日本では元より宗教的な影響もあり火葬が一般的である。西洋文化では土葬が一般的で、防腐処置を施して埋葬される。この埋葬文化から産まれた怪談が″リビングデッド″、所謂ゾンビと呼ばれるものだ。日本では馴染みがないと思われているが、Steamにおける日本ユーザーのゾンビ作品の売り上げは高く、分析結果でもゾンビ好きな国民性だと言われている。
そんな隠れたゾンビゲー愛好家の多い日本人に送る第68回はシングルプレイRTS「They Are Billions」を紹介する。
街づくりと防衛ディフェンスの融合
本作品は「シムシティ」といったゲームに代表される都市経営シミュレーション(シティコンストラクション)というジャンルと、「Age Of Empires」などで称されるリアルタイムストラテジー(RTS)の合いの子だ。公式ではRTSとして販売されているが、ゲーム中にポーズをかけてじっくりと操作でき対人部分も存在しないため、RTSが苦手な人でも大丈夫だ。
現段階ではサバイバルモードのみ実装されており、指定日数を耐えきれるかどうかを競う。マップは段階解禁を含めた4つ、ゲームの長さ、ゾンビの物量を設定して始めることになる。それぞれの設定でスコアの倍率が決まっており、スコアに応じて次のマップが解禁される。デフォルト設定の難易度100%でも非常に難しいので、まずは低い難易度設定で慣れていくことをお勧めする。
画面右下に運営/防衛に使用できる資源量や現在の人工などの情報が固まっている。残りの見る場所は画像の説明をご覧いただきたい(画像クリックで拡大)。手持ちの資源や人員をやりくりして街の拡大と戦力、防衛を固めていくことになる。マップはマウスを画面端に合わせるか、WASDキー(上記参照)を押すことでそれぞれの方向へ移動させられる。
本作品が防衛をしっかりと固める必要があるのには大きな理由がある。ゾンビ物の定番であり、お約束と言えば“感染”だ。壁を除く建造物はゾンビに破壊されることで、新たなゾンビを産み出してしまう。だが、建造物はかなり脆い設計になっているため簡単に破壊されてしまうのだ。ただ、プレイヤーの敗北条件は街の中心を壊される一点だけである。周りを幾ら破壊されようと、最初に指定した日程をしのげば勝ちなのである。
では「防衛を固めて日数耐えれば楽勝じゃないか?」と思う方もいるだろう。そうは問屋が卸さない。
一定間隔の日数毎に“ホード”という高速で走るゾンビ集団がマップ外の一定方向から一斉に攻め込んでくる。その数は非常に多くゲーム名にもある”Billions”はここに所以する。一匹一匹は脆弱なゾンビだが、数が増えれば対処できなくなり一気に制圧されてしまう。ホードは一定間隔で押し寄せる集団は回数を重ねる毎にどんどん増えていくが、それにつられるようにマップ上のゾンビも不定期に生活圏内に押し寄せてくるので防衛は容易ではない。ただし、ホードは押し寄せる際に何時間後にどの方向から押し寄せるかは必ず予告される。その方向の防衛をすぐさま確認して対応しよう。
人間兵は一定の戦果を挙げる事でレベルアップしてベテラン化することで非常に強力になる。マップ上のゾンビは定期的に掃除していこう。ユニットは選択後、指定した位置をマウスで右クリックすることで移動させることができ、ゾンビを右クリックする事で攻撃する。銃器を持つユニットの場合、その音でゾンビが寄ってくる点にも注意だ。
戦闘だけじゃない練りこまれた内政バランス
まずは何をするのにも人が必要となる。労働者は家を建てることで税金と労働者を確保できる。お金は人口と維持費の差額となるが、基本は人数が増えれば増えるほど多くなると考えればいい。だが、序盤は建てられる範囲も狭く、防衛も心許ないため一定の範囲でしか拡張はできない。建造の範囲を広げるためには“テスラタワー”という電柱の様な物を建てることで範囲を拡張できる。だが、建造には木材と一定のお金と労働者が必要で、逆算的に必要な物を集めていく必要がある。
人口が増える事で市長が選出される。30/200/600/1200人の区切りで選出され、それぞれ二人から選択する事になる。区切り事にボーナスの内容の質も挙がっていくが、ボーナスの内容はゲームごとにランダムとなり規則性は無い。ボーナスは自分のプレイ状況や後々の事を考えて取得する事で目に見えて変わることもあるが、何度かプレイして慣れないとその時に適切なボーナスを選ぶのは難しいだろう。
さらに本作品には持てる資源には限りがある。資源倉庫を建てる事で資源の保有上限を50づつ引き上げることが可能。上限以上に持つことはできないので資源を持ち腐れにするのは非常にもったいない。また、資源倉庫の影響範囲内の施設は出力が強化されるため、沢山の施設を巻き込む様に建てるのがコツだ。
今後に非常に期待できる早期アクセス作品
年末発売の作品には魔物が住むとも言われるゲーム業界。本作品は正にその格言を評するにふさわしいゲームといえる。挑戦的な難易度からまったりとした低難易度からユーザーの腕に合わせた設定ができ、練りこまれたバランスは昨年販売されたシングルプレイ専用のストラテジータイトルの中でも屈指の作品だ。早期アクセスとして販売はされているが、今後のアップデートにも非常に期待が大きく、日本語字幕も対応予定となっている。
ストラテジーが好きで、効率や内政を組み上げることが三度の飯よりも好きなプレイヤーなら迷わず購入する事をお勧めしたい。
奴らは膨大で尋常ではない物量で襲い掛かってくるが、手玉に取って翻弄してやろう。街を導くのはあなただ。
「They Are Billions」の推奨動作環境は?
最低動作環境のグラフィックの要件がIntel HD Graphics 3000以上と、CPU内蔵GPUで動く軽さとなっている。ただ、ゲーム後半ではユニットの物量があまりにも多く、筆者の環境(Core i7-3960XとGeForce GTX 1080)でもフレームレートが30fps近くまで下がる場面もあったため、ある程度のスペックは必要かと思われる。
『They Are Billions』
●Numantian Games
●2570円(2017年12月13日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows
ジャンル ストラテジー、基地建設、RTS、ゾンビ、ストラテジー
Copyright Numantian Games 2018.
■著者:rate-dat
・Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: ratedat
・Twitter:@rate_dat
この連載の記事
-
第114回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「XCOM: Chimera Squad」ダイバーシティーを舞台にしたターン制ストラテジータイトル -
第113回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「Ciel Fledge: A Daughter Raising Simulator」10年間の愛情を娘に注ぐ育成シミュレーション -
第112回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「ジラフとアンニカ」ノスタルジアに還るリズムアクションADV -
第111回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「Daymare: 1998」バイオハザードへのリスペクトが込められたサバイバルホラー -
第110回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「GTFO」フレンドと共に地下に散る高難易度サバイバルホラーFPS -
第109回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「DJMAX RESPECT V」尊敬という意味に込められた熱い魂の音楽ゲーム -
第108回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「Indivisible」美麗フルアニメーションのアクションRPG -
第107回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」ADV史に残る傑作のフルリメイク -
第106回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「Cliff Empire」制約とノルマに揺られる崖上都市開発シミュレーション -
第105回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「Project Winter」過酷な雪山でのサバイバル人狼ADV -
第104回
ASCIIsteam
Steamおすすめゲーム「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」1980年代ADVオマージュのコマンド選択型推理ADV - この連載の一覧へ