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CEATEC JAPAN 2017 レポート 第7回

CEATEC JAPANに初出展の「中小企業世界発信プロジェクト2020」から注目企業を直撃

2017年10月05日 06時00分更新

文● 飯島範久 撮影●曽根田 元

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中小企業世界発信プロジェクト推進協議会がサポート

 2017年も10月3日よりCEATEC JAPAN 2017が幕張メッセで開幕しました。CEATECは、2016年よりこれまでの「最先端ITエレクトロニクスの総合展示会」から「CPS/IoTの総合展示会」へ衣替えしたことで注目度が増し、出展社数も来場者数も増加しました。家電見本市の傾向が強かったCEATEC JAPANは、家電等の完成品、完成品に組み込む部品、組み合わせて利用するシステムだけではなく、それらを活用するサービスや新しい生活スタイルの提案など、幅広い出展者が集まる展示会になりました。会場では先進的な技術を導入した大手企業を紹介する企画展もあり、販路開拓としての側面だけではなく、企業間が繋がり、共創するオープンイノベーションの場としても魅力のある展示会となっています。

 そのCEATEC JAPAN 2017で、中小企業世界発信プロジェクト推進協議会では、初めて「中小企業世界発信プロジェクト2020」として20社のパビリオン形式で出展しています。本プロジェクトは、東京2020大会などを契機とする中長期のビジネスチャンスを、都内はもとより日本全国の中小企業に波及させ、優れた製品などを世界に発信するプロジェクトです。

 主な事業として、東京2020組織委員会の入札など、官民の調達情報を一元的に集約した受発注取引のプラットフォームである「ビジネスチャンス・ナビ2020」を運営しています。ユーザー登録数は約23,000件となっており、現在も増加中です。

↑「中小企業世界発信プロジェクト2020」のブース。4号館の入口入ってすぐにある。

 中小企業世界発信プロジェクト推進協議会とは、本プロジェクトを実行するため、中小企業支援機関である東京都 / 東京商工会議所 / 東京都商工会議所連合会 / 東京都商工会連合会 / 東京都中小企業団体中央会 / (公財)東京都中小企業振興公社が、2015年に連携して立ち上げたものです。

 今回、本プロジェクトの事務局を務める東京都中小企業振興公社の中島賢亮氏は「CEATEC JAPANに魅力あふれる中小企業を一堂に展示することで、中小企業の製品・技術、サービスが社会へ導入される一助になると考え、出展致しました。この出展を通じて日本全国の優れた中小企業の製品・サービスを広く発信していくことを目的としております」と語っています。そんな中小企業世界発信プロジェクト2020の中で注目の企業をいくつかご紹介しましょう。

「ゴーグルなしでARを実現したかった」ARC MIRRORトレーニングサービス

↑「ARC MIRROR」は、ハーフミラーを利用して鏡に映る自分と、映像を融合している。

 鏡の前に立ち、映し出される自分の体と映像の融合が、新たなトレーニング手法を生み出しました。 FunLife株式会社の「ARC MIRROR」は、その場に講師がいなくても、指導を受けたのと同じ効果が得られるよう、ARとモーションセンシング技術を駆使したシステムです。ハーフミラーの裏側にディスプレーとセンサーが仕込まれており、正面に立つと自分が映る鏡の状態ですが、ディスプレーが映す映像が透過して見えるため、ARのような演出ができるようになっています。

 体の動きはモーションセンシング技術を使って、3次元的に体の関節の動きを認識。単純な画像認識とは違い、奥行きも把握しているので、体の動きを立体的に把握できます。お手本となる講師は、映像だけでなく、モーションキャプチャを使って正確に関節の動きをデータ化。これにより、鏡の前に立った生徒の動きと比較して、どのくらい動きや関節の位置が違うのかが分かるため、正しい動きを指導できるようになっています。

↑身体の関節をモーションセンシング技術で認識し、お手本の動きと比較して正しい動作をしているか確認できる。

 実際に体験してみると、自分ではちゃんと指示された動作をしているつもりでも、もっと胸を張っていなければならなかったり、かがみ方が足りなかったりして、最初はうまく行きませんでしたが、指示されるとおりに動作できると、キチンと評価されました。鏡に映る自分の姿にボーン映像が重なり、関節の動きがリアルタイムで反映。体の動きの把握にも役立ちます。

↑運動を繰り返して評価することも。なんとか筆者も100点をとった。もちろんゆるい設定でしょうけど。

 講師の映像は、正面だけでなく様々な方向から見られるので、動きの確認をチェックするときに便利。今回体験したのは体幹トレーニングでしたが、ソフト次第ではゴルフのスイングチェックや、ダンスレッスン、リハビリトレーニングなど、さまざまな用途に使えるでしょう。また、遠隔地に先生がいてリアルタイムで指導、データによるフォームチェックだけでなく、先生が確認して指示するなんてこともやり方次第では可能とのことです。

 お手本とユーザーの動きとの比較は、許容範囲を設定できるので、初心者なら緩めに、アスリートならキツめに設定することで、ユーザーのレベルに合わせたトレーニングができます。今後は、ユーザーの動作に対し、「左肩が下がっている」などといったアドバイスができるようにしていくとのこと。スポーツトレーニングの新しい手法に期待です。

光の演出に革命
アートや照明、アラートと使い方はアイデア次第

↑「ホロライト」は、直方体のコンパクトな筐体なので、並べて設置も容易。LED光源なので、消費電力が低いのも特徴で色もさまざま。

 直方体の箱から照射される光が、さまざまな形で照射される。パイフォトニクス株式会社のホロライトが創り出す光は、ライトアップ演出を大きく変えそうです。これは小型の装置から太陽光線と同程度の擬似平行光を照射できるLED照明です。指向性が高く、必要な領域のみ照射できるので、直線や円形、矢印のような図形など目的に合わせた照射ができるのが特徴です。

 LED光源のため、消費電力が低く、特定領域だけの照射により少ない個数で光の演出が可能。すでにさまざまなイベントでも利用されており、世界的にも注目されている技術です。たとえば、逗子海岸で青色ホロライトを30基ほど設置し、波打ち際に照射することで青白い光に浮かぶ幻想的な波を演出。数万人規模の観光客が訪れ、観光資源としても利用でされています。電源は電気自動車のバッテリーから供給しているとのことで、消費電力の低さもわかります。

↑「NIGHT WAVE 2017 秋@逗子海岸」は10月7日~9日まで開催。http://www.zushitabi.jp/nw/

 こうしたイベントのほかにも、たとえば工場で危険な区域を光で示すことで、目で認識できたり、雪道で道路の端を光のラインで示したりと、安全確保のためにも利用されています。指向性が高い光としてはレーザー光もありますが、光源が小さすぎるため線を描いても細く認識しづらいため、ホロライトの適度な太さで表現できるほうが、このような用途に向いているとしています。

↑直線や曲線、文字や図形を照射でき、50m離れた場所から1m四方の照射もできる。

 代表取締役の池田貴裕氏にお話を伺ったところ、認知してもらうべくさまざまな展示会などに出展することで、たくさんのオファーを受け、要望にあった商品の提供をしてきたとのこと。ただ、ツテがないとあまり提案するタイプではないようなので、ライトアップに使いたい、こんなイベントで使いたいなど、さまざまなアイデアを直接掛け合うと良い作品、利用法が生まれると思います。CEATEC期間内に興味ある人はぜひ池田社長のもとを訪れてみてください。

顔認識でマーケティングをローコストで実現

↑顔認識マーケティングシステムの「BeeSight」。顔の特徴を数値化して判断している。

 最近街角で増えてきたデジタルサイネージ。さまざまな画像や映像を切り替えて流せることで少ないスペースで効率よく広告を打てますが、どの広告にどれぐらいの人が注視してくれているのか、広告主側にとっては気になるところ。株式会社アーツエイハンは、そんな悩みを解決してくれる顔認識マーケティングシステム「BeeSight」を提供しています。

 顔認識というと、導入コストが高いイメージがありますが、BeeSightはネット接続していなくてもタブレットやSTBなどに接続されたカメラの映像で動作するので、大手の1/10ほどのコストで導入できるとのこと。だからといって機能的に劣っているということはありません。顔認識では、基本的な男女の判別や年齢のほか、感情や見ている方向などをリアルタイムで認識できます。

↑黒板にカメラ用の穴を開けて、裏側にタブレットを仕込んでマーケティングを行なうといった、簡単なシステムも容易に作れる。

 たとえば、疲れた表情をしている人には、飲み屋へ行って気分をリフレッシュ、というような広告を表示するといった、ユーザーに最適な広告を表示させるということも可能です。また、見ている方向を認識できるので、前を通りかかって広告へ顔を向けている人はどの程度いるのか、といった情報収集も容易にできます。そういった情報を分析することで、より良い広告を流すこともできますので、日にちや曜日によって広告を切り替えたりと広告効果をアップさせることも可能になります。

↑顔の表情から今の気分を読み取り、それに合わせて表示する広告を選択するデジタルサイネージの例。

 AndroidやWindowsに対応しており、既存のデジタルサイネージシステムに追加することも容易とのこと。iOS版も開発予定でクライアントのニーズに合わせたカスタマイズもできるとのこと。現在タクシー車内の広告表示でこのシステムを採用していますが、広告表示だけでなく、アイデア次第で違う分野でも活躍するかもしれません。

自律航法によって、動線の把握や追跡による行動を把握

↑名刺ケースサイズの計測機器「PDRplus」。これをポケットなどに入れて歩くと、各種センサーの値を元に算出して移動軌跡を記録できる。

 屋外だと、GPSによって動きや位置を把握するのは用意ですが、室内やGPS電波の届かない場所だと役に立ちません。そんな場所でも個々の動きをキャッチする手法として用いられたのがジャイロや加速度、気圧などのセンサーから読み取ったデータを元に計算で導き出す自律航法です。

  サイトセンシング株式会社の「PDRplus」は、名刺ケース大のサイズに各種センサーを搭載。データを蓄積することで、移動した軌跡をプロットできます。たとえば、工場内でフォークリフトにこの装置を装着し動かすことで、稼働率や動線を把握。より効率よく運用したり台数を減らしたりといった、コスト削減や生産性の向上につながります。

 また、どのくらいの時間どのエリアにいたかという把握も可能で、たとえば原発の廃炉作業で放射線量の高いエリアにどの程度とどまっていたのか、ということを時間軸のグラフで表すこともできます。

↑計測した結果から、さまざまな計測行動を図式化できるサービスも手がけている。

 センサーからのデータを元に計算で移動距離を算出するため、多少の誤差は生じてしまいます。このため広い空間で誤差数mを許容するような利用法に限られます。ただ、ビーコンを設置することで制度を上げられるとのこと。設置場所や必要個数のノウハウも持ち合わせているそうなので、導入時に相談するのもいいでしょう。

↑フォークリフトにPDRplusを装着して走行したときの軌跡。狭い室内での計測よりは広い工場内での移動の計測向き。

 加速度センサーなどはスマートフォンにも搭載されており、アプリを利用して代用できないのかと思われるかもしれませんが、スマートフォンだとそのままポケットにしまっておくことは少なく、必ず操作します。そのときの動きが誤差を大きくしてしまうため、単独の製品として提供する必要があるそうです。今後は、リアルタイムで把握もできるようSIMを内蔵する予定とのことです。

非接触で電気量を測定、しかも電源不要

↑非接触型デバイス「電気量測定IoTデバイス」は、無給電で動作する。

 電気量を測るデバイスはさまざまありますが、東京工業高等専門学校と秦興物産株式会社の産学連携で開発された「電力量測定IoTデバイス」は、無給電、非接触で実現した製品です。

 電流が流れるとその周りには磁束が発生しますが、その磁束を利用して電力量を測定しつつ、さらにその磁束による微小電力をセンサー本体の動作に当てているため、非接触でありつつ、無給電で動作します。測定したデータはリアルタイムで無線送信可能で、送信された情報をRaspberry Piでデータ処理し、クラウド上へアップしてリアルタイムにグラフを表示したり日刊レポートとして保存したりできます。昔、磁束に関しては理科の実験で習いましたが、このようなことが実現できたのも微小電流で計測できるセンサーや無線機器が開発されたおかげでしょう。

 設置の仕方はとてもカンタンで、電源ケーブルをクランプ状のトランスで囲むだけ。センサー本体をケーブルで接続すれば計測機器の設置は完了です。計測したい機器を改造したり負荷をかけたりする必要もなく、計測機器は自由に着脱できるので、測定したい機器の変更も容易です。複数設置して親機のRaspberry Piへ集約。WiFiを組み合わせてクラウドへデータ送信すれば、遠隔地からでも確認できます。

↑子機のデバイスから親機のデータ処理用Raspberry Piを介し、Wi-Fi経由でクラウドへ情報アップが可能。

 機器の動作状態を確認したり、省エネやコスト削減に用いたり、あるいは住居内のテレビや電子レンジなどに設置して、田舎で独り暮らししている親の見守りといった用途にも使えるでしょう。また、電線などの劣化を検知する手段としても役立つかもしれません。使い方はアイデア次第。こうしたシンプルなIoTデバイスが未来を切り開くことになるかもしれません。

 CEATECは10月6日金曜日まで。4号館の入口すぐのBooth No. S01-01にて展示していますので、ぜひお立ちよりいただき、ご自身の目で確かめてください。

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