国立研究開発法人 産業技術総合研究所は2月10日、アツミテックと共同で新型のコンパクト燃料電池システムを開発した。
ブタンを主成分とする天然ガス(LPG)で発電する固体酸化物形燃料電池(SOFC)。これまでに開発した燃料電池では、熱によって析出する炭素が燃料電池の効率を下げてしまっていた。産総研では新たにナノ構造電極材料を工夫することで炭素の発生を抑えるとともに、ブタンを水素に改質する条件を最適化する技術を開発。数百時間の連続運転や数百回の起動/停止の繰り返しにも耐えられる電極を開発した。
また、ナノ構造電極や運転制御技術により、従来のダイレクト発電に比べて約3倍の出力が得られた。体積あたりの出力密度も約3倍で、コンパクトに高出力な発電機の開発に繋がるという。天然ガスだけでなく、扱いやすいエタノールを用いた燃料電池の開発も検討している。エタノールはブタンに比べて炭素が析出しやすいという問題があったが、条件の最適化により数百時間の連続運転を実証したという。
産総研では100Wクラスの燃料電池システムを開発、燃料を改質する起動用バーナーも内蔵するため外部電源なしに利用できる。災害時の緊急電源だけでなく、ロボットやドローンのパワーソース、自動車のレンジエクステンダーなどに活用できる可能性がある。産総研では、作動温度の拡大や燃料電池スタックの複数配置など、高出力化と耐久性向上を進め実証試験を行なうとしている。