臨場感が倍増でも実はお手軽!? 4K BDをDolby Atmos環境で楽しむ!
2016年12月14日 12時00分更新
前回、前々回で、4K BDことUHD BDは比較的低価格で再生環境を構築できると説明したが、オーディオ環境まで整えるとなると、そこそこコストが増える。
しかも、サラウンド環境のためにスピーカーをいくつも配置するなど、大掛かりな環境整備が必要……かと思いきや、実はあまり手間をかけずにサラウンド環境を構築する手段がある。今回はそのあたりについて紹介する。
UHD BDの多くに採用されている次世代サラウンド
第1回でも簡単に紹介したが、UHD BDは音質的なスペックについては、これまでのBDと同じ。新しいサラウンド技術である「Dolby Atmos」や「DTS:X」という方式も採用している。
Dolby AtmosやDTS:Xは、登場から間もなく2年が経過するまだまだ始まったばかりのもの。BDソフトでも着実にタイトルが増えてきていたのだが、UHD BDの登場以降は、BDではドルビーTure HDやDTS HDマスターオーディオ音声、UHD BDでDolby AtmosやDTS:X音声を収録するという例が増えている。
これは、UHD BDの方がディスクの容量が大きいし、UHD BDを選ぶユーザーの方が次世代サラウンドのための環境を整えているためだろう。
では、Dolby AtmosやDTS:Xは、従来のサラウンド再生とはどう違うのだろうか? 端的に言ってしまうと、再生に使用するスピーカーとして、新たに天井に設置するトップスピーカーが追加されていることだ。
チャンネル数としては、従来のサラウンド再生と足並みを揃える意味もあり、「5.1.2ch」や「7.1.4ch」といった形で規定されている。
従来の5.1や7.1の後ろに付いている「.2」や「.4」が天井に配置するスピーカーの数を示しており、5.1.2chならば、前方3つ(フロントLR、センター)と後方2つ(サラウンド)、サブウーファー、天井2つ(トップミドル)で構成されていることになる。
ちなみに、天井のトップスピーカーは、左右一対で装着するので、2つまたは4つという感じで設置する。これが基本形だが、実際には、5.1.4chでもいいし、7.1.2chでもいい。AVアンプでは内蔵するアンプの数が足りなくなるが、9.1.6chなんて構成もOKなのだ。
一般家庭だと天井へのスピーカー配置が難点
こんな自由度の高いスピーカー配置に対応する理由が、新しい「レンダリング方式」というもの。実は、Dolby AtmosやDTS:Xは、互換性を保つための5.1chや7.1chの音声に加えて、立体的な空間に配置する音とその位置情報をメタデータの形で収録している。
従来ならば、5.1chや7.1chのスピーカーが置かれたスタジオでそれぞれのチャンネルに音を振り分けていくのだが、Dolby AtmosやDTS:Xは、再生されるすべての音に対して、3次元的な音の配置の情報を決めていく作業が加わっている。
各チャンネルのスピーカーに音を振り分ける(レンダリング)作業は、AVアンプなどのデコーダーを持った機器側で行なう。AVアンプは自分にいくつスピーカーがつながれているかがわかっているし、自動音場補正機能などを使えば、スピーカーが置かれた場所もわかっている。
それらの実際に存在するスピーカーに対し、頭の真上の位置とか、前方の右側斜め上といった位置情報に従って、そこに音が再生されるように接続されたスピーカーに対して音を再生するのだ。
このため、実際の家庭のスピーカーの数や配置に合わせた最適な音が再生されるので、サラウンドの再現性も高まるし、スピーカーの数を増やすとか、変則的な配置になっていても、柔軟に対応ができる。
Dolby Atmos登場初期は、天井スピーカーがあるだけに高さ方向の立体的な再現が強調されがちだったが、現実には、高さはもちろんだが、前後左右の音の包囲感を含めて、きわめてシームレスなサラウンド空間が再現されることが最大の特徴なのだ。
問題は、必須とされる天井へのスピーカーの設置がなかなか難しいこと。筆者は、わりと安易に天井にスピーカーを吊り下げてDIYレベルの工事で実現した(見た目は妥協したが落下防止対策は厳重に行なった)。
居住空間であるリビングなどでは、天井へのスピーカーケーブルの引き回しもきれいに処理したいし、万一の落下などの事故を考えると、あまり簡易的な吊り下げは心配になるだろう。かと言って、スピーカーやケーブルを壁に埋め込むような工事となると、リフォームのための費用が莫大になる。
結論としては、多くの人が導入を躊躇しており、Dolby AtmosやDTS:Xを実際に楽しめる環境を実現している人というと、決して多くはないようだ。
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