NVIDIAは今冬の完成を目指して、新社屋を建設中だ。新社屋は、現在の本社とは道路を挟んだ土地(もともとNVIDIAのビルディングがあった)に作られ、GPUの会社らしく「ポリゴン」(三角形)をベースにしたデザインになっている。
上から見ると、処理中の3Dグラフィックスのようにポリゴンが凹凸をつくりながらつながっており、大きな三角形の角を切り落としたような六角形になっている。中央と周囲3ヵ所が少し盛り上がった構造になっている。
側面は、ガラスになっていて、天井にある三角形の窓と合わせ、室内に自然光を入れるようになっている。天窓と合わせ、多くの照明を自然光に頼るかたちで、そのために日照時間などを考慮したシミュレーションを行なったという。屋根の下は1つの大きな空間で、その中にさらに小さな建造物があるという複雑な構造になっている。内部は中央部分にやはりポリゴンパネルを組みあわせた屋根を持つ建物があり、その周囲を2階となる部分が取り囲む。
1階と2階は建物全体をフロアと一階の天井として仕切って作られているのではなく、建物内に2階が屋上として使える平屋のような構造物として作られている。2階の天井は建物全体の天井となるためにかなり高い。
なお、建物全体としては地下2階まであり、地下の2階は駐車スペースとして使われている。実際には、掘り出した土を周囲に盛っていて、地下1階が本来の地面の高さにあり、本来の1階部分は、地上から見ると実は2階部分にあたる。
建物に入ると中央にやはりポリゴンを組みあわせた屋根を持つ構造物があり、ここは3階建てとなっている。その周囲を建物フロアから伸びた2階建ての構造物が囲む構造が見える。なお、この2階建て部分は建物の側面とは接続していない。建物側面は、全面ガラスであり、ここで2階部分を支えるような構造にはなっていないためだ。
中央の構造物は、正面玄関側がレセプションスペースで、その反対側には、カフェテリアとつながる部分があり、ここに階段状の構造を持つ場所がある。この階段状の場所は、セレモニーなどに利用できる、いわば「ひな壇」的な使い方をするためのものだという。
周囲の2階部分は、オフィススペースとして使われる。基本的には、天井の三角の天窓と側面のガラスから外部光を取り入れていて、2階フロアが側面とは接続していないため、昼間であれば内部はかなり明るい。しかし、オフィスとしては照明を付ける必要がある。照明は、コの字型の金属(チャンネル)を水平に伸ばし、その中に上向きに天井を照らす照明があり、間接光として実現している。
原則として、オフィスを四角い部屋として仕切ることはないが、全体がつながっているため、話し声や機械の動作音などが建物全体に通ってしまう。一階部分には区切られた「会議室」はあるが、電話やちょっとした打ち合わせ、あるいは静寂が必要とされる場合に備え、2階部分には防音壁を使った箱形の「フォーンブース」が用意されている。
中央の構造物は、実際には3階(さらに屋上もある)になっているが、消防法の問題があるため、「メザニン」という扱いなのだそうだ。周囲に見える屋根のような部分は、やはり金属に穴を空けたパンチングメタルのようなポリゴンを組みあわせて作られている。この部分は、金属のフレームを構造物とジョイントで接続する構造になっていて、「メザニン」と2階部分を覆うように周囲に巡らせてある。
2013年に発表された計画時には、同じ構造の建物を2つ作る予定だったが、現在では1つにして、元のビルを残すことになったようだ。なお、この建物には2500名ほどが勤務できるが、本社勤務の全社員を収容することはできず、現在利用中の社屋も引き続き利用されることになるという。
同じように新キャンパスを建設中のアップルもやはり本社勤務の全社員を収容することは困難だという。自社ビルの建設はたいていは景気のいいときに行なわれるものだが、その時期は同時に社員が増える傾向があって、収容が間に合わないということになりがちなのであろう。もっとも日本の某社のように本社ビルを建てたものの景気が悪くなって売却というケースもあるのだが。