ファーストエイドキットを買い増ししました
前回、ハンヴィーの備品として操作マニュアルを買ったという話を書きましたが、ほかにもオリジナル状態に近づけるためいろいろと買い込んでいます。そのひとつがファーストエイドキット。救急箱ですね。
ハンヴィーの運転席の下には小物を入れるスペースがあり、マニュアルの備品リストではファーストエイドキットをそこに入れるように書かれています。以前買ったファーストエイドキットをそこに入れていたんですが、操作マニュアルをパラパラと見ていたら、助手席の下にも設置しているイラストが。これは買わねばいかん! ということで2個目を購入です。
ファーストエイドキットには個人携行用に小型ポーチに入ったものから部隊で運用するような大型のものまで10種類以上あります。今回ご紹介するのは中ぐらいのサイズ。包帯やガーゼ、ワセリンガーゼ、ハサミなど12種類の救急用品がプラスチック製のケースに収められています。米国国防総省の物品管理番号NSN(National Stock Number)は6545-00-922-1200。名称はFIRST AID KIT GENERAL PURPOSE――汎用の救急箱といったところです。
元は車両用で金属ケース入りでした
ファーストエイドキットは結構長い歴史があって、初期のものは第二次世界大戦前から車両用として供給されていたようです。ケースは金属製で、包帯やハサミ、サルファ剤など10種類または12種類の救急用品が収められていました。
このサルファ剤というのはあまり聞き覚えがないかもしれませんが、抗菌剤の一種で、感染症を防ぐ化膿止めとして広く使われていた医薬品です。第二次世界大戦を描いた戦争映画で傷口に白い粉をバババッと振りかけるシーンって見たことありませんか? あれがサルファ剤です。日本でも使われてたんだと思いますが、ワタシは不勉強で聞き覚えがありませんでした。ウチらおじさんが子どものころは、消毒と言えば赤チンやヨーチンと呼ばれたヨードチンキでしたよね。
ちなみに効能を見つけたのはドイツのゲルハルト・ドーマクという医師。1932年に発見し1935年に抗菌薬として発表されています。抗生物質もなかった当時は画期的な薬で、数多くの命を救ったのだとか。たとえば第二次世界大戦中にはイギリスのチャーチル首相が肺炎にかかり、サルファ剤で命拾いをしています。開発したのがドイツの人というのがちょっと皮肉ですが、サルファ剤がなかったら歴史が変わっていたかもしれません。
ちなみにドーマク医師はこの発見により1939年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。当時のドイツ政府がノーベル賞の受賞を禁止していたため辞退しましたが、戦後の1947年にあらためて賞を受けています。
その第二次世界大戦が始まったころには新たに12種類入りの車両用キットが作られ、車両4台にひとつの割合で装備されました。当時はNSNはまだなくて、医療品管理番号として97773が割り当てられています。のちに桁数が増えて9777300となり、その後物品管理番号ができて9-221-200になりました。
このキットは車両用として戦後も使われていましたが、1950年代になるとGeneral Purpose First Aid Kit, Rigidというキットに変更されました。ここでGeneral――汎用という名称になりましたが、基本的には車に装備されたそうです。当時の管理番号はFSN(Federal Stock Number)――連邦物品番号で、6545-922-1200でした。これも金属ケース入りです。
その後、プラスチック製ケースになったのが現在のファーストエイドキットで、管理番号もNSNの6545-00-922-1200に改められました。中には12種類の救急用品がギッシリ詰まっています。
ラベルを見てみます
以前から持っていたキットは、内容物の製造年月などから2013年か2014年のものではないかと思われます。新しく買った方は同梱されている内容物リストに2016年7月19日の日付があるので、2016年に納入されたものと思われます。リストによると内容物は下記のとおりです。
・ガーゼ付き包帯 3個
・圧迫包帯 1個
・包帯ガーゼ 2個
・三角巾 1個
・絆創膏 18枚
・テープ 3個
・コットンバッド 4パック
・ガーゼ 3パック
・圧縮ガーゼ 1個
・ハサミ 1個
・手袋 4枚
・ジッパー付きポリ袋 1枚
内容物リストは古い方は品名も入っているのですが、新しい方はNSNのみ。なんだか簡略化されちゃっててちょっと寂しい感じです。2つのリストを見比べると一部順番が入れ替わってるけどNSNも数も同じ……かと思いきや、手袋のNSNが異なっていました。NSNが変わった理由を調べてみたのですが、NSNの情報サイトを見てもスペックに違いはなさそうだし、見た目も同じに見えます。着け心地とかちがうのかなぁ。
実際どんな物が入っているのかを確認するため、中身を出して並べてみます。取り出したら二度と元に戻せなさそうなので、写真を撮りながら取り出していきました。するとこれが思った以上にたくさん入っていて、撮影ブース内にどんどん置いていってたら、もうギリギリ。囲いが丸見えになってしまいました。なんかすみません。
古いやつと新しいやつでは一部パッケージが変更になっていますが、製造年月や検査年月が違うだけで、見た目もほぼ同じ。リスト上で同じなんだから当たり前ですね。
各パッケージにはNSNや品名、ロット番号、製造メーカーコード、製造年月、検査年月などが書かれています。たとえば3個入っている包帯。そのラベルは下の写真のようになっています。
6510-00-159-4883
NSN——National Stock Number
CAGE 5R542
製造会社のコード。5R542を調べるとペンシルバニア州にあるELWYNという会社が製造したことがわかります。
P/N 4883
これは何だろう? P/Nっていうとパーツナンバーとかが多いですが、4883はNSNと同じだけど型番的なものなのかな。調べきれなくて申し訳ありません。
BANDAGE; DRESSING, FIRST AID, FIELD, CAMOUFLAGED, STERILE, 4 BY 6-1/4 TO 7-1/4 INCHES
品名です。BANDAGEは包帯で、DRESSINGはドレッシング材といって、傷を覆って保護する被膜材のこと。STERILEは殺菌。包帯の真ん中に、殺菌された厚手のガーゼが取り付けられています。一般的な野外で使用でき、カモフラージュとしてオリーブドラブ色をしていて、幅4インチ(約10センチ)で長さは6 1/4から7 /14インチ(約16から18.5センチ)といった感じです。
1 EACH
入り数。包帯1本が真空パックされています。
SPM2DS-11-D-N004-0006
コントラクナンバー。契約番号です。一般的な物にはSPOやDLAといったヘッダーが付くのですが、迅速な支給が必要な物は発注ルートが異なり、SPMというヘッダーになります。
LOT NO
そのままロット番号ですね。
M10-02/13
これは不明なのですが、たぶんその下のMFDと同じなのではないかと思います。
ELWYN INDUSTRIES ASTON, PA 19014
製造会社名。ラベルが小さい時はコードだけプリントされていることが多いです。
MFD 02/13
MFDはManufactured Dateの略。製造年月です。2013年2月生産ですね。
INSP/TEST DATE: 02/16
検査日。2016年2月に検査をし、合格なら引き続き使用可能となります。まさに今!
CONTENTS ARE〜
最後は注意書き。包装に損傷があったり開けられたりしない限り、内容物は無菌。用途は気道の確保、止血、打撲の治療、創傷の保護という感じですかねー。
同じようなラベルが貼られた物のほか、民間そのままでラベルがない物もありました。ケースは6545-00-113-3722というNSNで、CASE, MEDICAL INSTRUMENT SUPPLY SET, PLASTIC, RIGID, SIZE Aという名前がついています。フチにはゴムパッキンがあって完全防水なので、ケースだけ買ってもいろいろと使えますよ。
次回は各アイテムの解説です(´ー`)
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