グローバルで戦える人事制度・生産体制を目指す
一方で、「これまでの人事制度は、メリハリが効いた制度ではない。これからは、グローバルで戦える制度にしていかなくてはならない」とし、「多様なタレントを幹部や社員に登用し、市場の変化や複雑化にスピーディーに対応することを目指す。成果をあげた人には、明確な差をつけたり、外部からのタレントを入れるなど、スピードを伴った人材登用を行う」というように、人事制度の改革にも踏み出すことを明らかにした。これもこれまでのNECにはない新たな取り組みとなる。
また、工場の再編については、2017年4月には、生産拠点をNECプラットフォームズに一本化してきたが、新たな中期経営計画では、これらの拠点の再編を開始することを盛り込んだ。
「国内工場の再編については、これから具体的に決めていきたい」と、詳細には触れなかったが、その再編のなかで、統廃合を含むことは明確にした。さらに、海外を含めた「グローバルOne Factory」を目指し、国内外の全工場の生産プロセスやシステムの共通化、工場IoTやAIを活用したタイの新工場の積極活用なども行い、生産体制のさらなる効率化を目指すという。
成長戦略の要「セーフティ事業」
「2020 中期経営計画」において、成長戦略の中心に置くのは、セーフティ事業である。
「セーフティ分野では、グローバルのカテゴリーリーダーを目指すとともに、グローバルにおける成長エンジンに位置づける。海外セーフティ事業の売上高は、2017年度には約500億円だったものを、2020年度には2000億円へと4倍に拡大する計画である」と語る。
売上高500億円の時点では先行投資もあるため赤字だが、2020年度には営業利益率5%以上、EBITDA率20%以上を実現する予定だ。
「水平展開が可能な共通業務プラットフォーム、データの解析や将来予測を行う分析プラットフォーム、データを収集、統合するデータプラットフォームの3つのプラットフォームを活用し、サービス型の新たなビジネスモデルへと転換するとともに、高度なセーフティソリューションで事業領域を拡大していく」としたほか、「グローバル成長に向けて引き続き、M&Aを推進する。2018年1月に、700億円で買収した英Northgate Public Servicesを含む、2000億円の施策枠のなかで、継続的にM&Aを実行することになる。また、さらなる投資についても、今後3年間のキャッシュフローを見ながら、財務構造を悪化させない範囲で検討していく」とする。そして、「投資対象はセーフティを中心とした成長領域になる」と語った。
また、セーフティ事業においては、NECが差異化技術とする顔認証などのバイオメトリクス技術と、NEC the WISEによるAI技術を生かした「NEC Safer Cities」の実現に取り組むことも示した。
一方で、新野社長は、「成長を必ず実行するための事業基盤づくり」を重視する。
「スピード感を持って、最後までやり抜く仕組みを導入し、実行力を向上したい。具体的には、経営陣の責任と権限をより明確にし、結果へのコミットメントを強化し、実行した人が報われ、賞賛される評価・報酬制度を導入し、イノベーティブな行動や挑戦を促す」とする。
「やり抜く組織」が、「2020 中期経営計画」を支えるキーワードだ。
従来の「2018 中期経営計画」は、未達どころか、計画遂行を途中で諦めざるをえなくなった。その失敗を二度と繰り返すことはできない。

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