AWS Summit 2017の新発表を総ざらい
AWSJ、DAXやRedshift Spectrum、CodeStarなど新サービスを解説
2017年05月01日 07時00分更新
4月28日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSJ)は先頃サンフランシスコで行なわれたAWS Summit 2017の発表内容に関する記者説明会を開催した。説明会では、Amazon DynamoDB AccereratorやRedshift Spectrum、AWS CodeStarなどの新サービスのほか、数多くのアップデートが披露された。
AWS Summit 2017で発表された3つの新サービス
説明会で登壇したアマゾン ウェブ サービス ジャパン技術統括本部 本部長 技術統括責任者の岡嵜禎氏は、まず発表されたばかりの2017年第1四半期の売り上げを振り替えり、前年度比43%増、売り上げ36億ドル(約4000億円)という好調ぶりをアピール。その上で、こうした成長をもたらしているユーザーの背景として、「競争力の源泉へのフォーカス」「イノベーションへの投資」「セキュリティの強化」といった要因があると説明した。
一方で、企業のデジタルトランスフォーメーションやM&A、コスト削減、開発生産性の向上、グローバル化対応、データセンターの統合、コロケーションやアウトソーシング契約の見直しなど、さまざまな契機でクラウドが適用されるようになっていると説明。AWSではこうしたさまざまなクラウド適用の形に対応できるよう、さまざままサービス追加と機能強化を進めているとアピールした。
現時点でのAWSのサービスは90を超えており、今回のAWS Summt 2017ではコアサービスやアナリスティック、AI、開発といった分野で新サービスが投入された。岡嵜氏に続いては、AWSJの瀧澤与一氏が登壇し、各種サービスの説明を行なった。
新サービスとしては、Amazon DynamoDB Accelerator(DAX)、Redshift Spectrum、AWS CodeStarの3つになる。
- Amazon DynamoDB Accelerator(DAX)
- NoSQL DBサービスであるDynamoDBのアクセスを高速化するフルマネージド型のキャッシュサービス。DynamoDBのテーブルの前段にキャッシュを設け、リードヘビーなアクセスを高速化する。DAXクラスターを作成し、アプリケーション側に読み書きのエンドポイントとしてDAXを指定するだけで利用できるという。現在は米国の北ヴァージニア、オレゴン、アイルランドのリージョンにおいてパブリックプレビューを提供している。
- Redshift Spectrum
- DWHサービスのRedshiftのデータ保存方法を拡張し、S3に置いたファイルを外部テーブルとして定義できるようになる。RedshiftのクラスターとS3の間にSpectrum層が挟まることで、S3バケット内のCSV、Parquet、TSVなどファイルなどを外部表として定義でき、ローカルデータとあわせてSQLクエリをかけられる。「今まではS3のデータをロードしてから検索していたのですが、このロードの部分を省くことができる」(瀧澤氏)。現在、NTTデータとリクルートテクノロジーズの2社が利用を開始しているという。
- AWS CodeStar
- CodeCommit、CodeDeploy、CodePipeline、CoreBuildなど開発者向けのCode系サービスの5つ目に当たり、AWS上でアプリケーションを迅速に開発できる統合開発環境。コーディング、ビルド、テスト、デプロイ、実行のためのプロジェクトとリソースのプロビジョニングなどを可能にするテンプレートが用意されており、効率的なチーム開発が可能になる。Atlassian JIRA Softwareのようなプロジェクト管理サービス、Visual StudioやEclipseなどの開発環境とも連携。「Code兄弟のラッピングするサービスができた。開発したいと思ったときに、CI/CDの環境を作れる」と瀧澤氏は語る。
FPGA対応のF1インスタンスやPostgreSQL版Auroraのプレビューが開始
昨年のre:Invent 2016で発表済みサービスもいくつか開始された。まずプログラマブルなハードウェアであるFPGAを利用できるEC2の新ファミリーであるF1インスタンスが米国北バージニアリージョンで開始。「すでに約2000件のエントリがあり、約200名がハードウェアの評価を行なっている」(瀧澤氏)という。
また、AWS上で実行されるコードからトレースデータを捕捉できる可視化サービス「AWS X-Ray」もグローバルの各リージョン(GovCloud/北京をのぞく)で利用開始。音声とテキストを使ったボットを作れる「Amazon Lex」もバージニアリージョンでプレビューが発表された。さらにデータベースサービスのAmazon AuroraのPostgreSQL対応版(9.6互換)もプレビューが開始。MySQL版のAuroraと同じストレージを用いることで、既存のPostgreSQLの2倍のスループットを実現するという。
新機能・改善に関しては、まず画像認識を提供する「Amazon Rekognition」の画像節度機能が追加され、不適切な画像の特定が可能になった。また、テキストを音声に変換する「Amazon Polly」においては、映像と会話の同期を可能にする「スピーチマーク」、ピッチやテンポ、音質などのエフェクトをかけられる「ウィスパー」を新たにサポート。さらにDynamoDBのVPCエンドポイントがプレビューになり、インターネット経由のみならず、AWSクラウド内のVPC通信が選択できるようになった。
その他、Amazon Lexを使用した会話型ボットを他のサービスと統合しやすくする「AWS Mobile Hub Integration With Amazon Lex」、70以上のSaaS製品を利用できる「SaaS Contracts for AWS Marketplace」、Amazon LexのようなサービスにIAMの必要な権限を与える「Service-Linked IAM Roles」などの機能も追加された。
「クラウド脳」を作るAWS Well-Architected Framework
ユーザーニーズの多様化により、サービスや新機能が増えたことで、AWSサービスの全貌がわかりにくくなったのも事実。瀧澤氏も「お客様が拡がったことで、いぶし銀のようなツールや新機能が増えてきた」と語る。これに対して、AWSでは「AWS Well-Architected Framework」においてサービスの利用ガイドとベストプラクティスを提供しているという。
AWS Well-Architected Frameworkは、セキュリティ、信頼性、パフォーマンスの効率、コストの最適化、運用性の5本柱を軸にしたフレームワーク。クラウドにおけるよい設計に役立つ設計原則を示しており、一般的なシステムでの設計原則と異なる部分もあるという。AWSホワイトペーパーとしてダウンロード可能で、アーキテクチャがAWSのベストプラクティスにどの程度適合しているかを評価するための一連の質問も用意されているという。