なかなか爆発しなかったスマートウォッチ市場が、2017年の年末商戦で人気となったようだ。Apple Watch Series 3を積極的に訴求するApple、フィットネスバンドのFitbitもスマートウォッチを投入。Samsung、LG、Huaweiなどもラインナップを揃えるが、Fossilなどの時計メーカーも本腰を入れ始めている。

ドイツでのFitbitショップ。フィットネスバンドで一世を風靡し、その市場の縮小とともにやや厳しい状況にある同社だが、昨秋には独自OSを採用した本格的なスマートウォッチを投入することで生き残りを図っている
立ち上がりまで数年かかったスマートウォッチ市場
スマートウォッチは2017年の年末商戦で人気カテゴリーの1つとなったようだ。台数などの数字はまだ出ていないものの、Target、Best Buyなどの小売も人気商品としてプッシュしたようだ。
Samsungが「Samsung Galaxy Gear」としてTizenベースのスマートウォッチを発表したのは2013年。LGなども後に続いたが、最初に新しいカテゴリーとして根付くだろうと期待されたのが、2015年春リリースの初代「Apple Watch」だった。標準のEditionに加えて、エルメスとのコラボレーションによる高級ライン、比較的安価なSportなど、多数のラインアップを揃えたにもかかわらず、ヒット製品とは言えない状況だった。
結局、2015年はスマートウォッチの成長を信じていた向きには残念な年となった。Apple Watch発表直前の2015年のMWCでは、Huaweiを始めスマートフォンベンダー各社が積極的にスマートウォッチをプッシュしていたが、その後は尻すぼみしている。2017年のMWCではそもそもあまり話題に上がらなかった。
一方で、安価なフィットネスバンドは売れていた。代表的なのがFitbitだが、自国市場の大きさと価格面からXiaomiが高いシェアを誇っていた。
米国では2020年にフィットネスバンドと
スマートウォッチの比率が逆転か
このように、”失敗”のレッテルを貼られていたスマートウォッチだが、2017年の年末商戦でスポットを浴びたのはなぜか?
牽引役はやはり、Appleだったようだ。Appleは9月、”Series 3”として最新のApple Watchを発表しており、これが好調のようだ。理由はさまざまだろうが、Appleは最新のシリーズでセルラー接続のある機種(eSIM搭載)を用意。これまでのようにスマートフォンとの連携が利用の前提にならなくなった点はやはり大きい。
Android Wear(SamsungはTizen)を利用したスマートウォッチも改善が進んでいる。特に必須と言えるバッテリーの寿命や、厚すぎる感があったデザイン面などで改善が目立ってきた。
これ以外に、フィットネスバンドに飽きたユーザーがもう少し高機能なものを求め始めたこともありそうだ。メッセージの通知はもちろんだが、スマートスピーカーの普及によりユーザーはさまざまな端末を(遠隔から)操作したいというニーズが出てきている。ウェラブル端末にスマートフォンに近い役割を求めるユーザーは、フィットネスバンドよりもスマートウォッチを選ぶだろう。
もう1つ重要な要素として、FossilやSkagenといった時計メーカーがスマートウォッチに向かい始めたこともある。AppleやSamsungなどのデバイスに慣れ親しんだガジェット好きだけでなく、普通の人が新しい時計として時計メーカーのスマートウォッチを選ぶというケースがこれから出てくるはずだ。
腕に装着するウェアラブル端末全体では依然としてフィットネスバンドタイプが優勢だが、調査会社のNPDの報告(https://www.npd.com/wps/portal/npd/us/blog/2017/the-smartwatch-boom-is-here/)では2020年に米国ではフィットネスバンドとスマートウォッチの比率が逆転すると予想している。IDCの調査でも、2017年に入ってからは、FitbitやXiaomiなどフィットネスバンドが中心のメーカーはマイナス成長になった。
なお、そのFitbitはスマートウォッチに傾倒しており、年末商戦には「Ionic」などの新製品を投入している。OSは独自の「Fitbit OS」で、Fitbit Payと呼ばれる決済機能の機能もあるが、アプリのエコシステムが気になるところだ。同社は2018年に入り、血糖値の測定ができるパッチを製造するSanoというベンチャーに600万ドルを投資することを明らかにしている。この投資からは、血糖値モニタリング機能が加わるのではという予想も流れている。

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