いま聴きたいオーディオ! 最新ポータブル&ハイエンド事情を知る 第11回
クラシックでもアニソンでもなんでも来いの万能選手
平面駆動型の魅力、AR-H1は見晴らしいい良音質 (2/2)
2017年09月24日 17時30分更新
落ち着いているが、モダンな感じもするスクエアな本体
外観についても見ていこう。
幾何学的なパターンを組み合わせて抜いたセミオープン型のグリルはモダンアートのような雰囲気。ハウジングやアームは金属製でしっかりとした安定感がある。高級感あるブラックとシルバーを基調にした落ち着いたカラーだが、スクエアな形状にはインパクトがある。
イヤーパッドは肉厚でクッション性が高い。金属製のバンドワイヤーの内側に、本革性で幅広のヘッドバンドを用意し、装着すると自動的に適切な位置に調節される。左右の締め付け感はソフトだ。重量は421gあるが、長時間装着しても、まったく不快にならない快適さだ。
耳とドライバーが接する部分にはスポンジが使われているが、よく見るとそこから強力なネオジウム磁石をアレイ状に配置したドライバーの一部がうっすらと見える。サイズは86mmで角型。音を通すため、磁石に空けられた小さな穴も確認できた。
ケーブルは交換式。2.5mm2極の両出しタイプで、標準では長さ1.2mで3.5mm3極端子のタイプだが、純正の交換ケーブルも用意する予定。バランス駆動用ケーブルはそのひとつで、ウォークマンなどが採用する4.4mm5極端子にも対応できる。6N-OCC素材を利用した高級版も用意する。
万能的に使える平面駆動型ヘッドフォン
試聴用のプレーヤーとしては、リファレンスに使っている、Astell&Kernの「A&ultima SP1000」に加え、同じAcoustic Researchの「AR-M2」を用意した。
緻密な再現ができるため、切れ味が鋭いSP1000との組み合わせも魅力だが、AR-M2と接続すると、このブランドがどういう音を目指しているのかがよく分かる。アナログ的な滑らかさとハイレゾ時代のワイドレンジな再生が調和した音色は美しく、チャーミングだ。AR-M2の実効電圧は3.7Vrmsと高出力で、AR-H1との組み合わせでも十分に余裕感がある。
参考用に手持ちの「HD800」「HD700」あたりと比べてみた。開放型ヘッドフォンとしては定番の機種。価格帯で近いのはHD700(実売7万円台半ば)だが、「情報の緻密な再現」やボーカルを中心とした「中音域の見通し」の良さという点では上位のHD800(実売19万円弱)と比べても遜色ないものだった。
音場の表現が苦手と言われるヘッドフォンだが、AR-H1の場合、スピーカーのような前方定位こそ得られないが、空間の広さや水平方向の位置関係はもちろん、高さ方向の位置関係も明確に伝わってきて感心する。複数の歌い手が交互に登場する楽曲でも、どのような位置関係で誰がどのように歌っているかが明確だ。
とにかくボーカルが美しい、アニソンとの相性もいいのでは?
冒頭でも触れたが、AR-H1は中音域の見通しの良さが本当に優れる。ボーカルの明瞭さに加えて、バックで鳴っているギターや電子楽器など、音域が近くて埋もれてしまいがちな音も明確に分離する。結果、細かな表情に気付き、ハッとさせられる。音数を詰め込んだJ-POPなどでは特にそうで、聴こえなかった音やニュアンスを発見して驚くことが多かった。
また音の立ち上がりの速さも魅力。子音が発音するタイミングが早く明瞭だし、ドラムをたたく際のスティックさばきなども非常に細かく描写する。そのためか、楽曲が気持ちアップテンポに聴こえ、スタジオ収録のアルバムでもライブ会場にいるような臨場感が出てきて爽快だった。
AR-H1は万能選手だが、こうした特徴からアニソンを最高の音質で聴かせるヘッドフォンでもあると感じている。最近ではハイレゾ音源が積極的にリリースされ、ヘッドフォン関連イベントなどでも、デモされる機会が多いアニソンだが、しっかりとした再生は意外に難しい。
気になる人は以下の楽曲当たりから確認してみてはどうだろうか?
ポイントとしては、まずはボーカルを魅力的に聴かせること。音源に含まれる音数が多いため、分離の良さも決め手になる。またトーンバランスもシビアに調整されているため、低域から高域まで強調がなくバランスが崩れない点が求められる。こうした特徴にAR-H1はベストマッチだ。
最後に、別売オプションとして投入をアナウンスしていた4.4mm5極のバランス駆動用交換ケーブルの価格と発売時期もようやく発表になった。4.4mm5極プラグは「NW-WM1Z」「NW-WMA1A」「NW-ZX300」などウォークマンの上位機種のほか、Acoustic Researchから発売予定の「AR-M200」といったプレーヤーが採用している。
OFC(無酸素銅)素材のスタンダードタイプが税別1万7800円。6N-OCC(単結晶状高純度無酸素銅)素材のハイグレードタイプが税別5万9800円。ともに10月下旬の発売予定だ。
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