腕立て伏せやスクワットの回数もカウント
トレーニングに使う場合は、Jabraが提供する無料アプリの「Jabra Sport Life」が必須となる。心拍データの表示、記録、解析には、このアプリが必要だ。
使い方は、一般的な心拍計のアプリと同じ。最初に身長、体重、年齢といったユーザーのプロファイルを入力し、安静時心拍数を計測。そして最大酸素摂取量のVo2Maxを計測して、フィットネスレベルを計測する。
Vo2Maxの計測というと、心拍の上限ギリギリまで追い込まなければならないハードなイメージだが、このアプリでは、最大心拍数の70%程度で15分間走るだけ。心拍数が足りなければ、スピードを上げるよう音声ガイドが入るので、従えばいい。15分ワンセットのランニングデータを3回取れば初回計測は終わる。
走ったルートはマップ上に運動強度ごとに色分けして表示される。あとで「あの坂がきつかったんだなあ」とか「このへんでもうへたれちゃってるなあ」というようにコースの地形と時間帯から振り返ることもできる。
ランニングやウォーキングに、クロストレーニングのメニューも豊富にある。難易度の低いところでは、腕立て伏せとスクワットの組み合わせなど。これもトレーニングを始めると音声ガイドが入り、内蔵の加速度センサーで、スクワットや腕立て伏せの回数を自動でカウントしてくれる。
他社製アプリでもバッチリ使える
イヤフォン型の活動量センサーとして考えると、Elite Sportsを使うメリットは明白だ。音楽を聴きながらトレーニングする場合、イヤフォンと心拍センサーを別々に用意する必要がないこと。そして音声で運動状態がわかるので、運動しながら小さなモニターを注視する必要がないこと。
単純なことながら、実際に使ってみると相当に便利だ。ならば普段使っているトレーニング用のアプリでもぜひ使いたいと思うのは当然のことだが、他社のフィットネスアプリでも使えるようだ。たとえばパッケージの裏には「MapMyFitness」や「RunKeeper」など、主要なアプリの名前が並んでいる。
そこで私が普段使っているサイクリング/ランニング用アプリ「Strava」を起動してみたところ、Bluetoothデバイスとして心拍センサーと加速度センサーの両方が認識された(加速度センサーはフッドポッドの扱い)。これは素晴らしい。
これでサイクリングに使えたら最高なのだが、自治体などによっては使うのが難しい。
またElite Sportsは遮音性の高いカナル型とはいえ、ヒアスルー機能で外の音が聞けるのがウリなのだが、残念ながらマイクの風切音が大きい。仮に速度の高い自転車の場合は、おのずとノイズを聞き続けながら走ることになるだろう。逆にヒアスルーを切って右ユニットだけで使うとしても、片耳を高性能な耳栓で塞ぐことになる。仮にイヤフォン装着が取締の対象でなくても、個人的には使いたくない。
もうひとつ惜しいのは、スマートフォンとBluetoothで接続していなければデータが記録できないこと。データはイヤフォン本体には記録されない。だから必ずスマートフォンのお供が必要になる。そもそもがスマートフォンとの併用を前提にしたBluetoothイヤフォンなので当然なのだが、センサー側にメモリーが載っている、一般的なライフログセンサーのような感覚では使えない。
そして、これも問題とは言えないかもしれないが、Jabra Sport Lifeで記録したデータはスマートフォンのローカルストレージに保存される。ほかのライフログセンサーのように、ネット経由でクラウドに保存するスタイルを採っていない。だからアプリを削除するとデータも消えてしまうので、昔ながらの要領でバックアップを取る必要がある。
それ以外はイヤフォンとしての完成度、心拍計としての成熟度は最初から高く、イヤフォンというよりは高機能なウェアラブルデバイスと言った方が正しいように思えた。外部との接続をワイヤレス化し、ほかのセンサーやアプリを組み合わせることで、イヤフォンはまったく別のものに化ける。そのひとつの方向性を示した製品としても興味深かった。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ