に踏み切ることになる。これがTitanと呼ばれるコアで、2007年のMicroProcessor Forumで発表された。

Titanコア。設計目標は、TSMCの90GTを使い、2GHz動作で4000 DMIPS、消費電力2.5Wだったそうだ

 これを開発したのは旧IBMのPowerPC 440の部隊だったようで、PowerPC 440の後継になるはず「だった」。問題はこの後、Titanの製品化に進まなかったことだ。AMCCは引き続きPowerPC 440ベースと、プロセス微細化&マルチコア対応を追加したPowerPC 465ベースでMambaシリーズを展開していく。

Titanの発表を行なったTitanのChief ArchitectだったJoe Chang氏。昔の論文を探すと、PowerPC 604なども手がけていたらしい

 では自社開発を辞めたのか? と思ったら2013年に突如登場したのがX-Geneである。ARM v8Aのアーキテクチャーライセンスを受け、4命令同時実行のOut-of-Orderを実装したX-Geneは40nmプロセスで製造され、最初はそれほど多くのニーズを集めなかったが2014年に発表された28nmプロセスのX-Gene 2では次第に採用例がすこしづつ増えていた。

X-Gene。Titanとはまったく異なる内部構造であり、おそらくはフルスクラッチに近いところから開発されたと思われる。X-Geneの開発にどこまで旧MMC/IBMの部隊が関わったのかは不明だ

 なぜPowerPCを捨てたかについて、2014年10月のARM TechConにおいて、当時のCEOだったParamesh Gopi博士は以下のスライドを示し、これからは命令セットはARM v8Aで統一される(から、我々はPowerPCを捨てる)と説明している。

ちなみに別のスライドでは、同社がARM v8Aのライセンスを受けたのは2010年だったと説明されており、Titanからずいぶん時間が空いた感がある

 そしてTSMCの16FFを利用したX-Gene 3は2016年に発表され、この世代でいよいよARM v8Aビジネスが立ち上がるかと思われた。

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