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麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第18回

中島美嘉からバッティストーにまで必聴盤10選

麻倉推薦:ジャズなのにド演歌な八代亜紀、でも本質は魂

2017年11月04日 12時00分更新

文● 麻倉怜士 編集●HK(ASCII)

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 評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。10月ぶんの優秀録音をお届けしています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

『トーキョー・ワンダラー』
渡辺香津美

 渡辺香津美がアコースティック・ギターにて、オリジナルとスタンダードナンバーを、ストリングスと共に奏でる。

 冒頭の「哀愁のヨーロッパ」。甘く、切ないストリングスがヨーロッパの暗く、よどんだ雰囲気を醸し出し、アコギが、すっきりとした透明なタッチで、淀みなくスムーズに進行する。オリジナルのサンタナのこってりした濃密な味わいとは違う、透明度の高い哀愁表現だ。

 5曲目「君の瞳に恋している」。ストリングスが躍動し、ギターがラブリーに心地良く躍進。ボーイ・タウン・ギャングのバージョンのリフをそのまま軽妙に演ずるストリングスは、本作品の第2のメインロールだ。アクティブリスニングにも、またBGMにも最適な一品だ。懐かしのカルメン・マキは最後の11曲目。「花ごよみ~七つの水仙」にようやく登場。アルトのこってりとしたブルージーな歌唱だ。

FLAC:96kHz/24bit
ワーナーミュージック・ジャパン、e-onkyo music

『ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》/バーンスタイン:《ウエスト・サイド物語》よりシンフォニック・ダンス(96kHz/24bit)』
アンドレア・バッティストーニ、東京フィルハーモニー交響楽団

 アンドレア・バッティストーニと東京フィルのサントリーホール・ライブ録音は名アルバムとの評価が高いが、私に言わせるとまるでお風呂で録っているような残響過多で、せっかくのバッティストーニの鮮烈な切れ味が鈍る。

 ところが本作は違う。目が冷めるような鮮烈さ、細部までの細かな彫塑は、このコンビ録音の新しいページを開く。ライブならではの豊かなソノリティを保ちながら、ハイレゾならではの細部までのこまやかな目配りが聞ける。バッティストーニならではの色彩感も本作の楽しみ。会場がサントリーでなく、オペラシティタケミツホールであるのも、違う音響の一因だろう。

 オーケストラは上手いが、さらなる切れ味とスケール感が欲しい。高解像度なので、このオーケストラの音響的な持ち味がより明確になる。「春の祭典」は2017年5月、オペラシティタケミツホール録音。

FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
DENON、e-onkyo music

『A or B』
中島美嘉

 3曲収録のミニアルバム。『A or B』は「花王フレアフレグランス」CMタイアップ曲。重たい金管とドラムスだが、音の進行は躍動している。中島のヴォーカルは、透明感に加え、どこか突っかかるようなトゲがあり、特に高音の硬質さが、大いなる魅力だ。

 曲は、ウァースとサビの対比が見事なポップなトーンで、確かにこのハッピー度からして、花王CMのタイアップに起用されたのも分かる見事な仕上がりだ。ただし私の認識からすると、この曲は中島のイメージとしては過度に元気過ぎる。もっと影が濃いのが、中島の本領だ。

FLAC:96kHz/24bit
Sony Music Associated Records、e-onkyo music

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