Windows 10において、「最新版」などを説明するための「Current Branch(CB)」「Current Branch for Business(CBB)」といった用語が変更になった。これは、今年4月に発表された、Windows 10のFuture Updateを年2回にする話と連動している。
この話をする前に、ビルドやブランチについて簡単に復習しておく。
マイクロソフト社内では今もWindows 10の開発が続いているが、ある時点のソースコードからインストール可能なWindowsバイナリイメージを作成すること「ビルド」といい、作成されたものにはそれぞれ「ビルド番号」がつけられる。
ビルド番号は、整数と小数点以下の数字からなり、整数部分はビルド1回について1つづつ上がっていくが1日1回のみ。小数点以下は、同一の日に行ったビルドを区別する場合に使うようだ。後述するようにリリースされると、ビルド番号が固定され、Widnows Updateで更新されていくと小数点以下の部分が上がってく。下の図は、これまで行なわれたWindowsのFuture UpdateとWindows Updateによるビルド番号の変遷をグラフ化したもの。縦軸がビルド番号で横軸がリリース日時である。
ビルドが行なわれると開発チーム内での評価が始まり、ある程度の品質があるものはマイクロソフト社内でテストされる。これを「Canary」と呼ぶ。一般に初期の評価用ソフトウェアがこう呼ばれるのだが、昔鉱山でカナリアを持って入り有毒なガスの有無を調べたことに由来する。Canaryによる評価でも大きな問題が見つからない場合、Windows Insider Programでプレビュー版として公開される。
RS2以降は、こうしたサイクルを続け、3月/9月にFuture Updateビルドを完成させて実際に配布する。Preview版に関するブログなどを見ると、だいたい1ヵ月程前(つまり2月/8月)の時点で新規機能の追加が止まり、報告された問題への対応のみとなる。
このFuture Updateは、先にWindows Insider Programの参加者に配布され、そのタイミングが3月/9月であるため、Windows 10のFuture Updateの完成時期は、3月/9月だとされる。なお、一般への配布はその2〜3週間後となり、だいたい翌月(4月/10月)になる。
また、各Future Updateは、正式版としてリリースされたのち、Windows Updateで更新されていく。
Windows Updateには、毎月配布される定期的なものと、必要なタイミングで実行される非定期的なものがある。前者には、累積更新プログラム、(累積的な)セキュリティ更新プログラムがある。いわゆるバグフィックスとなる「累積更新プログラム」をインストールすると、Windowsのビルド番号の小数点以下の数字が変更される。
Windows10のリリース
このFuture Updateのタイミングで、Windows10のバージョン番号やビルド番号が1つ決まる。バージョン番号は「西暦の下2桁」+「完成月」なので、10月17日から配布が始まったRedStone 3は「Ver.1709/Build16299」、今年3月のRedStone 2(RS2)は「Ver.1703/Build 15063」となっている。
また、マイクロソフトは特に呼び名を決めていないが、Windows 10は、3年周期の「シリーズ」と呼ばれる概念がある。これは、事前の計画により機能などのゴールが決められ、3年間でこれを実装していく。従来のXP、Vistaなどのメジャーアップデートに相当するのが1つの「シリーズ」だ。これは、Windows 10リリース版のThreshold(TH)と、2016年のAniversary Updateから始まるRedStone(RS)シリーズの2つがある。なお、現在の予定からいくと、RSシリーズは、2018年中にRS4とRS5をリリースして完了するはずだ。
Future Updateには、サービスタイムラインと呼ばれる寿命があり、これは18ヵ月と設定されている。半年ごとにFuture Updateが配布されるので、3つあとのFuture Updateがでる頃には、元のFuture Updateは基本的にサービス寿命を終える。そもそもWindows 10は、新しいものが出てくれば次々にアップデートしていくものになっている。
Future Updateは、サービスタイムラインに到達するまでは、「現役」であり、ユーザーは、Future Updateが出たあとも、前のFuture Updateを使い続けることができる。こうした中で各Future Updateでインストールが推奨される最新版が「Current Branch」(CB)である。
CBは、サービスタイムラインに到達していない個々のFuture Updateにおける最新版を意味する。これに対して、ビジネス向けには、CBよりも4ヵ月前のバージョンである「Current Branch for Business」(CBB)を使うことが推奨されている。これは、CBの配布後に問題が起こった場合の対策だ。いくらテストを行ったとしても、世界規模での利用では、想定外の問題が発生する可能性がある。こうした問題に対処するため、4ヵ月前のバージョンを利用することが推奨されるわけだ。
組み込み機器などにWindowsを使う場合、Long Term Service Branch(LTSB)エディションを利用することで、最長10年間は同じバージョンのWindows 10を利用できる。LTSBは、アップデートで提供されるWindows 10のバージョンではなく、エディションとしてパッケージで提供されることに注意されたい。
これはWindows Updateで勝手にアップデートされることはないが、3年ごとにシリーズの最初のバージョンをベースにLTSBエディションが作られる。LTSBには機能が追加されることはなく、各「シリーズ」の2回目以降のFuture UpdateはLTSBにはならない。現在のところTH1をベースにしたLTSB2015とRS1をベースにしたLTSB2016の2つがあり、次のLTSBは2019年と言われている。
Future Update、CB、CBB、LTSBやそれらのルールについては、Windows 10が出荷されてからいろいろと変更されており、今年4月にようやく年2回のFuture Updateが「約束」された状態となった。このため、18ヵ月などのルールが厳密に適用されるのは、これからだ。実際、TH1はすでにCB、CBBではなくなってLTSBのみの状態だが、TH2は、CB、CBBとして更新が続いている。
これらの用語が変わる
このCBやCBB、LTSBという用語は、Future Updateの定期化にともない、「Semi-Annual Channel(Targeted)」「Semi-Annual Channel」「Long Term Service Channel(LTSC)」と変更された。それぞれに日本語訳として「半期チャンネル(ターゲット指定)」、「半期チャンネル」、「長期サービスチャンネル」が当てられている。
ただし、この用語は、CBに関してはRS3からだが、CBBに関しては、RS2の時点で変更されていた。また、LTSCは、まだこの名称に対応するものが存在していない。このため、現状では、両方の用語が混ざった状態になっている。RS3では「Semi-Annual Channel(Targeted)」だが、RS2ではCurrent Branch(CB)のままになっている。
たとえば、現在のリリース状態を示す「Windows 10のリリース情報」(https://technet.microsoft.com/ja-jp/windows/release-info.aspx?f=255&MSPPError=-2147217396)のページでは、新旧の用語が混在した状態だ。
また、Windows 10 RS3(Fall Creators Update)では、用語の変更に伴い、「設定」→「更新とセキュリティ」→「Windows Update」→「詳細オプション」のページが変更になった。
RS2では、更新プログラムをインストールするタイミングを「Current Branch」「Current Branch for Business」で区別していたのに対してRS3では、「半期チャンネル(ターゲット指定)」「半期チャンネル」という表記に切り替わっている。
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