「オフィス移転は働き方を変えるチャンス」スノーピーク子会社とコラボ、コスト削減も
小鳥さえずるテントで会議? Phone Appli新オフィスが狙うもの
2018年02月09日 07時00分更新
法人向けWeb電話帳クラウドサービス「連絡とれるくん」を提供するPhone Appli(フォンアプリ)が2018年2月7日、東京都港区に開設した新オフィス「CaMP(キャンプ)」を報道関係者向けに公開した。
このオフィスは“コミュニケーション改革企業No.1”を企業ビジョンに掲げる同社が、スノーピークビジネスソリューションズの協力のもとで作り上げたもので、アウトドアを強くイメージしたユニークな環境となっている。「働き方改革」や「健康経営」だけでなく、オフィスコストの効率化にもつながったという新オフィスの狙いを聞いた。
コミュニケーション改革企業とアウトドア用品子会社のコラボ
2008年設立のPhone Appliは、社内外の連絡先情報(外線/内線番号、メールアドレス、ビジネスチャット、Web会議アドレスなど)を一元的に集約/管理/共有できる連絡とれるくんを提供している。名刺登録/管理機能や、スマートフォンのアドレス帳に非登録でも着信元情報を表示する機能などを備えており、現在の国内ユーザー数はおよそ80万人。花王やヤフー、シチズン時計、SBI証券などの企業が採用している。
一方、スノーピークビジネスソリューションズ(以下、SPBS)は、アウトドア用品メーカーのスノーピーク(Snow Peak)と、システム開発を手がけるハーティスシステムアンドコンサルティングによる合弁会社だ。
2016年設立のSPBSでは、企業が「オフィス環境」「働く場所」「人と人のつながり方」の3つを変えることで組織とビジネスを活性化させる「OSO/TO(オソト)」を提唱しており、実際にアウトドアでのビジネスミーティングや研修のサービス、そしてアウトドア製品を取り入れたオフィスインテリアなどを提供している。会議室を飛び出し、自然の中でたき火を囲みながら話し合うことで、人と人とのコミュニケーション、関係性を改善できるというコンセプトだ。
今回のCaMPオフィスは、Phone Appli社員が新しいアイデアを持ち寄り「協創と対面(Collaboration and Meeting)」を行う「場所(Place)」を目指したもので、それぞれの頭文字から名付けられた。900㎡の面積で、フリーアドレス部分も含めおよそ80名が在席勤務できる設計となっている。なお、同社社員は現在108名で、うち8割がフリーアドレスの対象。リモートワークも柔軟にできる制度/仕組みをとっている。
アウトドアイメージのオフィス環境で人と人との関係を変える
アウトドアを強く意識したCaMPオフィスでは、床材や壁、窓の日よけに木材が多く使われている。「健康経営」を考え、オフィスグリーンが常に視界に入るよう設計されていたり(視認25%以上)、日本の森で収録された自然音や天然アロマの香りがオフィス全体を満たしていたりすることも特徴だ。取材中にも小鳥のさえずる声が聞こえた。
「自然(ネイチャー)の中では、みんなが自然(ナチュラル)に、もっと自由なコミュニケーションできるのではないか、というのがテーマ」(Phone Appli 石原氏)
CaMPオフィスの象徴的な存在として、中央にはテントが設置されている。ここはチームミーティングなどができるスペースだ。
SPBSの藤本氏によると、本来これは屋外用テントとして販売している製品であり、最大で8名が入れる。単にオフィステーブルを囲むのではなく、周囲と布1枚隔てられた空間に入るだけで「包まれている感覚」が生まれ、社員も自然と笑顔になる、リラックスして議論ができると、藤本氏はその効用を説明する。
「(導入済みの他社オフィスでは)ブレーンストーミング会議にもよく使われている。テント内にロープを張って、そこにアイデアを書いた付箋を貼り付けていくかたち」(藤本氏)
そのほか、フリーアドレス社員向けのエリアには、アウトドアテーブル/チェアや“ファミレス風”の座席も用意している。これらはすべて可動式であり、移動させることで、最大70名ほどの社外向けセミナーや社内イベント用スペースとしても活用できるようにしている。
そのほか、パーテーションで区切られた個人業務に集中できるブース、大型ディスプレイを囲んで打ち合わせのできるスペースなどがある。健康経営を意識して、管理部門など固定席制の社員には「体幹が鍛えられる」(石原氏)バランスチェアを支給している。
アウトドアを強く意識する一方で、ITの活用にも積極的だ。壁際には天吊りの短焦点プロジェクターが多数設置されており、サイネージとして常時稼働させている。取材時には来訪者向けのメッセージが流れていたが、ふだんは社内向けの情報発信にも活用するという。
会議スペースや社長執務室には、シスコシステムズの「Telepresence MXシリーズ」や「Spark Board」、リコーの電子黒板などが設置されており、取引先やリモートワークの社員とも柔軟なコミュニケーションが図れる。
また、SPBSの提供する「INTERACTIVISION」もデモ展示されていた。これは複数のオフィス間を常時リアルタイムにつなぐビデオシステムだが、ミーティングなどに用いるのではなく、お互いの雰囲気を伝えることで同じオフィスにいるかのように感じさせる、社内の「つながり」を生むための環境型製品だ。
加えて、Phone Appliが2月8日にリリースした「居場所わかるくん」も導入している。これは、フリーアドレスオフィスでしばしば発生する「社員がどこにいるのかわからない」問題を解消するソリューションだ(連絡とれるくんのオプションサービス)。具体的には、社員の持つ業務PCやスマートフォン、ビーコンなどに無線LANの位置測定技術を適用して、マップ上でリアルタイムに位置表示する。