パズルの楽しさ、プログラミングの難しさ
とはいえ、興味もあって、筆者のアパートのスマート化に着手しています。とりあえず、電気とコーヒーメーカーはスマート化しました。
コーヒーメーカーのスマート化、といっても、14ドルほどの電源がスイッチ式のコーヒーメーカーと、Wi-Fi接続のコンセントを組み合わせただけ。Wi-Fi接続の製品もあるのでしょうが、合計30ドルで試せるなら、10倍の金額を払わなくても良いかなという程度の期待値です。
Philips Hueのセットアップは簡単です。ハブを自宅にあるWi-Fiルーターと有線LANで接続すれば、あとは既存の電球をリプレイスし、スマートフォンのアプリからハブと各電球を認識させる、という手順です。
重要なのは部屋の設定。どの電球がどの部屋にあるかを割り当てていくと、リビング、寝室、書斎といった部屋ごとに一斉に明るくすることができます。
米国の住宅の多くは、天井などに備え付けの照明器具はありません。そのためランプスタンドなどを部屋の隅に配置しながら明かりを採ります。場所は自在と思いきや、コンセントの場所もあり、そこまで自由度があるわけではありません。
すべて手動でスイッチをオン/オフしていた我が家では、どこにHueを設置するか、何を一斉コントロールできると便利か、ということを考えるようになりました。これは、生活空間やその空間でどんな過ごし方をしているかを見直す良い機会でした。
Hueではアプリから「シーン」を設定することができます。標準では、くつろぐ、読書する、集中する、といったテーマで電球の明るさや色温度を調節できる仕組みですが、そのほかに「オーロラ」「ハワイの夕日」といった空の色をモチーフにしたテーマもプリセットされています。
ただ、今までは調光すらせず、オン/オフしかできないランプスタンドを使っていたため、明るさを絞るとどうなるか、色温度を変えるとどうなるか、ということ自体が初体験でした。加えて、帰宅すると自動的に点灯する、日没と同時に点灯させる、といったオートメーションの設定もできます。
オートメーションの設定まで入ってくると、家を手軽なプログラミングでアプリ化しているみたいな感覚すら在りました。
スマートホームとは? で賢くなるべきは
一応、個人的にはとても楽しんで作業ができましたが、家族からは不思議がられていたかもしれません。部屋の真ん中で腕を組んでうーんと唸りながら、iPhoneを操作し、電気をつけたり消したりしているんですから。
自分の生活空間をライティングから見直すというテーマは、「ていねいに暮らす」というちょっと前のトレンドとなったキーワードを実現するための、一つのツールだったかもしれません。
普段何時に起きるか。筆者のアパートのリビングは東に窓があるため、午前中は朝から明るいのですが、米国では今週末から夏時間となるため、朝起きたらまた真っ暗。
夜は電球を1%の明るさで光らせていて、「おはよう」とSiriに言えば逆に電気を消していたルーティンでしたが、夏時間が始まったら「おはよう」で電気をつけなければならないでしょう。
また夜は夏至にかけて、21時まで明るい時間帯が続きます。でも21時の日没の時間帯に電気をこうこうと点けてしまうと、寝る時間が近いためマッチしません。そのため、日没したら100%の明るさにするというルーティン、は50%ぐらいに絞るべきでしょう。
1度設定しても、暦次第でオートメーションを調節しなければならないわけです。また、明るくする以外の新たな目的、例えばくつろぐ、勉強する、防犯といった効果を取り入れるなら、ほかのルーティンが必要になるでしょう。
そこで気づいたことは、スマートホームでスマートになるべきは「家よりも、住んでいる我々の側だった」という事実でした。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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