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事業連携も始動したKDDI ∞ Labo 10th DemoDay

運送業界の配車クラウドから忘れ物防止タグまで新規サービスが脚光

2016年09月29日 06時30分更新

文● 相川いずみ 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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 KDDIがパートナー企業とともに、スタートアップやエンジニアをサポートする“KDDI ∞ Labo”。2016年4月からスタートした第10期の成果と第11期プログラムの概要を発表するイベント『KDDI ∞ Labo  10th DemoDay』が、9月26日に都内で開催された。

物流業界を変革する配車クラウドサービス『軽TOWN』

 イベントでは、IoT、AR/VR、農業、宇宙事業などの分野から採択された9チームが登壇し、プレゼンを行った。第10期では、これまでのインキュベーションプログラムからアクセラレータープログラムに運営方針が変更され、すでにサービスリリースしている事業も対象になっている。

 9チームの中から、「将来の事業性とプログラム期間中の成長度観点」から『KDDI ∞ Labo賞』が選定され、軽貨物ドライバー配車サービス『軽town(ケイタウン)』のCBcloudがグランプリとなる『KDDI ∞ Labo賞』を受賞した。

第10期『KDDI ∞ Labo賞』を受賞した『軽town』の松本隆一氏。(写真右)

 『軽town』はアプリを使って、荷主とドライバーをマッチングさせるクラウドサービス。運送会社や個人など荷物の配送を頼みたい人が、軽townに登録しているドライバーを選定して即依頼ができる。荷主側は低コストで迅速な配送が行え、ドライバー側は時間を有効に使え、かつ中間搾取などが入らないため給与水準のアップにもつながる。

5000円からの引っ越しサービスも開始した『軽town』。

 CBcloud代表の松本隆一氏は、国土交通省の航空管制官を経て、義父の営んでいた運送業を継いだというユニークな経歴の持ち主。「たった一人のドライバーに荷物を依頼するのに、30本も電話をかけなければいけない」といった運送業界のさまざまな問題点をデジタル化することで解決しようと軽townをスタートした。増加している小口配送や短時間に届ける“即時配送”などのニーズにこたえるだけでなく、「ドライバーの待遇を改善することで、若者にドライバーの仕事を選択するようになってほしい」としている。近年、ドライバー・配送不足と言われている物流業界で、新しい価値を提供できるとして高く評価された。

世界最小の忘れ物防止タグが新サービスを展開

 また、プレゼンテーションの最後には、会場の参加者全員がスマホで投票に参加する『オーディエンス賞』の投票も行われた。高い支持でオーディエンス賞に選ばれたのは、忘れ物防止タグを開発・販売している『MAMORIO』(マモリオ)だ。

世界最小クラスの『MAMORIO』

携帯やPC、ペットなどにつけることで忘れ物を防止。

 忘れ物防止タグはすでにクラウドファンディングなどでもさまざまな製品が登場しているが、MAMORIO は1円玉より薄い極小サイズ。電池も1年以上もつ使い勝手の良さも売りだ。また、MAMORIOのユーザー同士が連携して、持ち物の場所を突き止める“クラウドトラッキング”機能を採用。ユーザーが増えれば増えるほど検知能力は上がっていく。

 すでにMAMORIOでは、∞ Laboでのプログラムを通して、羽田空港での整備用機材管理や、テレビ朝日の撮影機材管理などの実証実験を開始しているという。さらに、KDDI、au損保と連携し、紛失時の補償サービスを10月から開始予定だ。

年間1000円で盗難・紛失補償が受けられる『MAMORIOあんしんプラン』。

第10期では3件が事業連携を開始

 第10期ではアクセラレータ企業のノウハウ提供や、アライアンス先の紹介などにより、9件の実証実験、3件は事業連携が実現するなど、新たなビジネスチャンスやサービス向上にもつながった。

 たとえば、ランナー向けの情報提供・ユーザーコミュニケーションサービスの『ラントリップ』では、近畿日本ツーリストと連携し、旅行先でのランニングと温泉施設や食事を組み合わせたプラン『Run for 湯』を共同開発し、9月26日よりサービスを開始している。

コースの共有やランナー同士の交流を楽しめる『ラントリップ』。

 笑農和によるクラウドを活用した水稲サービス『paditch』は、TOPPANとタッグを組み、ドローンを活用したサービスやデータ連携などの実証実験を開始する予定だ。

 paditchは、水稲農家の負担となっている水の管理をクラウド化することで、遠方からも水門の開け閉めを可能にしたサービス。自動制御やタイマー制御、アラーム操作などの技術を活用し、「農業を守り、次世代へつなぎたい」としている。

スマート水田『paditch』の実証実験を行う笑農和(えのわ)。

 さらに、超小型衛星を活用したソリューションを提供しているアクセルスペースは、2017年から2022年にかけて全50機の衛星を打ち上げ、地球観測インフラを構築する『AXEL GLOBE』を予定している。宇宙から記録した膨大なデータをもとに、農業や都市計画など幅広い分野での活用が期待される。

50機の衛星群を用い地球観測インフラを構築する『AXEL GLOBE』。

JAXAから人工衛星の開発・運用を委託された技術力をもつアクセルスペース。同社が開発した超小型衛星の『ほどよし1号機』の模型。

 イベントの最後には、KDDI代表取締役執行役員副社長 バリュー事業本部長の高橋誠氏が登壇した。

 高橋氏は、「KDDI ∞ Laboでは、1期ごとに新しい取り組みを行っている。第10期からは、創業をサポートするという元々の狙いから、事業連携や成長支援のフェーズに移行し、アクセラレーションできる企業を交えることで、サポートしながら新事業に結びつけるための第一歩となった」と、第10期の総括やイノベーションにおける展望を語った。

11月より第11期プログラムを開始

 続いて、KDDI新規ビジネス推進本部戦略推進部「KDDI ∞ Labo」長補佐の豊川栄二氏が、次回の第11期の概要を発表。第11期では、テクノロジースタートアップの支援を積極的に行う。プログラム期間は、2016年11月から2017年4月。エントリーは10月25日までとなっている。

KDDI新規ビジネス推進本部戦略推進部「KDDI ∞ Labo」長補佐の豊川栄二氏。

 今後の展開としては、アメリカに続く海外拠点として韓国のソウルを開設し、10月より活動を開始する。また、パートナー企業も新たにJ:COM、全農、dentsu、Sony Musicの4社が加わり、全34社となった。KDDIでは引き続き「社会にインパクトのある新たな事業の創出」を目指し、サポート企業とともにスタートアップをバックアップしていくという。

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