12月7日の「MERY」の全記事非公開化で全10キュレーションサイトの全記事非公開化を完了したディー・エヌ・エー(以下DeNA)は12月7日、都内で経緯説明会を開催した。会場には多くのメディア詰め掛け、問題への関心の高さを伺わせた。
説明会にはDeNA代表取締役社長兼CEOの守安 功氏、取締役会長の南場 智子氏、執行役員経営企画本部長の小林 賢治氏が登壇。冒頭を含め会見中に何度も謝罪のため頭を下げた。
DeNAは医療系情報サイト「WELQ」で根拠が不明確な医療関連記事が掲載されていたことに加えて、他者記事に対する不適切な扱いの可能性があるとして「WELQ」「iemo」「Find Travel」「cuta」「UpIn」「CAFY」「JOOY」「GOIN」「PUUL」に加えて、運営体制が異なる「MERY」の計10キュレーションサイトの全記事の公開を停止している。
守安氏は「深く反省している。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪した上で、代表取締役報酬の減額(月額報酬30%、6ヵ月間)と第三者調査委員会の設置、DeNAのウェブサイトトップページに問い合わせ専用窓口を開設したと発表。「これからは私が先頭に立ち陣頭指揮をとって対応していく」とコメントした。
合わせて「みなさまの信頼を回復するのは非常に大変だと考えているが、企業としての信頼回復は私に課せられた責務だと考えている」(守安氏)と、CEO辞任の考えがないことも明らかにした。
2時間を超えた質疑応答では、全記事非公開化という事態を招いたDeNAの管理体制とメディアへの考えに関する質問が集中した。
守安氏は事態発生の原因を問われ「2つ要因があると考えている。ひとつはゲーム事業の売上が下がってきていること。このため新規事業にトライしてきたが当社の期待どおりに成長することは難しかった。メルカリやスマートニュースなど外部のスタートアップが勢いよく成長しているように見えたので、MERYとiemoを買収した。スタートアップのよさである速度を犠牲にせず成長させていきたかったが、企業としての責任というバランスもある。このバランスをうまくとることができなかった」とコメント。
さらに「キュレーションというメディア事業というものを作っていくという認識がなかった。たとえば著作権や内容の正確さ、質の担保などメディア事業に対する認識がなかった」と語った。
9サイトの全記事非公開化した後にMERYの一部記事非公開、そして全記事非公開化と速度差があった理由に関して「9メディア停止時には記事作成マニュアルなどで他サイト記事の転載を促すと捉えかねないものがあった。MERYは違う制作体制だったので継続した。一部問題がある記事があり削除したが、これが全体の8割の記事削除という結果になった。残りの記事は問題ないのかという疑問もあった」(守安氏)
「取締役会で10時間以上徹底的に議論した。社会への影響をを考えると一旦停止させるという考えもあるし、残り2割の記事に自信があるなら公開したままという考えもあった。結果的にMERYも全記事の公開を停止した」(守安氏)
MERYの記事削除に関しては小林氏が回答。「MERYの削除記事数が13万件と想定より多かったことに関してだが、美容健康に対して540ワードを抽出し、これがタイトルや記事に一部でも入っているものが8万件。“100%”“誰でも”など誤解を招く単語が入った記事が4万件、タイトル画像などに著作権表示などがないものが10万件。他社サイトからの引用などが適切になされていないものが1万件」(小林氏)
創業者の南場氏、医療系サイトWELQの記事内容に「絶句した」
何度も質問が繰り返された記事の不適切な引用や盗用記事の疑いに関して、守安氏は「著作権者さまへの配慮が足りなかったと痛烈に感じている」と繰り返した。問い合わせ窓口を通して著作権者に対して個別に対応するとしているが、全記事が非公開化された現在、著作権者が10サイトで不適切な引用があったかチェックできない状況だ。守安氏は「全記事調査も踏まえて対策を考える」と語る。
取締役会長の南場氏は「WELQ」の記事問題に関して「恥ずかしながら認識していなかった。個人的な事情もあり病気のことを徹底的にネットで調べたが、2011年にネットの情報は信頼ならないと知った。私が信頼するのは論文と医者のアドバイスで、同じ病気を抱えるユーザーのブログなどもチェックする。この問題を知ってWELQの記事を見た際、絶句した」と語る。
「残念という一言に尽きる。現場のミスはなくならないものなのですぐチェックできる体制があるのが一流企業。まずミスに気付いて是正する体制の確立が急務。今はキュレーション事業が問題になっているが、他事業部でも内部通報機能が確立している。問題があればすぐに是正できる体制のはずが、なぜ外部からの指摘を受けるまでこうなったままなのかしっかり確認する必要がある」(南場氏)
「成長事業とはいえルールを守るということが当たり前だと考えていた。これがDeNAでは当たり前ではなかった。会社をいちから作りなおすという考えで対応していく」(南場氏)
経営責任に関して、守安氏は「このような事態を引き起こしてしまい、何として立て直さなければいけない」とコメント。南場氏は「ルールを守って事業を展開するのは当然。守安はコンプライアンスを遵守するという考えがある。法に反するなという指示も当然する、ただし、その確認にどれだけ時間を使っていたのか。また、新たな事業への挑戦などにかけた時間とのバランスはどうなっていたのかをきちんと見直す必要がある」と語った。
DeNAの記事非公開化後、サイバーエージェントの「Spotlight」やリクルートの「ギャザリー」など、他のキュレーションサイトでも記事削除の動きが広がっている。