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いまやリフトも非接触ICカードで利用する時代!?

スキー場でも「ピッ」! 志賀高原の非接触ICカードサービスに未来を感じた

2017年03月13日 12時00分更新

文● 平澤寿康 編集●ゆうこば

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志賀高原エリアのリフト券はRFIDベースの非接触ICカードを採用

 ところで、志賀高原エリアで利用されているリフト券は、非接触ICカードが利用されている。この非接触ICカードは、見た目は一般的な非接触ICカード同様で、クレジットカードサイズのプラスチックカードだ。

 ただし、ICカードとしての規格は、NFCやFeliCaなど、決済で利用されているものとは異なり、「RFID」と呼ばれるシステムを採用している。これはISO/IEC15693という規格に準拠する非接触ICカードで、NFCやFeliCa同様に、周波数帯域13.56MHzの電波を利用して非接触でデータのやりとりができる。

 ただし、NFCやFeliCaは約10cm以下の近距離での通信に対応しているのに対し、ISO/IEC15693では約70cm以下の距離で通信可能となっている。この通信可能距離が、非常に重要なポイントとなっている。

志賀高原エリアで利用されている、RFID方式のICカード型リフト券

 スノーリゾートに設置されているリフトやゴンドラでは、鉄道などの改札同様に、なるべく短時間でリフト券の確認を行ない、乗客をスムーズにさばく必要がある。

 ただ、スノーリゾートは雪におおわれて滑りやすいだけでなく、スキー板やスノボ板、ストックなどを持っていたり、手には分厚い手袋をつけていたりと、ICカードを取り出してリーダーにタッチするのが難しく、ほぼタッチするまでにリーダーに近づける必要のあるNFCやFeliCaベースのICカードは利用者にとって使い勝手が下がってしまう。

 それに対し、RFIDベースのICカードなら、40〜50cmほどに近付くだけで読み取りが可能なため、ウェアのポケットなどに収納してリーダーに近付くだけでいい。利用者は、ゆっくりゲートを通過するだけでリフト券の読み取りが完了するため、手間がかからないし、ゲートでのカード確認混雑も解消できるというわけだ。

このようなシステムでリフト券が発行される

リフトやゴンドラの入り口には、このようなゲートが用意されている

 リフトやゴンドラに用意されているゲートには、左側にRFIDリーダーが設置されている。実際に、左腕や左手の手袋などに用意されている小物入れにリフト券を忍ばせておけば、わざわざリーダーにカードを近づけなくとも読み取りが完了し、ゲートを通過できた。読み取りが遅くてゲート内で詰まってしまうということもなく、大勢がリフト待ちしている状態でも、みなスムーズにゲートを通過していた。

 志賀高原でこのRFID方式のICカード型リフト券を導入したのは今シーズンで6シーズン目だという。もともとは、エリア内に数多くあるリフトやゴンドラの利用客数を正確に把握するために導入したそうだが、実際に使ってみて、ユーザーの利便性向上にも大きく寄与していると感じられた。

RFID方式は50cmほど離れていてもカードを読み取れるため、わざわざリーダーにカードをタッチしなくてもゲートを通過できる

乗ったリフトや滑走距離、滑走標高差などをPCやスマホでチェックできる

 志賀高原では、RFID方式のICカード型リフト券を採用したことで、もうひとつユーザーにメリットのあるサービスを提供している。

 それは、「Sliline」というサービスだ。オーストリアのSkiline社が提供しているサービスで、リフトやゴンドラの利用情報を活用し、滑走状況を簡単にチェックできるというものだ。

 志賀高原ではSkiline社と提携し、リフト券の利用情報をSkiline社に提供し、ユーザーはWebブラウザやスマホアプリを利用して自分の滑走状況を簡単に閲覧できるようになっている。

 下に示した図は、実際に筆者が志賀高原でスキーを楽しんできた時のものだが、リフトに合計13回乗り、滑走距離が12km、滑走標高差が1796mだということがわかる。

志賀高原エリアではSkilineに対応しており、乗ったリフトや滑った距離などをウェブブラウザーからチェックできる

スマホ用アプリも用意されている

ウェブ同様に、スマホアプリでも滑走距離や標高差などを確認可能だ

 紙のリフト券では、どのリフトに何回乗ってどこを滑ったのか、自分で記憶しておく必要があるが、Skilineなら過去の滑走状況も含めてPCやスマホで簡単に閲覧できるので、とても便利だ。情報としてはどのリフトやゴンドラに乗ったかというものだけで、次のリフトに乗るまでにどのルートを滑ったのかというところまではわからないため、滑走距離については概算となる。

 また、Googleマップなどと連携して、地図上でどのように移動したのかも確認できない。こういった部分は、もう少し改善の余地があると感じるが、実際に使ってみると、なかなか楽しいサービスだと感じた。

国内スノーリゾートでの非接触決済サービス対応も進んでいる

 志賀高原でのSkilineのサービス提供は今シーズンで6シーズン目だそうだ。恥ずかしながら、長年スキーから遠ざかっていた筆者はSkilineのことを全く知らなかった。日本にはすでに志賀高原以外にもSkilineを導入しているスノーリゾートがいくつかあり、スキーやスノボ愛好家にはすでにおなじみの存在なのだろう。

 また、志賀高原エリアでは、非接触決済サービスへの対応はまだまだこれからという状況だったが、他のスノーリゾートでは、すでに交通系ICカードなどの非接触決済サービスに対応しているところが増えているようだ。

 現金を持ち歩くことなく、各種非接触決済サービスのカードや、おサイフケータイ対応携帯電話やスマホだけで、食事や買い物を済ませられるスノーリゾートもすでにある。そういった意味では、志賀高原はやや遅れているという印象だ。

 インフラ整備には多大のコストがかかる。現在のように、スキー・スノボ人口が減っている状況では、なかなか難しい部分もあるとは思うが、現金を持ち歩くことなくスキーやスノボを楽しめるようになると非常に便利となるので、ぜひとも志賀高原でも積極的に非接触決済サービスへの対応を進めてもらいたい。

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