このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

年末恒例!今年のドメイン名ニュース 第8回

米政府のIANA監督権限委譲など、5つのニュースで今年のインターネットを総括する

「.jp」30周年など、2016年の「ドメイン名ニュース」振り返り

2016年12月27日 07時00分更新

文● 渡瀬圭一 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

1位◎IANA監督権限、グローバルなマルチステークホルダーコミュニティへ移管

 今年の1位には、米国政府が「IANA監督権限」をグローバルなインターネットコミュニティへ移管したことが選ばれた。日本ではあまり話題になっていないが、インターネットにとって非常に大きな出来事である。これにより、インターネットの資源をめぐるさまざまな決定が、米国政府の承認無しに実行できるようになったからである。

 インターネットは、誰かが全体を管理するのではなく、関係する組織や人々が協調することで成り立っている。しかし、インターネット上で通信主体を識別するための識別子であるドメイン名やIPアドレス、通信の際に用いられるプロトコルのパラメーターはその例外で、どこかで集中して管理する必要がある。有限である資源の適切な分配や、資源の割り当て結果に重複が無いことの保証などには、大本となる資源の台帳管理が欠かせないからだ。

 「IANA(Internet Assigned Numbers Authority)」は、インターネットの歴史において古くから存在し、ドメイン名やIPアドレス、AS番号、プロトコルパラメータといったインターネットにとって重要な資源を管理してきた機関である。ボランティアベースで始まったIANAは、インターネットが世界に拡大していく中で米国政府の金銭的な支援を受けるようになった。そうした背景があることから、米国政府はIANAを監督する権限を有していると主張してきたわけである。

 しかし、インターネットが世界的なネットワークになっていく過程で、米国政府はインターネットの管理権限を民間に移管することを考えなくてはいけなくなる。その方向性を確定させたのが、1998年6月5日に発表されたいわゆる「ホワイトペーパー」(https://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/bunsho-white.html)である。この中で、ドメイン名やIPアドレスの管理や調整のために民間の非営利法人を設立し、その法人と契約を締結することが示され、1998年10月に「ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)」が米国の非営利法人として設立された。

 当初は2000年9月30日に移管を完了するとしていたが、さまざまな事情によって移管は大きく遅れることとなった。そのような状況を一変させたのが、2014年3月14日に米国商務省電気通信情報局(NTIA)が公開した、IANA監督権限を手放す意向の表明である。以降、世界中のインターネットコミュニティを巻き込みながらさまざまな議論が交わされ、米国政府が要求する移管のための条件をクリアする提案を作るための努力が重ねられた。

 そして、米国議会の承認が得られ、米国政府とICANNの間で結ばれていた契約が2016年9月30日をもって満了したことにより、移管が完了した。これからは、インターネットコミュニティが、インターネットのために独り立ちしていくことになる。歴史に残る出来事であろう。

2位◎新gTLDが続々登場、1,000種類以上に

 今年の2位は、新gTLD(グローバルトップレベルドメイン)が増えて、1,000種類以上になったということである。昨年度は1位だったが、これだけTLDが増えると、もはやTLDの文字列がどうであるというよりも、個々の運用実績のほうが気になってくるのではないだろうか。名前の字面よりも、そのTLD(のゾーン)を管理するDNSがどれだけきちんと管理・運用されているかとか、そのTLDの評判といった面のほうが重要になってくるからだ。スパムの送信やマルウェアの配布・フィッシングなど、不正な目的のために使われているドメイン名が多いTLDの利用は避けたいところである。

 実際に、どの新gTLDが委任されたかは、ICANNの「Delegated Strings」(https://newgtlds.icann.org/en/program-status/delegated-strings)で確認することができる。また、たとえば非営利団体のスパムハウスが公開している「The Top 10 Worst」(https://www.spamhaus.org/statistics/tlds/)というページを参照するという手もある。ここで「bad domain」とされたサイトは、同社によって危険だと判断されているものである。

 結局のところ、ドメイン名選びは、信頼と実績が重要になる。また、トラブルが発生したときに、どこで争われることになるかという観点も大切であろう。国が違えば法律も違い、その国の法律で戦わざるを得なくなった際には、その国の弁護士を雇い、その国の言語を使う必要が出るということを考えるべきであろう。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事
  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード