●「モンサント法」で遺伝子組み換え米が日本を占拠する
都道府県が種を供給することが困難になる反対側で、グローバリズム、特に「ある企業」が我が国において、GMO(遺伝子組み換え作物)を含む種のビジネスを拡大していくことになるのが確実だ。GMO種子の世界市場で90%以上のシェアを握るモンスター「モンサント社」である。
GMO技術を活用し、世界の「種子」を支配下に収める野心を隠さない、悪名高きモンサント社。地球人類史上、最悪の「公害企業」と言っても過言ではない、化学メーカーである。
種子法の廃止や農業競争力強化支援法により、種子の支配権が公の立場である都道府県から、民間企業に移ると、種子全体の特許をとり、所有権を主張するというモンサントお得意の手法が可能になる。もちろん、その種子の「ビジネス」を可能にするべく、モンサントは規制改革推進会議や一部の政治家など、日本国内の「売国奴」たちを動かし、自分たちの利益最大化に結び付くルールを日本国家に強いていくだろう。
最終的には、日本の農家は特許料を支払わなければ、米を含めた主要農作物の種子を使えなくなるという事態に至る。いわゆる「種子の私物化」だ。
種子法の廃止と農業競争力強化支援法の組み合わせは、明らかに「モンサント法」なのである。
すでにして、日本の野菜の種のほとんどは、圧倒的な資本力を誇る一部の大企業に依存している有様だ。グローバルな種子企業が中小の種苗会社を買収していき、次第に寡占化していっているのである。
このままでは、コメをはじめとした主要農作物も同じ状況に至る。
将来的に、我が国の「稲作」も、GMO米に席巻されていく事態になるのは確実だ。無論、GMO米に嫌悪感を抱く国民は少なくないだろうが、花粉の伝播は止められない。しかも、日本のように田畑が密集している国において、遺伝子組み換えの汚染を止めるのは不可能である。
最終的には、恐らく50年後から60年後だとは思うが、天皇陛下はGMO米で新嘗祭を執り行なうことになるわけだ。当然、モンサントに特許料を支払った上である。
上記の未来を受け入れたくないならば、抗わなければならない。あるいは、足掻(あが)かなければならない。
健全な農業を将来の日本国民に引き継ぐ責任は、現代を生きる日本国民が担っているのである。
著者紹介──三橋貴明
東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。外資系IT企業、NEC、日本IBMなどを経て2008年に中小企業診断士として独立、 三橋貴明診断士事務所(現、㈱経世論研究所)を設立。 2007年、インターネット上の公表データから韓国経済の実態を分析し、 内容をまとめた『本当はヤバイ!韓国経済』(彩図社)がベストセラーとなる。その後も意欲的に新著を発表している。