今年は「経営寄り」プログラムが充実、市場と社会の未来を見通す
7月の「JAIPA Cloud Conference 2017」はどんな内容か聞いてきた
2017年06月26日 07時00分更新
日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)クラウド部会が主催する「JAIPA Cloud Conference 2017」が、7月19日に東京・品川で開催される。
■JAIPA Cloud Conference 2017 開催概要
・日時:2017年7月19日(水)
・会場:コクヨホール(東京都港区港南1-8-35)
・主催:一般社団法人 日本インターネットプロバイダー協会 クラウド部会
・後援:総務省(申請中)、経済産業省(申請中)、他関連協会
・参加費:無料(→公式サイトからの参加申込みが必要)
今年で5回目となる同カンファレンスは、国内のクラウドサービス事業者、システムインテグレーター、ソリューションベンダー、さらにユーザー企業などが参加し、クラウド業界の“未来”について語り合うカンファレンスだ。
6月某日、目玉セッションのひとつである「2020年の日本を元気にする経営者パネルディスカッション」の打ち合わせが行われていると聞いたので、打ち合わせ後のパネリスト各氏を直撃し、どんな内容になりそうなのか探ってみた。
クラウド業界の風雲児たちが見通す未来とは、パネルディスカッション
――打ち合わせおつかれさまでした。さて今回のパネルディスカッション、どんな内容になりそうでしょうか?
伊藤氏:打ち合わせというか、今日は顔合わせだよね。まずはパネリストの皆さんの“得意分野”をうかがって、どうするかと。
――なるほど。それで、テーマは決まりましたか。
伊藤氏:いま2つくらい決めて……ただ、いろんな人が講演で話した後のプログラムだから、どうなるかわからないよね。イベントの締めくくりとしてどんな内容がいいのか、それはそのときになって考えて、うまくまとまりをつける、と。
――うーん、なるほど……(納得していない)。たとえば、どんなお話をされていたんですか?
田中氏:さっきまで「そもそもIT企業ってなくなるよね」という話をしてました。
――え……? それはかなり過激な……。
志立氏:田中さん、ネタバレ、ネタバレ(笑)。
田中氏:いや、取材だから何かヒントを出さないといけないと思って(笑)。
伊藤氏:社名は「クラウド」だけど、昔はクラウドじゃなかったという話があったよね。
青山氏:うちの会社(GMOクラウド)ですが、20年間で3回名前が変わっていますから。またそろそろ変えようかな(笑)。
田中氏:これまで5年間はクラウドで稼いだけど、これからの5年間はまた違うかもしれない。未来を先取りして社名を考える、ってすごい話ですよね。
志立氏:われわれ(IDCフロンティア)だって、元々は国際電話の会社ですからね。それが「データセンター事業に乗り出すぞ!」「クラウド事業に乗り出すぞ!」とか言って変化してきた。きっと次も「〇〇やるぞ!」と言い出す。面白いんですよ、こうして歴史を見ると。
伊藤氏:ここにいる人たち(パネリスト)自身もどんどん変容している、だからイベントに来ている人たちも変容していかないといけないよね、という話かな。DMMさんだってこれからは水族館をやるんだぞと、そういう話(笑)。
――たしかに皆さん、時代の変化に呼応してビジネスを変えてきた経営者の方々ですから、そういうテーマは聞き応えがありそうです。ほかにはどんな話題が出そうですか。
松栄氏:ほかの皆さんはクラウドの達人ですけど、わたしだけ全然わかってないひとりなので。むしろ「アナログ万歳!」という話に持っていきたいな、とたくらんでます。
――ええ、はい、アナログ……?
松栄氏:「AIが職を奪う」とか言うけど、絶対にそんなことはない。先日タクシーに乗ったんですけど、間違って「六本木の紀ノ国屋まで」と言ったら、運転手さんが0.1秒くらい考えて「明治屋ですね?」と。AIがこれをクリアしてきたらすごいけれど、まだまだ。
伊藤氏:それはわりと重要な、「AIやITの限界」の話だね。
田中氏:そもそも20年前だって「コンピューターで仕事が楽になる」と言ってたのに、今でも全然仕事してますからね。PowerPointが出てきたときに「これで資料作りが楽になる!」と喜んでたのに、今はみんな徹夜でパワポ作ってたりする(笑)。
――ははは、なるほど。AIやビジネスのデジタル化に期待が集まる一方で、じゃあその限界はどこにあるのかというお話を、皆さんから聞けるのは面白そうですね。カンファレンス当日はそういう話題になるかも、と。
伊藤氏:あとは「特殊クラウド」の話題には持っていきたいね。クラウドの世界では、今はアメリカがイニシアチブを取っているように見えるけど、たとえば医療や戸籍なんかのデータを出すわけにはいかない。そうなると、セクター別のクラウド、特殊クラウドという市場がありうる。むしろ、これからそれが花盛りになるんじゃないか。
――メガクラウドベンダーがすべてではない、そこにはまだまだチャンスがあるという話ですね。
松栄氏:あと「働き方特区」の話も出ましたね。たとえば「10カ月働いて2カ月休む」とか。そういうの、切に必要だと思いません?
志立氏:うちではこの2、3年、すごく働き方のチャレンジをしていて、たとえば「ロボットを使ってリモートワークをする」というのをやってるんです。これが本当に面白くて――
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書いていくと際限がないので、ひとまずここまでにする。わずか20分ほどの取材だったが、パネリスト各氏は談論風発、(ここには書けない内容も含め)話題は尽きることがなかった。上述したテーマが当日扱われるかどうかは一向に定かではないが、登壇する経営者それぞれが考える“未来”を覗くことのできる、スリリングなセッションになることは間違いない。
ビッグデータ、IoT、AI、セキュリティ――1年後よりもさらに先を見る
……と、これだけではイベントの全体像がつかめない。あらためてJAIPA Cloud Conference 2017運営委員会 委員長の寺尾英作氏に、カンファレンス全体のテーマや見どころを聞いてみた。
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――今年で5回目のJAIPA Cloud Conferenceですが、Webサイトによると、今年は特に「経営寄り」のコンテンツを重視したそうですね。
寺尾氏:はい。クラウドというと技術がフォーカスされがちなんですが、今回はどちらかというと経営寄り、クラウド業界の経営者のためのお話をお伝えしていきたい、というのがひとつのテーマですね。
経営視点なので、「これをやったらいくら儲かる」という事業に直結した話よりも、「こういう産業が盛り上がってきたら、こういう効果がある」とか、「社会がこういう風に変わると、こういう新たな産業が出てくる」といった、少し俯瞰した視点からのお話をたくさん提供したいと考えて、プログラムを構成しました。
――プログラム全体をざっと教えていただけますか。
寺尾氏:まずは、毎年ご登壇いただいている総務省と経産省。今年は両省の局長に出ていただけるということで、(同カンファレンスへの)注目度を表している、ご評価いただけているかなと。次に、2020年のオリンピック/パラリンピックに向けて準備も佳境に入ってきているので、(大会組織委員会から)そのサイバーセキュリティの話を。
お昼を挟んで、注目度の高い「AIが社会にどう影響してくるのか」というお話は、人工知能学会で学会長をされている山田誠二先生(国立情報学研究所総合研究大学院大学教授)から。国内事業者のアジアへのビジネス展開をどうするか、日本以外の市場をどう見るのかについては、クララオンラインの家本賢太郎社長にお話いただきます。
伊藤さん(伊藤洋一氏)には、経済セッションというところで、テクノロジーとビジネスの関係について。また「働き方改革」のテーマでは、積極的にそれを推進され、発信されているサイボウズの青野慶久社長が登壇されます。
こうした一日のプログラムを総括するのがパネルディスカッションです。これは1時間40分の長丁場になります。タイトルには「2020年」と入れていますが、その真意は「今年1年ではなく、もう少し先まで見通してみよう」ということです。
――たしかに、かなり経営寄りの視点、大局を見極めるためのプログラムという印象がありますね。
全体としては、省庁も「データ主導」「コネクテッドインダストリー」といったところにフォーカスされ始めていますし、そこをふまえたAI活用なども考えられていて。やはりIoT、ビッグデータ、AIといったテーマは今回、熱いテーマになるのかなと思っています。
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以上、簡単ではあるがJAIPA Cloud Conference 2017の見どころについてまとめた。追ってアスキーでも当日の模様をお伝えする予定だが、このカンファレンスはぜひ会場に足を運び、聴講しながら共に未来を考えてほしい。参加申込みは下記サイトでできる(無料)。