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韓国で開催されたイベントの模様をJAWS-UG青森の立花拓也がレポート

アジアのAWSユーザーがつながった「AWS Community Day APAC」

2017年11月13日 08時00分更新

文● 立花拓也(ヘプタゴン) 写真●赤塚誠二(サーバーワークス)

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インド発のAPIテストツール「Postman」を語る

 インドのバンガロールのユーザーグループから参加したShamasis BhattacharyaさんからはPostmanの裏側について発表が行われた。Postmanは全世界で400万人のユーザーがいるAPIのテストツールで、日本でも利用している開発者の方は多いのではないだろうか。私もユーザーの一人だったが、インドの企業がPostmanを開発していたことを今回のイベントで初めて知った。

Microservice Architecture with AWS Beanstalk & Docker at Postman Shamasis Bhattacharya, Vice President of Engineering at Postman, INDIA

 Postmanはサービス開始直後から急激にユーザーが増え、自分たちの手だけの運用では立ち行かなくなった。そこで、彼らはフルマネージドなインフラ環境を提供してくれElastic Beanstalkにインフラを移設。現在では30を超えるマイクロサービスでPostmanは構成されているそうだが、サービスの成長過程において、インフラの標準化のためにDockerを採用したり、スケーラビリティと信頼性を求めてAuroraへデータベースを移設をしたり、つねに進化を遂げてきた。スピード感を持ってつねに最適解を求める企業カルチャーがPostmanを支えているのだと感じた。

Alexa Custom Skillを語ったわれらがヒデ君!

 JAWS-UGからはデジタルキューブの岡本秀高さんが登壇し、AmazonのAIアシスタントAlexaの機能を自由に作成することができるAlexa Custom Skillの開発について発表した。彼は、Alexaが日本への正式に展開される前からすでにCustom Skillを開発している日本では数少ないエンジニアだ。

How to develop Alexa Skill Kit based on Serverless Architecture Hidetaka Okamoto, JAWS-UG Kyoto, SW Enginner at Digitalcube, JAPAN

 セッション冒頭にAlexaに関する質問があったが、会場内の全員がAlexaについては知っていたが、Alexaデバイスを持っている人、そしてCustom Skillを開発したことがある人はほとんどいなかった。とはいえ、10月上旬にAlexaのインドや日本への展開が発表されたので、これから1年でこの状況は大きく変わってくると思われる。

 岡本さんのセッションではAlexaの基本的な仕組みや機能、AlexaSkillKitを用いたCustom Skillの開発についての説明があった後に、Custom Skillを本格的に開発していく上で必要となるテストやデプロイ、AWSのリソース管理の方法を披露した。

 テストは、ESLintとalexa-conversationというNode.jsのモジュールを使い、構文やAlexaとの会話が正しく動作しているかをチェック。コードのデプロイやAWSのリソース管理についてはServerless Frameworkを使って開発を行なっているそうだ。これからCustom Skillを開発する人にとっては貴重な情報となるだろう。

AIサービスの利用ケースを語ったタイのユーザーグループ

 タイのAWS Community HeroであるVit Niennattrakulさんからは、AWSのAIサービスを用いたユースケースの発表があった。

Building an A.I. with Amazon Rekognition and Amazon Lex Vit Niennattrakul, AWS Community Hero, THAILAND

 1つ目のユースケースは、Alexaのパーソナライズ応答だ(音声によるパーソナライズは10月上旬に発表された)。Alexaに話しかける前にカメラで顔を撮影し、それをRekognitionを使って人物判定することで、その後のAlexaの会話をパーソナライズするというものだ。

 2つ目は、パーソナライズされた応答を行なうインターホンだ。インターホンのボタン代わりのAmazon IoTボタンを押すとカメラで顔を撮影されて、S3上に顔画像がアップロードされる。その後Lambdaが起動され、Rekognitionによって誰が映っているのかが特定される。最終的にPollyからその人向けの応答メッセージが流れるというものだ。たとえば、留守中でも信頼できる人物の訪問ならドアの電子キーのワンタイムパスワードをSMSなどで送信し、ドアの中へ入ることが可能となる。

 これらのサービスは実際に彼らのオフィスでも使われているそうだ。着眼点が面白く「なるほど!」と思わせてくれるセッションだった。

シンガポールグループはAPIを迅速にデプロイできるApex Upの紹介

 続いてはシンガポールのAWS Community HeroであるKai HendryさんからAPI GatewayとLambdaの環境を簡単に作れる「Apex Up」の紹介。Apex Upは日本でもおなじみのApexと同じTJ Holowaychukさんが中心となって開発されているシンプルで高速にAPIをデプロイできるツールだ。Python、Golang、Node.js、Crystal、静的サイトに対応していて、API GatewayやLambdaの設定をまったく意識することなくデプロイすることが可能だ。

Golang on Serverless with Apex Up Kai Hendry, AWS Community Hero, SINGAPORE

 初めてAPI GatewayやLambdaを操作する際には、APIを動かせるようになるまでに学習コストがそれなりに必要だが、このツールを使うことで、それを簡略化する事ができる。私も実際にApex Upを使って、APIを作ってみたが、インストールからAPIを動かせるようになるまでに、わずか2,3分しかかからなかった。ぜひこれからもAPIを作るという方やAPI GatewayやLambdaの設定で一度挫折してしまった方は試して見るとよいだろう。

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