「8万円の上着? 普通でしょ」と思わない人たちのために
「水沢ダウン」を8万4240円で購入しました。この一文で「ああ、アレを買ったのね」と感じる人は、この記事を読まなくてもよいかもしれません。「どうして8万円もダウンに使ってしまうのか」と思う人に自慢する、いや違うな、紹介するために書いているわけです。
ASCII編集部の何人かにも「高すぎるだろ」と言われました。しかし、編集部においては8万円ぐらいのカメラのレンズやグラボなどをサクッと買う人も多いわけです。それはそれで仕事に使うこともあるわけで、まったく文句を言う気はないのですが、だったら「寒い日の通勤や取材に着てあたたかく動きやすいもの」に8万円を出すことに文句を言われる筋合いもないはず。
単焦点レンズやGTX 1080を悪く言う気持ちはないものの、それらを身に着けたところで、寒い冬を暖かく過ごすことができません。などというと「心があたたかくなる!」と、どうや、言うたったでぇ~みたいな顔で返してくるのですが、残念ながらあたたかいどころか寒いだけです。気温が低い季節には、あたたかいダウンが必需品なのです。
そうはいっても、結構考えたんですよ、店頭で! 前々から狙っていたカラバリがあって、実際に着てみたらやっぱりいい感じだなと思いつつ、でも8万あったらアレも買えるしコレも買えるしそもそも家賃レベルじゃないかと悩んだりしつつ、店員の前で試着して(暖房の効いた店内でダウンを着たわけで)汗ダラダラになりつつ、店員さんの「いいですよこれ」トークを3分ぐらい聞かされてグルグル目になりつつ、「これください」の6文字を喉から出すまでの葛藤がないわけじゃないですか!
そんなわけで、来月のカードの支払予定額を見ると少しばかり憂鬱になるので、買いました、よかったです、と書いて気持ちを整理し、自分を納得させたい気持ちがある。もちろん読者に製品の特徴を伝えることは大前提ですが。ともかく、そういう記事です。
そもそも水沢ダウンとは何ですか
水沢ダウンは、スポーツウェアで知られるデサントのファッションライン「デサントオルテライン」から発売されているダウンです。
国内でも希少というダウンウェアの一貫生産体制を持つ、デサントアパレル水沢工場(岩手県旧水沢市・現奥州市)の技術とノウハウにより、2008年に誕生。2010年にバンクーバーで開催された冬季五輪にて、日本代表選手団オフィシャルスポーツウェアとして採用されています。
現在、「マウンテニア」「アンカー」「シャトル」「ストーム」「エレメント」「レジリエント」の6種類があります。筆者が購入したのは初期モデルとしてロングセラーを続けるというアンカー。いちばんベーシックなモデルといえるでしょうか。カラバリはGRAPHITE NAVY。要するにネイビーです。しつこいようですが価格は8万4240円です。
では、水沢ダウンの何がいいのか。雨や雪の日でも安心で、軽くてあたたかく、スタイリッシュだからです。どうしてそうなのか、解説していきます。
ダウンジャケットは、表地と裏地の間に羽毛を入れるわけですが、雨や雪などに弱い。ステッチのミシン目から水が侵入し、羽毛が濡れてしまうため、十分な保温性が保たれないのです。また、ステッチ部分の隙間よりダウンが抜け落ちやすいなどの欠点がありました。ダウンから羽根がちょろっと出たりしていた経験、ありませんか?
そこで水沢ダウンは、ダウンパックの形成に縫製ではなく特殊な熱圧着(ノンキル)技術を採用し、ステッチを排除しました。水が侵入する隙間そのものをなくす発想です。さらに、前立てや脇ポケットには止水ジッパーを、袖などの縫製が必要な箇所には裏面にシームテープ加工を施すことで、雨や雪の日の快適性を向上させることに成功。
表地には、4WAYストレッチ素材(要するに、伸びる)「DERMIZAX MICRO STRETCH」を使用。裏地には、繊維を透過した光を熱へと変換する光発熱と身体から発する水分を熱に変える吸湿機能により、すぐれた発熱力を有するという素材「HEAT NAVI」を採用しています。
縫い目がないために気密性が高くなり、少ないダウン量でも十分な保温性が生まれただけでなく、やぼったくないシルエットも実現しています。そして生地にはストレッチ性もあり、さらに身体からの熱も逃がさない。寒い日に着る上着として、まさに理想的なのです。