強力なEQと「ヘッドホンを探す」機能
便利な機能としては「ヒアスルー」機能がある。カナル型イヤフォンは、しっかりフィッティングすると高い遮音効果が得られる反面、着脱が面倒。そこでヘッドセット用のマイクを使って外部の音をモニターするのが、ヒアスルー機能。イヤフォンを外さずに人と会話ができる。
もうひとつイヤフォンを使うに当たって、iOS/Android用アプリ「Jabra Sport Life」をインストールしておいたほうがいい。アプリは各種トレーニングのコーチングなど心拍センサーのユーザー向けの機能がメインだが、イヤフォン本体に係る機能もいくつかある。
ひとつは音楽用の「基本のイコライザー」と「高度なイコライザー」。5バンド式ながら扱いやすいデザインで、まずは基本のイコライザーを左右に回して、ざっくり設定。インターフェースとしてはワンノブタイプだが、バックグラウンドでは5バンドEQのパラメーターと連動して、複雑なEQカーブを作ってくれる。
ヘッドセットとして使う場合は「側音」という機能もある。自分の声をイヤフォンの音声に少しミックスする機能で、カナル型イヤフォンのヘッドセットの場合、自分の声も聞き取りにくくなってしまうため、つい大きな声で話してしまうが、それを防ぐことができる。
またAppleのAirPodsなどでもおなじみ「ヘッドホンを探す」機能もある。機能的にはAppleのものと同じで、最後にスマートフォンと接続した場所を覚えていて、地図上に表示する機能だ。アプリ上の「♪」アイコンを押すことで、イヤフォンから音を鳴らすこともできる。
スポーツモデルには思えない再生音のバランス
イヤフォンとしての音質は、端的に言って1万円台半ばから後半にかけての、ボリュームゾーンの製品と比べても遜色ないものだった。特に弾力感のある低域や、中音域の厚みは、この機種ならではのものがあるように感じた。
スポーツモデルということから、ベースやキックの音圧感で押す、ダンサブルな音楽に特化した音作りをついイメージしてしまうが、そこからはかなり遠いところにある。
温かみのあるリッチなボーカルや、管楽器のリード音や息遣いなど、ジャズ系の音場感もかなりリアルに再生する。イヤフォンやヘッドフォンというより、よくできた小口径のスピーカーのような鳴りっぷりは、かなり楽しめる。
イヤフォンに使われているドライバーの口径や音声コーデックなどは明らかにされていないが、ノイズレベルは十分に低く、オーディオのドロップや、トゥルーワイヤレスイヤフォンでありがちな定位の不安定さも、ほとんど感じられず、よい印象を後押ししている。
惜しいのは動画再生時の音声のズレが若干気になること。この点でMV鑑賞向きとは言いにくいが、ほかの性能や機能を考えると、大きな問題ではないかもしれない。
もちろん3万円のトゥルーワイヤレスイヤフォンとして考えると、もっと再現力に特化した機種も存在するはずだ。しかし、Elite Sportの場合は、心拍センサーと強力な防塵防水性能が付いてくるということで割り切りたい。タフなスポーツモデル、しかもトゥルーワイヤレスでありながら、ここまで再生音のバランスがとれたイヤフォンというのも珍しいと思う。
このモデルのもう一方の側面、というよりも主たる機能である、心拍センサー周りの使い勝手やフィッティングなどについては、また改めてご報告したいと思う。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ