12月6日、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)は、ストレージ関連の発表会を開催した。登壇した米HPEのビル・フィルビン氏は、先日ロンドンで開催された「HP Discover」での発表を踏まえ、オールフラッシュの戦略を披露した。
サーバー、ストレージ、ミッションクリティカル領域の事業を統合
冒頭、登壇したHPEの本田昌和氏は、11月の分社以来の組織改変や取り組みについて説明。メグ・ホイットマンCEOの元、クラウド分野でマイクロソフト、モバイル分野でNECとの提携を発表しつつ、サービス事業のCSCへのスピンアウト、SGIの買収、ソフトウェア事業の売却など、データセンター事業への選択と集中を進めているという。これに対応し、日本法人でもサーバーやストレージ、ミッションクリティカル製品などの事業をデータセンター・ハイブリッドクラウド事業統括に統合したという。
「会社の姿は変わったが、われわれがお客様にお届けする価値は変わっていない」と語る本田氏は、俊敏なビジネスや利用形態の多様化といった昨今のトレンドのみならず、レガシーシステムやコスト削減といったトラディショナルなニーズにも対応することをアピール。さまざまなワークロードに対応しつつ、開発中の「The Machine」で新しいコンピューターアーキテクチャを追求していくという。
オールフラッシュ革命を支える4つの要素とは?
続いて登壇したHPEのストレージ部門トップであるビル・フィルビン氏は、現在のIT業界がさまざまな価値観が混在する過渡期であることを指摘しつつ、オールフラッシュやビッグデータ、SDS(Software-Defined Storage)の分野でも一貫した戦略を展開しているとアピールした。
フィルビン氏は、記録的なスピードで進む「オールフラッシュ革命」について説明。オールフラッシュのトレンドはいくつかの「ウェイブ(波)」で、当初の価格度外視で特定ワークロードの性能向上を目指したウェイブ1の次に、SSD容量の増加とデータ削減技術の進化により、経済性にフォーカスしたウェイブ2が訪れた。そして現在起こりつつあるウェイブ3では新たな標準に移っていく。フィルビン氏は、「経済性の追求だけではなく、次のデータセンターの標準にするための、さまざまな機能が必要になる」とウェイブ3について語る。いずれにせよ、データセンターの新標準になるためにはアプリケーション、運用、リスク低減、投資という4つの面で進化が必要。フィルビン氏は、HP 3PAR StoreServを中心に、新機能や取り組みを説明した。
まず、アプリケーションという観点では、HPEの3PARではデータベース、ブロック/ファイルストレージ、仮想化、コンテナなどに幅広く対応しつつ、3PARのクラスター機能であるメッシュアクティブとASICによる高速化、電源を落としても揮発しないパーシスタンスメモリ、3D NANDキャッシュなどで高速化を実現してきた。
また、運用に関してはオーケストレーションの拡充を進める。データセンターからデータサービスまでを統合したユーザーエキスペリエンスを提供しつつ、REST APIを通じた既存システムとの統合を実現する。また、自律管理を可能にする3PARを強化しつつ、ゾーニングを容易に行なえるHPE Smart SANを搭載したFCストレージも発表。
さらにリスク低減に関しては、セキュリティとデータの保護が重要だ。「オールフラッシュはデータ統合のために数を絞るので、データ保護の重要性が高い」(フィルビン氏)とのことで、HPEではサーバーとストレージ間で「Persistant Checksum」というデータのチェック機能を搭載すると共に、またHP 3PAR同士では「Peer Persistance」という機能で可用性を確保する。さらに、セカンダリーストレージのStoreOnceの提供や、VeeamやSpectra Logicとの提携により、データ保護も拡充。「単なるオールフラッシュから、地球上でもっともレジリエンシ(回復力)の高いデータセンターを実現できる」という。
最後に挙げたのはコスト。先週、オンプレミスで1GBあたり月額0.03ドルでの利用が可能な「HP 3PAR Flash Now」のプログラムが発表された。稼働開始まで支払いは不要で、データ移行は無償。資産を持たずに、利用開始から支払いが発生するキャッシュ・オン・デマンドの方式を採用する。「オールフラッシュへの移行を推し進めていくためにも必要なプログラムだ」とフィルビン氏は語る。
また、今回はHP 3PARシリーズを中心にした説明がメインだったが、エントリ向けの「MSA 2042」やハイエンドストレージの「XP7」においてもフラッシュ対応を強化する。「エントリからハイエンドまでフラッシュ対応を進め、エンタープライズストレージのリーダーを確保する」とフィルビン氏は語る。さらに買収したSGIに関しては、HPC分野で欠けていたポートフォリオを拡充する役割を持ち、今後はビッグデータ分野もカバーしていくという。