中国で注目のVRデバイス
レノボと提携した「蟻視科技」という聞き慣れない企業。この企業の最新製品となる「蟻視VR2代」が実はあなどれない。
蟻視VR2代はVRゴーグルではなく、PC用の解像度が2160×1200ドットのヘッドマウントディスプレーで、センサーやコントローラーが付属。PCの前にセンサーを置くことで、頭の傾きでも操作できる。
コントローラーは十字キーの操作はもちろんのこと、5本の指の動きによるジェスチャー操作も可能だ。また、視力にあわせた調整の自動化もできる。
蟻視VR2代を見てもらえればわかるが、かなり挑戦した製品で、安かろう悪かろうという路線とはまったく異なる。
この企業は研究開発を続けた結果、2年間で150超の特許を取得し、45の企業と提携した。また政府からも認められ、中国情報産業省(工業和信息化部)のVR標準策定のメンバーになっている。つまり中国のVRの舵取りをする企業であるので要注目なのだ。
ハードウェアはまだしも、コンテンツは未知数
ハードウェアはまだまだ伸びしろがあり、どう化けて進化していくかはポジティブな意味で未知数だが、逆にソフトウェア・コンテンツについてはネガティブな意味で未知数だ。
日本のネットカフェなどでレンタルできるVRコンテンツを一通り見れば身をもってわかるが、当たり前のことだがVRコンテンツは何でも面白いわけではなく、当たりとはずれの差は大きい。
加えて、中国では過去に新しいハードウェアが出ては、対応するソフトウェアやコンテンツが貧弱すぎてがっかりしたことや、製品リリース後に新コンテンツがまったくリリースされずに次世代製品が発表され、購入者が見捨てられたことは何度となくあった。
しばらくはVRゴーグルの最大の用途は「既存の動画コンテンツを大画面で」となろうし、またヘッドマウントディスプレー専用のコンテンツについても外国のコンテンツに依存するだろう。
政府は学校や病院での普及も目指しているが、今のところ一部の学校で試しに利用している段階で、これからの展開は全く未知数だ。
業界団体ができても成功するかはわからない
淘宝網や天猫を抱えるECの阿里巴巴(アリババ)が3月にVR戦略を発表し、後を追う蘇寧電器や京東もVR戦略を発表した。
蘇寧は中国国内に300のVR体験館を作るとし、京東は商品をVRコンテンツ化するツールをリリース。約30の企業とVR/AR産業聯盟を成立させてAR/VR普及をバックアップするという。
1件あたり300~500元(約4700~8000円)で商品写真をVRコンテンツ化するという企業も登場した。
とはいえ、団体を作っても必ずしも普及するわけではないということは過去のさまざまな製品で証明されている。
ただ、中国でのVRに対する期待値は高く、投資マネーが流れ込んでいるほか、クラウドファンディング経由でも中国の新製品が登場している。
iResearchの調査によると、中国のVR市場規模は2015年には15.4億元(約240億円)、2016年には56.6億元(約880億円)、2020年には550億元(約8600億円)規模になるのではと予測。
VRのハードウェア・ソフトウェアが今後も試行錯誤で出続けるのは間違いなく、動向を注目するだけでも価値はある。

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